第7話《新事実→三女》
間が空いたので7話も続けて投稿します。
2月6日:《新事実&三女》から《新事実→三女》に改変しました。
「うーん…やっぱりレシピブックって書いてある…」
それに、何度見ても日本語である。ギルドでの測定結果や、街中を歩いているときに目にした文字も全て日本語だった。
最初はこの文字列も解読不可能な文字(?)だったわけだが…どういうことか触れたら日本語に書き直された。触れたことによって、この世界の文字は全て日本語に自動翻訳されるようになったのだろうか。だとしたら異世界転移の特典みたいなものだろうか。
…それより何より、まず私…
「何で異世界にいるんだろう…」
異世界転移したということは、必ず何かしらの意味があっての事だと思っていた。異世界勇者として城に召喚されたり、城じゃなくても神様に召喚されたり。
そんなスケール大きくなくても、何か不憫な思いをしている村人とかが儀式で私を呼び出したりとか…。
でも実際は気が付いたら草原に寝ていた。
それでも、もしかしたら何かの事故でスポーン先の座標が狂ったとかで召喚した人達が私を探しているのでは?と思った。
だけど誰も探しには来なかった。
いやいや、もしかしたらそろそろ神様の使いとかそこら辺が探しに………来なかった。
もう少し時間が経てば誰かが迎えに来たりするのだろうか。だがそれも確かなことではない。
「いや本当に…何で私ここにいるんだ…」
考えれば考えるほど謎である。
「……まぁ、考えてもわからないなら今はもういっか」
とりあえずこの件に関しては思考停止することにした。
「それより今はこっちよね」
机の上の本に向き直る。本改め魔導書。それとも召喚術書?呼び方はよくわからない。とりあえずルビに従ってレシピブックと呼ぶことにしよう。
さて、このレシピブック。レシピブックと書いてあるわりに何もレシピが書かれていない。
パラパラとめくってみるが相も変わらず全ページ真っ白だ。
パラパラパラパラ
「んー……。…ん?」
本の3分の2辺りまでめくったところで手を止める。もう一冊挟まっていたのだ。よくある、めちゃくちゃ分厚い問題集だなとか思ってたら最後の方に挟まれた答えの冊子が本の厚さの3分の1程度を占めていたとかいうアレだ。
こちらの表紙には『召喚術の魔導書〜カタログ〜』と書かれている。
「…カタログ?」
カタログってあのカタログだよね…。
表紙をめくると、先程とは違い何かが書かれていた。上の方に書かれている文章を読んでみる。
《ミネラルウォーター》
・しっかり浄化された綺麗な水。無味。
【内容量】500ml
【必要MP】1
「………はい?」
確かにミネラルウォーターと書かれている。必要MP…これは魔力のことだろう。絶対マジックポイントの略だ。
必要MPが書かれているということは恐らく…
「これが召喚できる…っていうこと?」
いや…………水を召喚って何!?
そこは魔獣とか武器とかそういうのじゃないの!?
そこでハッと思い出す。この本は『レシピブック』。そしてこれはその別冊カタログ…。
「まさか…食材専門の召喚術書…ってこと…?」
だとすれば私はそれ以外何も召喚できないということなんじゃ…
「いっ、いやいやいや何それ!?マジで何それ!?え、そんなんで生き残れと!?この世界魔物とか彷徨いてるらしいんですけど!!ねぇ!!」
「マシロ〜!?さっきから叫んでどうしたんだい!?」
一階からエマさんが声をかけてきた。
まずい、興奮しすぎていつの間にか大声出してた…
「なっ、何でもないです!大丈夫です!うるさくしてすみません!」
焦りながら返事をする。
落ち着け私、もう一度よく考えろ。
つまり私の異世界転移の特典は自動翻訳と、この食限定の召喚術スキルということ。
こういう謎に癖のあるスキルが付く時は、元の世界での自分の行動に基ずくと相場が決まっている。
私も場合はそれが料理だった。勉強能力、運動能力共に並の私が唯一昔から得意なのは料理やお菓子作りだ。
ここで少し私の身の上話をしておく。
実を言うと私は両親がおらず孤児院で育てられてきた。物心付く前からこの歳まで養子にも貰われず孤児院で育てられてきたせいか、いつの間にか一番の年長者になっていた。当然、恩返しの意味も含めて施設の手伝いをする。その中で一番楽しかったのは料理で、初めて料理の手伝いをした小学三年生の頃からこれまでずっと料理の類が好きなのである。
他の子たちからお菓子を強請られ、安く美味しくなるべく多く出来る物を夜な夜な考えては作っていたものだ。
「みんな元気かな…」
急な異世界展開で頭が回らなかったが、施設の皆は元気だろうか。考え始めたら少しホームシックになった。
「…まぁ、大丈夫かな。それより今の問題はこれでどう生きていくかだなぁ…」
このままエマさんにお世話になり続けるわけにはいかないからね。食に関する召喚術が使える(逆にそれしか使えない)こともわかったし、昼間に考えていた自分のお店を出して自立するのもいいな…。
いや、その前に何が召喚出来るのか把握しなきゃね。
試しに手を本にかざし「召喚!」と言ってみた。
…何も起こらなかった…恥ずかしすぎる…。
わりと確信を持ってノリノリで言ったのに…。
「どう使うんだろ…」
リアみたいにやれば出来るのかな。でも魔法と召喚って別物じゃない?詰んだ。
「はぁ〜…」
大きな溜息をついてガックリ項垂れていると、ダダダダッ!と階段を駆け上がる音が聞こえた。
バンッ!!
「!?!?」
ドアが勢いよく開けられてギョッとする。
「マシロちゃん!!!」
「はっ、はい!!マシロですが!!」
余りの声の大きさにつられて私も大声で返事をする。
「本当にいた!!母さんから話を聞いた時はビックリしちゃったけど、でもとっっても嬉しいの!!会えて嬉しいわっ!!」
まくし立てるように話すその人は、ふわふわに巻かれたストロベリーブロンドの髪を比較的下の方で一つに束ねており、大きくてタレ目が可愛いのが特徴の整った顔立ちをしていた。歳は私より二つか三つほど上だろうか。
「あっ、あのっ!!どちらさまでしょうか!!」
いきなりの出来事に混乱しながらも何とか話しかける。
「あら、私ったら!またやっちゃった!どうしても感情が先走ってしまうの、悪い癖よね」
コホン、と一つ咳払いをして目の前の女性は自己紹介を始めた。
「私はリリー!この家の三女なの。よろしくね!」