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第6話《この世界の魔法について》

 ガチャッ


「お待たせ二人とも、ここまでご苦労さま。さっきうちの娘が焼いたばかりのパンだよ、お食べ!」


 エマさんが蓋付きのバスケットを左腕に、右腕には2つのバゲットが乗った木製のお皿を持って出てきた。


「うわぁ、いい匂い!」

「いいの?」

「遠慮しなさんな。さっ、食べた食べた!」


 私とリアは顔を見合わせる。そして声を揃えて言った。


「「いただきます!」」


 外は程よい固さで香ばしく、中はモッチモチ。触ってみて丁度いい温度だと思ったが、中はまだ熱かった。


「ん〜〜っ、美味しい!」


 こんな美味しい焼きたてパンが食べられるって贅沢…幸せすぎる。


「マシロは幸せそうに食べるねぇ」

「こんなに美味しいパンを食べたら誰だってこうなりますよ」

「ほんと、シロの言う通り。相変わらずエマさんとこのパンはこの街一番の美味しさだよ」

「あらやだ、褒めてもこれくらいしか出ないわよ〜」


 エマさんは何やら入口の方でガサゴソとやりだした。すぐにバスケットの蓋を開けて横に広い小瓶を二つほど入れた。


「うちの自家製ジャム、おまけで入れとくわね。アランベリーのとリンゴのやつと二つね」


「リッタと二人で食べてね」と言って、既に食べ終えていたリアにバスケットを渡した。


「ありがとう。じゃあそろそろこれ、運んじゃうね」


 リアがセットの家具を見ながら言った。


「そうね、二階のマシロの部屋までお願いできる?」

「あ、待って私も手伝う」


 私の家具なのにリアにだけやらせるわけにはいかない。私は急いで残りのパンを胃に収めた。


「別に大丈夫だよ」

「私の物なのに、リアにやらせるのは申し訳ないし」

「これも仕事だから」

「でも…」

「いいから。…あぁ、部屋までは案内してくれると助かるかも」

「それはもちろん」


 結局リアの有無を言わさない物言いに負け、言われるまま部屋まで案内した。


「ここだよ」


 私が案内するとリアは一言「わかった」と言ってそのまま下に戻って行った。

 やっぱり少しは手伝おうと思い、私も後に続く。

 階段から降りたところでリアに声をかけられた。


「シロ、危ないからちょっとどいてて」

「わかった」


 リアは私が少し離れたところに移動したのを確認した後、右腕を前に伸ばして手の平を家具に向けた。

 そして──


「!!うっ、浮いた!?」


 なんと家具が地面から30cmくらいの高さまで浮いていた。浮いた家具は少しだけゆらゆらと揺れている。


「マシロは風魔法を見るのは初めてなのかい?」


 いつの間にか隣にいたエマさんにそう問われる。


「風、魔法…」


 魔力とか魔石とか聞いてたしあるとは思ってたけど、本当に魔法使えるんだ…この世界…。

 頭ではわかっていたが、いざ目にしてみるとやはり驚く。


「リアは風属性なのねぇ」

「地属性もあるよ」

「あら、二つ持ちなの?凄いじゃないか」


 二人の会話についていけずに困惑していると、その空気を察したエマさんが説明を入れてくれた。


 なんでもこの世界の人間と魔物は生まれつき『属性』とやらを必ず持っているという。

 属性とは自分が使える魔法の種類(?)のことで、逆に自分に無い属性の魔法は使うことが出来ない。

 ちなみに属性には『火』『水』『地』『風』『氷』『雷』『光』『闇』の八属性あるらしい。

 空気中には『魔素』と呼ばれるものが含まれており、魔素は各属性に分かれている。

 風魔法が使いたいなら空気中の風魔素を集め、各々好きなように魔素を練り形にするといった具合だ。

 魔力と属性は誰でも必ず持っているため、どんな弱者でも魔法を使うことは出来るのだが、その強さはステータスとセンスによるという。


 属性ついでに魔法についても聞けてよかった。

 つまり魔法は特別なものではなくて、一般的に普及してるってことか。ふむ。

 後でエマさんに使い方を聞いてみよう。


「とりあえず運んじゃうね」


 そう言うとリアは、右腕を真横に振った。それに合わせて家具が移動する。リアはそのまま家具と共に二階へと上がっていった。


「ほらマシロ、あんたも行っといで。配置とか言わないと変なところに適当に置かれちまうよ」


 エマさんが少しいたずらっぽく笑いながら言った。


「そ、それはちょっと困ります…」

「だろう?なら行って、場所を指定してきなさんな」

「はい!」


 魔法は気になるけど今は目の前の家具だ。椅子ならまだしも、机は変なところに置かれたら自分で移動させるのは大変だろう。

 急いで階段を上がり、自分の部屋に向かった。


「リア」

「シロ、これどこに置けばいい?」


 声をかけると、リアは家具を魔法で持ち上げたまま開口一番にそう聞いてきた。


「あ、えーっと…」


 改めて部屋を見渡す。


 東に面したそれなりの窓がある壁は、壁に沿うようにしてベッドが置いてあるから無理。西側にはクローゼットがある。北側は入口だし…消去法で大きな窓がある南側の壁の近くに置いてもらおう。


「じゃあ、ここら辺に」


 リアは頷いて、私が言った場所に机と椅子を設置してくれた。


「こんな感じでいい?」

「うん、大丈夫。ありがとう」


 机と椅子が設置されただけで、部屋の中が豊かに見える。色や雰囲気もこの部屋と合っていて素敵だ。


「…じゃ、俺そろそろ行かなきゃ。またね、シロ」


 リアがそう言って部屋を出ていく。

 慌てて後を負い、リアの背中に向かって声をかけた。


「ま、またね!今日はありがとう!」


 リアはチラッとこちらを見て「うん」と一言返した後、そのまま帰って行った。

 残された私は、先程設置されたばかりの家具を見る。


 よし、折角だから使ってみよう。


 リアが丁寧に机の中に椅子を仕舞ってくれたので、それを引き出してから椅子に座る。

 ちなみにこの机と椅子のセット、勉強机セットのような構造だった。


「高さも丁度良くて使いやすそう…。そうだ、あの本」


 布団を干す時にベッドの上に置いてそのまま放置していた『召喚術の魔導書』改め『レシピブック』に視線を移す。

 私は椅子から一旦降りて本を手にし、また椅子に戻った。

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