第4話《私の魔力は赤点でした》
「さて、どこか行きたいところはあるかい?」
エマさんが私に向かって言う。
「ここは職人の街だからね。物で溢れかえっているし商売も盛んなんだよ。」
「へぇ…。」
なるほど。だから賑わっているのか。
「あぁ、マシロ。あんた当分はうちにいるとして、何かやりたいことってあるの?」
まずい、考えてなかった。
そう言えばあの本についても調べなきゃならない。(家に置いてきちゃったけど)
このままではニートになってしまう。
「えっと…エマさんのお店で働かせてもらうことって出来ませんか?お給料とかは要らないのでお手伝いだけでも…。働き口が見つかるまででいいんです。」
「そりゃもちろん歓迎するよ。でも本当にいいの?」
「今はまだ何も考えてないので…」
「なるほどね。じゃあ手始めに夕飯の買い物でも手伝ってもらおうか」
「はい、もちろんです!」
「…あ、マシロ。もしやりたいことが決まったらギルドに行くのを忘れないようにね」
「ギルドですか?」
エマさんによると、この世界にもギルドと言うのものが存在していて、大きく『冒険者ギルド』『商業ギルド』『職人ギルド』の三つに分けられていているという。
各ギルドの細かい特徴はそのギルドの受け付けで聞くといいと言われた。
「ちなみに私は商業と職人の二つ。自分で作ってそのまま売ってるからね」
「複数登録できるんですね…」
「すごい人なんて全部登録してて、冒険者ギルドで魔物の解体をお願いして、その素材で物を作って売ったりしてるんだから。たった一人で一つの商売が完成しちゃうのよ」
「なるほど…」
そういう手もあるのか。
先程エマさんに何も考えていないと言ったが、実は自分の飲食店を持つのが昔からの夢だった。
折角異世界に来たんだしやってみたい。
…そういえば、あの本には『召喚術』ってあったな。
異世界と言えばチートステータスにチートジョブ、チートスキル。
もしかしてステータスとか見れるんじゃない?
「あ、あのエマさん。私のステータスって…」
「ステータス?あぁ、それも覚えてないのかい。じゃあ手始めにどっかギルドに寄ろうかね」
「ギルドにですか?」
「ステータス確認にはギルドで測定してもらうんだよ。どのギルドでも出来るから、とりあえず一番近い職人ギルドに行こうか」
そう言うとエマさんは歩き始める。
なるほど、自分で見れるわけじゃないのか。
「ついたよ、ここがこの街の職人ギルドだ。」
見ると木造二階建ての立派なギルドが目の前に建っていた。
中に入ると、色々な人で賑っているのがわかる。全員職人さんだろうか。
「さ、こっちだよ。」
エマさんが向かったのは『総合案内』の文字が書かれたカウンター。
「本日はどのようなご要件ですか?」
受付のお姉さんが愛想よく対応してくれた。
「この子のステータス測定をお願いします。」
「かしこまりました。少々お待ちくださいね。」
そう言ってお姉さんは何やら取り出した。
「お待たせしました。こちらの魔法石に手を触れてください。結果はこちらの機械から出てきますので。」
赤ちゃんの拳程のつるっとした透明な石を渡された。
これが魔法石?水晶みたいだけど…。
恐る恐る、指の先だけ触れると石が光り出し、少しすると隣の機械が動き出した。
よく見たらタイプライターだった。魔法で動いているのだろうか。
「はい、大丈夫です。こちらの結果をご確認ください。」
出てきた紙を手渡される。内容はこんな感じだ。
《 名 前 》谷崎 真白
《 レベル 》1
《 年 齢 》17
《 種 族 》人間
《 職 業 》召喚術師
《 体 力 》300
《 攻撃力 》500
《 防御力 》250
《 魔 力 》50
《魔法攻撃力》500
《魔法防御力》250
《 スキル 》召喚術・料理
《 属 性 》火・水・風・氷
職業欄に目がいく。
やっぱり私、召喚術師になってるんだ…。
「ありがとうございました。」
お礼を言ってカウンターから離れる。
「どうだった?」
「エマさん。これなんですけど…」
「どれどれ?」
私から測定結果の紙を受け取ったエマさんは目を見開いてこう言った。
「あらまぁ!あんた召喚術師だったのかい!しかもこれ、かなりステータス高いじゃないの!」
エマさんが言うには、召喚術師はこの世界ではレアらしい。
ステータスに関しては、レベル1の人間の平均ステータスは体力から魔法防御まで100程度。さらに普通なら属性は1つで才能があっても2つ程度らしいのだが、私の場合は4つも付いているという。
これはチートステータスきた?異世界無双?マジで?
「レベル1っていうのが気になるけど…、…ん?あんた、魔力おかしくないかい?」
「え?」
「なんで他のステータスが余裕で100越えてんのに魔力だけ50しかないんだい。全く不思議なステータスだねぇ。」
「えっ…、え!?」
召喚術師なのに!?
「まぁそのうち記憶が戻ればわかるのかしらねぇ…」
「私の…異世界無双が…夢が…」
「え?」
「あ、いや何でも…」
どうしろってんだよ…もぉぉぉ…
明らかにショックを受けている私を見てエマさんが気遣うように私の肩を叩く。
「ま、まぁまぁ。レベルアップすればそれなりに魔力も上がるだろうし…そんなしょげてないで買い物行こう?ね?」
「はい…」
魔力が有り得ん低いというショックから抜け出せないまま、私たちは職人ギルドを出て買い物に向かった。