第1話「滅びゆく世界の歴史」
「魔術」
それは人の理を超えし学問。
人間という種族が普段触れることのない「精霊」と呼ばれる概念に関わることによって起こる超常現象。
人は古き時にそれを発見し、そこから様々な技術、そして文明を築いた。
しかし、そんな栄えた時代は長続きはしない。
今現在「聖暦2884年」と世間で呼ばれる時代。
……世界は着々と、終焉へと歩みを進めている。
使い過ぎた精霊の残骸は有害物質と化し、空へと付着した。
それにより、太陽の光が歪んで届くようになり、空は紅く、雲は黒くなった。
それだけならまだいい方だ。しかし、現実はそのような環境問題だけでは済まされなかった。
世界の終焉を悟った「聖霊教会」と呼ばれる宗教集団は、この世に未練はないと人間としての役割を放棄しだし、そこに漬け込んだ悪質な「魔王軍」を名乗る反社会軍が侵略を始め、世界各国は混乱状態に陥っている。
だが、そんな世界滅亡の典型的なシナリオも、何百何千と生き延びてきた私にとっては茶番でしかない。
さらに言えば、私の唯一の弟子であるルルリーナも、何百年と吸血鬼の根城跡に一人で過ごしてきた身だ。
むしろ今の私には、告白を断った後のルルリーナの泣き顔の方が厄介な訳で……。