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最終話 めちゃくちゃ

長いです。

最終話です。

胸糞注意。


 やがて、俺たちは1階に辿り着いた。

 途中で何人かの侵略者と遭遇したが、いつものように俺が飛びかかって、カイトがミシンで沈めた。——すぐ起き上がってきそうなやつは、俺が三角定規で()()()


 そんなことを繰り返していると、さすがにカイトの声にも疑問が混ざり始める。


「……あの、マサキさん、その……さっきから、やりすぎっていうか」

「後ろから討たれたいのか?」

「違うっスけど」

「ならいいだろ。……俺たちは何も悪くない。捕えられた友人を救い出しに行く中学生なんだからな」


 カイトの顔を見れない。俺をどんな顔で見ているのか。——それを、知りたくなかった。


 階段を降りて、昇降口に向かって歩いていく。ロの字型の校舎の廊下のうち、俺がハルナと共に上った階段から昇降口にかけての、この廊下だけは歩いていなかった。

 つまり、今まで1度も通りかからなかった保健室はここにあるのだ。


 ハルナの元へ、一歩一歩近付いていく。


 ——そして、遠くからかすかな足音が聞こえ始めた。


「来たな」

「……」


 俺たちは足を止め、前後の廊下に対して背中合わせになった。

 足音はどんどん数を増やしていく。やがてそれは背後からも聞こえ始める。囲まれている。


 保健室の前で、俺とカイトは完全に孤立した。


 分かってはいたが、俺たちは誘い込まれたようだ。ハルナを放って4階に行くはずがないと思われていたのだろう。さっき、俺はハルナに対して……すごく感情的になったからな。

 逃げ場のないこの場所で、万全の体制で迎え撃つために、ということだろう。


 その真っ黒の集団から、1人の男が歩み出てくる。何となく分かった。さっき視聴覚室でリーダーをしていたやつだ。


「よく来た、そして来てしまったのだな、マサキ」

「早くハルナを返せ」

「まあそう焦るな。——ハルナ、出番だ」


 出番。

 その言葉にぞくりとする。——やはりハルナは、侵略者たちの魔の手に、落ちてしまったのか。


 リーダーの言葉と共に、黒い山の中から中学生らしい上履きの音が聞こえてきた。キュッキュと床を鳴らすその音は、大男の波の中を、少しずつ近付いてくる。


 ハルナじゃなければいいのに。そう思う心はどうしても止められなかった。ぎゅっと目をつぶる。


 それから程なくして、足音が止まった。

 近い。

 目の前まで、出てきてしまったのだろう。


 俺も覚悟を決めて、目を開ける。


「……っ!!」


 目に入ったのは、いつだってきらきら輝いていた、——ハルナの黒い瞳だった。


 そう。すっかり侵略者の装備に着替えてしまった、ハルナがいたのだった。


「ハルナ……!」

「マサキさん!」


 咄嗟に伸ばしかけた手を、背後からカイトに抑えられる。まずは話をしろ、とその目が言っていた。


 その間も、ハルナは一言も喋らず俺をまっすぐ見ていた。澄んだ瞳だ。2階で一緒に戦った時と、何一つ変わらない。


 その姿を見て、涙が止まらなくなった。


「ハルナ……ごめん、遅くなった……早くここから逃げて、4階に行こう」


 すると、ハルナはゆっくりと近付いてきた。傍らに2人の侵略者がSPだとばかりについていて、じゃきっと俺に銃口を向けている。


 ハルナは俺の目の前までやって来ると、三角定規を持っていない左手を取った。


「——マサキ」


「ああ」


「マサキは、生きてるね」


 ハルナは俺の手首に二本の指を当て、脈を取っているようだった。緊張で高まる脈動が、ハルナに伝わっていく。


「でも、マサキは……もう、いらないんだって」

「……っ、何でだ?」




「だって、マサキは——この中学校を踏み荒らす、侵略者だから」




 俺は反射的に腕を振り払った。

 もうダメだ。

 ハルナは、完璧に心を操られてしまった。


「ハルナさん! 目を覚ますっス!! マサキさんがハルナさんにしてくれたこと——全部、忘れたっスか!?」


 いつの間にか、カイトは背後への警戒を完全にやめて、ハルナの方を向いていた。それを、ハルナはまたしても穏やかな目で見ている。


 何も間違ったことはしていない。むしろ、二人のためを思ってしている。——そんな気持ちが伝わってくる。まるでシュウみたいだった。


「もちろん、覚えてるよ。——黒服のお兄さんが私を保護しようとしてくれてたのを、マサキが()()した。マサキが暴れて罪を重ねないように、捕まえようとしてくれていたのを、()()()()()。そして、そんなマサキを最後の最後まで信じて、()()()()()()と頑張っていたシュウくんを——殺した」

「ハルナっっ!!」


 ハルナ。

 なんで、侵略者の肩を持つんだよ。


「悪いのは侵略者の方だろ!! なんの謂れもないのに襲いかかってきて……っ! ハルナ……ハル、ナ……なんで……一緒に4階まで、逃げようって……」


 ずっ、とハルナに詰め寄ろうとした時、右側にいた侵略者に腕を弾かれた。


「——あ゛っ……」


 鋭い痛みとともに、三角定規が飛んでいく。それはすぐに手近の侵略者が回収してしまい、俺の武装はミトンだけとなってしまった。それも、手から力が抜けることでずるっと落ちる。


 同時に、俺の心の中の()()()も、落ちてしまったみたいだった。


 咄嗟にリュックを振りかぶろうとするカイトを、手で抑える。


「——マサキさん!」

「いいんだ。カイト。……もう……」

「あ、諦めないでくださいっス!!」


 涙もろいカイトは、それだけで涙を流し始める。


「マサキさんは……ハルナさんの言葉じゃないっスけど、オレのヒーローっス。オレが出来ないこと、全部やってのけるんスから……」

「でも、ハルナにまで裏切られた」

「っ……ここからっス!! ここからでも、大逆転して——オレに、夢を見せてくださいっス。ユウカの仇を取れなかった、オレに——」


 そうボロボロ泣くカイトの頭を、ハルナから取り戻した左手で撫でると、侵略者どもがどよめいた。

 ユウカの話を聞いたからだろうか。それとも……カイトが、ハルナのように俺にここまで心酔していたからだろうか。


 これはいいことを聞いたぞ、と侵略者のリーダーが鼻を鳴らす。


「——ユウカ……タナカが背負ってた中学生のことか。あの生徒は——」

「やめろ。カイトの前で、その話すんな」


「ふん……まあいいだろう。ハルナ。分かってるな」


 それきり、リーダーは引っ込む。俺に武器が無くなったと見ると、さっと侵略者は一歩退いて——俺の視界には、ハルナだけが映っている。

 今度はカイトすらも銃口を向けられているため、迂闊に手出しできないようだ。


「マサキ。マサキの罪を、洗い流してあげる。……たくさん反省したら、幸せに暮らせるよ」

「反省? なんの事か分からないな」

「……大丈夫。マサキはそう言うだろうって、黒服のお兄さん達が言ってたから」


 ハルナは腰から何かきらめくものを取り出した。それは、研ぎ澄まされたナイフだった。


「ハルナ……っ!」

「勘違い、しないで。私は洗脳されてるんじゃないの。——本当の自分を、思い出したの。本当はマサキに洗脳されていて……でも、罪深い私は今でもマサキのことが大好き。本当は、こんなことしたくない」


 そう言うと、ハルナはナイフを俺の脇腹に突き当てた。ブレザーに食い込む刃の感触が、痛い。


 少しでも身じろぎすれば、ナイフは布地を容易く切り裂いて、俺は大怪我を負うだろう。すぐに手当されて死にはしないんだろうが、俺は侵略者の手に落ちて——きっと一生をボロ雑巾のように過ごすことになるのだ。


 横ではカイトがまたボロボロ泣いていて、侵略者たちを必死に睨んでいる。


 俺も、覚悟を、決めるか。

 後はカイトに委ねよう。——終わりだ。


「カイト」

「……なんスか?」

「今までありがとうな」


 カイトはギョッとして、俺の言葉の説明を求めようとしてくる。その口が開く前に、俺はハルナの目を見た。



「ハルナ。最後に言わせてくれ」

「なに?」


「——俺も、お前のことが大好きだ。今も昔も、そしてこれからも……」


 そう言った瞬間、ハルナはナイフを押し付ける力を強めた。


 俺はその腕を本気で打ち払う。それでも脇腹を掠めたナイフはブレザーを切り、ワイシャツに新たな血のシミを作る。ぴりりと脇腹に痛みが走ったが、すぐに無くなった。よっぽど、脳が興奮しているらしい。


 まさか抵抗されるとは思わなかったのか、ハルナの目が見開かれるが——《しょうがないなあ》と言っているようにも見える。


 だが怯むことなく、剣道仕込みの鋭い突きを繰り出してくる。

 その周りで侵略者どもが動き出すが、カイトが立ち回って銃を撃たせるのを防いでいた。


 ほんと、馬鹿だよな。やるならカイトごと殺せばいいのに。


 ——殺し損ねると、厄介事を引き込むって、いい加減学ばないのかなぁ……


 俺はオロオロして動き出せない侵略者を嘲笑いながら、ちょうど隣に来たカイトをぐっと掴んだ。カイトの目はギョッとしたが、《これが囮になるということっスね》とばかりに穏やかな顔になり、俺を守るべく体を伸ばす。


 だがな、違うんだ。

 違うんだよ、カイト。


 俺は、お前に。


 俺はミシンが大きすぎて半開きにならざるを得なかった、リュックに手を突っ込んだ。そこから、1番初めに入れておいた()()を取り出す。


 もう二度と使わないだろうなと、ぼんやり思っていた。

 ハルナとカイト。2人の仲間と出会って、俺は確かに変われたはずだった。

 血なまぐさい中で育まれた友情、愛情、信頼——なんとも俺らしいなと思うけれど、それだって本物だ。


 と、思ってたんだけどな。


 カイトのリュックから飛び出てきた()()()()に、ハルナの目が見開かれる。カイトの目もそれを捉え、口がぽかーんと開いた。


 出てきたのは、——()()()()()()()()()()()だ。


 俺はそれを右手に構えると、伸びてくるハルナの右腕をばさりと切り裂いて——


「さよなら、ハルナ」


 そのまま、右胸に深々と突き刺した。びくんと跳ねる肩。やがて目から力が失われ、口が半開きになる。


「えへへ。じゃあ、おそろい」


 そう言うと、切り裂かれてベロベロになった腕を持ち上げ、俺の左脇腹にナイフを突き刺した。痛みに目が眩むが、視線だけはハルナから逸らせなかった。


 死に瀕したハルナは、()()()()から少し解けて——また俺に愛のこもった目を向けるようになっていたのだ。


「いいよ、マサキ。わたしは、そんなマサキも、すきだから。——ぜーんぶ、めちゃくちゃにしちゃいなよ……」


 それきりハルナはがくりと倒れ、俺の体は血でビショビショになる。俺の全身に、ハルナの重みがかかった。


「ハルナ……っ」


 叫び声が喉元までせり上がってくる。でも、今はそんなことをしている場合じゃない。何より、カイトの前で俺が悲しんではいけない。


「とっ、捕らえろ——!!」


 そんな気持ちも冷めぬままに、俺は慌てて向かってきた侵略者数名を切り裂いた。ハルナの艶やかな血とは全く違う、ドロっと濁ったものが体にこびりつく。


 ——あー、服が張り付いて気持ち悪い。着替えないとな。


 どちゃっと倒れる侵略者共を見て、周りの侵略者どもが怯えるように一歩後ずさった。


 普通の中学生が、息をするように人を殺したんだからな。無理もないだろう。


 ほんと、何なんだろうな。


 そして、俺のナイフを見て——カイトがわなわなと震えだした。


「アンタ、だったんスね」

「ああ、そうだ。正直驚いた」




「ユウカを、ユウカ、を……殺した、のは……」




 言葉にも出来ないらしく、そのまま崩れ落ちる。まあ、俺への心酔具合と、憎悪の大きさ。それらが混ざりあって、大変なことになってるんだろうな。


 俺はハルナをそっと床に横たえると、カイトに歩み寄る。

 侵略者は俺を撃とうとするが、「カイトを殺しはしない」と言うと、俺の周りに数人が押しかけただけで発砲はしなかった。


「カイト。もうハルナもいない。——お前には、ユウカさんの仇をとる権利がある」

「な、にを……言ってんスか」


「殺せ。殺していい」


 何故か涙が溢れてきた。

 人生、上手くいかないもんだな。

 ただ、学校に行きたかっただけなのになあ。


 カイトにナイフを手渡す。

 ユウカとハルナを刺したナイフだ。ユウカを刺した時の血は、拭わなかったせいで赤くこびりついている。


「……オレは、オレは……オレ、は……」


 ナイフを手にぐるぐると思考するカイト。

 俺は黙って首を差し出していたが——やがて、その時が訪れる。




「オレは、出来ないっス」




「——は?」




 次の瞬間、目の前で鮮血が飛んだ。

 カイトは自分の首を、自分で刺していた。温かい血が顔に張り付き、口に入ってきて、喉を落ちる。

 目の前の光景が嘘ではないと、リアルに訴えかけてきた。



 頭の中で、最後の何かが、切れた。





「いや、いやだ……なんで、俺、……()、僕ばっかりこんな……もう」


「不味い! こっ、今度こそ取り押さえろ! もう、殺すのもやむなしだ! 死んでも逃がすな——」


 リーダーがそう言うのも右から左に流れていく。俺は動かないカイトの首からナイフを抜き取ると、周りにいた侵略者のヘルメットの間にナイフを刺し入れ、首をすぱすぱと切り裂いていった。


 そのまま跳ねるようにあの侵略者の腕にナイフを刺すと、その腕から三角定規を抜き取る。


 俺は愚かにも、ここに至ってようやく気付いた。——人を殺すことがいけないことならば、この人達はきっと……


「そうか!! 侵略者たち! 僕を捕まえるためにここにやってきたんだね!! 全く気付かなかったよ!! じゃあ何? 僕のせいで、この2人は——」


 侵略者を蹴散らしながら、僕はぐんぐんと階段を上っていく。

 鋭角(30°)、鋭角(60°)——そして時たま直角や腹も使って、プロテクターの無い部分を抉りとっていく。


 多分死んだ人もいるだろう。でも、しかたないよね。





 僕はマサト(・・・)

 どこにでもいる普通の中学三年生で、マサキっていう双子の兄がいた。

 ずっと学校に行きたくて……でも、人を見ると殺したくなっちゃうビョーキだから、病院に閉じ込められていた。当時の僕はそれの何がいけないのかも、分からなかった。


 マサキ——兄さんがいつも楽しそうに学校の話をするから、ずっと行きたいと思ってたんだ。

 だから。

 よく分からなかったけど、兄さんの真似をすることにした。

 兄さんはビョーキじゃなくて、僕はビョーキだったから。兄さんの真似をすれば、病院から出られると思った。


 結果は大成功だった。


 見回りに来る看護師さんもだんだん減ってきた。そんな隙を見計らって——病院の人を殺して脱走して、家まで帰った。

 登校しようとする兄さんの首をホースで締めて殺した。制服を奪った。


 そのまま兄さんになりきろうとしたけど、やっぱり慣れないうちは上手くいかなくて、勢い余ってユウカさんは殺してしまった。——手が反射的に動いてしまった。


 でも僕は、ハルナと出会った。

 もとは兄さんが好きな子、って印象だったんだけどね。ああ、これは兄さんも好きになるなと思った。


 初めて、人を殺したくないと思ったんだ。大切な人のために、ね。

 人を殺すのが怖いことだと分かった。同時に、マサトがどれだけ罪深い子供だったのかも。


 でも、ハルナはそんな僕も受け入れてくれたんだ。


 …………えへへ、でも、気付いた時には遅かった。

 僕はカイトの大切な人を殺してしまっていたんだ。——そんな僕は、もうハルナのとなりにいちゃいけないんだと思った。こんなことを思うのも、生まれて初めてだった。


 カイトが気に病むかなと思って、ハルナも殺した。ああでも、これも人殺しか。僕、つくづくダメだなあ。


 でも、カイトは——普通の人間は、もっともっと優しかったんだ。


 こんな僕に対してでも、親愛の情を抱いちゃうくらいにね。もしくは、僕の演技が上手だったのかも。


 どっちにしろ。


 カイトは死んだ。ハルナも殺した。兄さんも殺した。シュウも殺した。


 僕は全部、台無しにしてしまったから、もう意味の無い話になっちゃった。




 4階に辿り着いた。

 となりにハルナはいない。ついさっき、一緒に4階に行こう、と誓った気がするのにな。


 階段を登りきってみると、3階までの景色とは打って変わって、ひどく殺風景だった。あれだけ足掻いて見たかった景色は、こんなものだったのだ。ああ、人生は、無情だ。


 奥に、警備員と——彼らが守る入口がある。


 兄さんの話に、《例の場所》の話は全く出てこなかったからよく分からなかったけど、なるほど。シェルターがあるんだね。

 僕が歩み寄ると、シェルターの警備員2人は僕に銃口を向けた。


 もういいよ。もう、疲れた。


 何となく、僕も三角定規を向けてみる。

 血が滴る三角定規は、僕の思い描いた《希望のあふれる学校》とは正反対だな、と思った。ここまで来たら、笑うしかない。


「……なんということだ。君たちまで、侵略者に洗脳されているなんて!」


 ゴム弾かなあ、それとも実弾、かな——


 ダァン、という音と衝撃が同時にやってきて、僕は意識を失った。









*・*・*








 ピッピッ、という心電図の規則正しい音が聞こえて、僕は目覚めた。

 僕が前にいたところとさほど変わらない、真っ白の天井が見える。病院だろう。

 僕は生かされているらしい。


 のろのろと体を起こそうとしたけど、ゴム弾で撃たれた腹部が痛すぎて起き上がれなかった。


「はあ……」


 起き上がるのをあきらめて、大人しく天井を見つめる。

 これからどうしようかな。生かされるとは正直思ってなかったし。


 となると。


 僕ってば一応、これまでは殺人未遂で済んでたから、精神疾患ってことで罰されてはいなかったんだけど。今回ばかりは免れないだろうな。

 傷が治るまでは様子見ってところ、なの、かな。


 そうしたら、とうとう刑務所行きか。よく分からないけど。……もう、学校に行けないんだな。


 その時、頭にハルナの言葉が浮かんだ。


 ——ぜーんぶ、めちゃくちゃにしちゃいなよ。


 僕が裏切ってしまったハルナ、そして僕を裏切ってしまったハルナは……それでも、花のように美しく可憐だった。


 はーあ。ぜんぶ台無しになったし。


「……そうしようかな」


 ハルナは《マサキ》としての勇敢な僕と、《マサト》としてのどうしようもない僕のどちらも受け入れてくれた。

 そんなハルナのお願いなら、叶えてあげないと。


 決めた。僕はこれから、全部をめちゃくちゃにして……ハルナの言葉を世の中に刻みつけてから、カイトのために死のう。

 僕はマサキ。今日から、マサキだ。


「まずは、リュックとブレザーを買わなきゃ」

完結です。

後書きと謝罪は活動報告の方で……

どうしようもないバッドエンドと、拙い文をお読みいただき、ありがとうございました……!


【ステータス】(エピローグ前)

パーティ:マサキ


名前:マサキ=マサト

武装:教師用三角定規(1:2:√3)、アレ

服装:ハルナのブレザー(血染め)、白ワイシャツ(血染め)、ズボン(血染め)

状態:おしまいだ!


【おまけ】


名前:ハルナ

武装:ナイフ

服装:侵略者の服(血染め)

状態:洗脳マサキ


名前:カイト

武装:リュック(ミシン)

服装:ブレザー(血染め)、ズボン(血染め)

状態:洗脳マサキ

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