59.今度はブラック
げんきは、目の前で起こった事が整理出来ずに、ただただ、立ち止まって、白い卵を見ていた。
「えっ……浮いてる」
渦が消えて、白い卵だけになったが、白い卵は、出現した空中から落ちる事も無く、浮いていた。
(あるじー大丈夫ー?)
「あー、大丈夫だよ」
側で黙っていたピーチが、全く動かないげんきを心配して、話しかけてくれた。
ピーチが話しかけてくれたおかげで、ピーチを撫でてあげていると、落ち着いてきたげんきは、卵を観察するように、浮いてる卵の周りを、ピーチたちを連れて歩いた。
(仲間ー)
(あるじー増えるー?)
「グルー」×2
げんきが、卵の周りを2周まわったところで、止まると、
ピーチたちは、更に2周歩きまわって、げんきのところに戻ってくると、仲間ー、とげんきに伝えた。
「どういうこと⁉︎」
げんきは、訳がわからずに、驚いて、ピーチたちに、説明を求めた。
げんきは、観察する上で、眼で鑑定したが、卵、の一文字以外の情報はなかった。
(あれはー仲間ー)
「あの卵って、魔物なの⁉︎」
げんきは、マップを確認してみると、確かに、魔物を示す灰色の点だったが、
改めて、眼で鑑定してみても、卵、だけで、マップにも、卵とは表示されず、灰色の点があるだけだった。
げんきが、ピーチに話しを聞こうとしたら、宙に浮いていた卵が、ゆっくりと、地面に落ちていき、地面に着くと、卵の下にどこからか毛皮らしきものが現れた。
「一体なんなんだ………」
げんきが、呆れを通り越して、無に近い感情になってきていた。
(あるじー嫌な感じー)
ピーチの声が、げんきに届くと、同時に、げんきにも悪寒が走った。
「ドン」
「今度はなんだ」
げんきが、音のした方を見ると、さっき見た黒い渦が、下に見えるエリアの中央近くに発生していた。
ドン、ドン、ドン、と音が響いてきて、エリア内の一番高い位置にいるげんきたちにも、地面が揺れていると感じる振動が伝わってきた。
げんきが眼を使って、黒い渦の中を見ると、
黒い霧が邪魔して、良く見えないが、大きなものが動いているのはわかった。
「マジで、なんなんだ……」
(あるじー)
げんきを心配して、ピーチが横にきて、足元からげんきを見上げていた。
ドン、ドン、と音は聞こえるが、一つずつ解決していこう、と決めたげんきは、心配してくれているピーチたちを撫でてから、卵に近づいていった。
「ピーチ、これは仲間なの?」
(そうだよー)
ピーチに話しを聞いていくと、
この卵は、魔物の卵みたいで、げんきならまたテイムするから仲間になると思って、仲間ー、と言っていたらしい。
魔物の卵か、何が生まれてくるかは、ピーチたちにもわからないが、魔物の卵なのは、確からしい。
げんきは、楓と椿にも話しをせずに、テイムすると、どうなるのか、容易に想像出来たので、一度持って帰って、話しをしようと決めた。
マジックバッグの中なら時間もゆっくりだから、すぐには孵化しないだろうと、卵を入れようとしたが、卵はマジックバッグに入らなくて、一度触れてから、卵の周りに結界の様な膜が張られてしまった。
ドーン、と今までで一番大きな音がして、げんきが、反射的に音のした方を向くと、黒い渦に二方向から白い何かが、吸い込まれていた。
そして、白い何かが、全て吸い込まれると、
バキッ、バキッ、と音がして、黒いもやと渦がなくなった。
ジャイアントブラックオークキング レベル300
7メートル以上ある、黒い巨大な大剣、黒い鎧を装備した全身黒い巨大なオーク
ジャイアントブラックオークジェネラル レベル250
6メートルくらいの、黒い大剣、黒い鎧を装備した全身黒い巨大なオーク
ジャイアントブラックオーク レベル200
4メートルくらいの、黒い棍棒を持った全身黒い巨大なオーク
キングが二体、ジェネラルが10体、オークが60体確認することが出来て、生まれたばかりだからか、種でレベルは同じで、キングの指示で、周りを探索し始めた。
「おいおい、マジかよ……」
げんきは、ピーチたちを見て、即座に湖に撤退しよう、と決めた。
「ピーチたちは、湖に戻る準備、敵がこっちに来ないか、監視しといてくれ」
(わかったー)
げんきは、ピーチたちにいつでも動けるように、指示を出すと、卵のもとに歩いていった。
げんきは、卵を持って帰りたいと思っているが、マジックバッグには入らず、結界の様な膜で、触ることも出来ず、攻撃して、割れたら意味ないし、とどうしたらいいのかわからなかった。
げんきは、膜を突破出来ないかと、手を突っ込んでみたり、膜ごと檻に入れようとしたが、檻を発動させたら、膜が広がって、檻が壊されてしまい、最悪置いて行くしかないと思って、弾かれるだろうと思いながら、テイムの陣を当ててみると、陣は卵の中に吸い込まれていった。
卵
と、げんきの中に情報が入ってきて、テイムは成功したみたいだった。
「えっ……なんなんだ」
げんきは、テイム出来た事に驚いて、
今は、考えるだけ無駄だと思って、卵に触れると、膜はあるけど、触ることが出来た。
マジックバッグには入れられなかったので、背中に担ぐことにして、下に敷いてある毛皮に卵を包んで、布で落ちないように身体に縛って、少し走ってみて、落ちないか、確認した。
「よし!みんな湖に戻るよー」
(わかったー)
「絶対にはぐれたりするなよ!後、敵がいても、戦うんじゃなくて、湖に向かって走るんだよ」
(わかったー)
げんきは、ピーチたちを一通り見ながら、これからの予定を伝えると、
ピーチたちは、みんな頷いたので、
げんきたちは、丘の上から湖に向かって走り出した。
げんきは、マップを確認しながら、オークに遭遇しないように、湖に向かって走っていたが、オークたちも、何体かげんきたちの存在に気がついて、後を追ってきた。
なんとか後ろから追ってきていたオークを振り切ったが、湖に戻る為に通るひらけた空白地帯に、ジャイアントブラックジェネラルとオーク六体がいた。
げんきは、覚悟を決めると、
ジェネラルとオークに、風と水の刃の複合魔法を最大威力で放った。
オークは、一撃で全滅したが、
ジェネラルは、一撃では、死なずに、グォー、と大きな声を上げた。
げんきは、ジェネラルに再度攻撃して、倒すと、
近くにいたオークの集団が集まって来ていたので、ジェネラルとオークを回収すると、湖に戻る道に飛び込んだ。
「着いたー」
(湖ー着いたー)
げんきたちは、なんとか湖に戻ってくることが出来た。




