55.オルトロス
げんきは、ピンクと白のモコモコに包まれながら、目を覚ました。
うーん、と身体を起こして、手を突き上げると、
ピーチとハクも、起きて、モソモソしていた。
(あるじーおはよー)
(あるじ、おはよう)
「ピーチ、ハク、おはよう」
げんきは、ピーチとハクを撫でると、2匹を連れて、部屋から出て、真っ暗な外に出て、タバコに火をつけた。
ピーチとハクを撫でながら、一服していると、
アエリスとシロが、ゆっくり歩いてきて、げんきたちに挨拶してきた。
げんきは、アエリスと少し話すと、昨日出来なかった解体をやってしまおう、とテントに戻って、マジックバッグを取ってきた。
(あるじーおっきいねー)
(おっきー)
げんきが、マジックバッグから、スネークたちと残りのクラブを出して、最後にクイーンスネークを出すと、ピーチとハクが、クイーンスネークに近づいていって、驚いていた。
「さてと、解体 極を試すか」
げんきが、気合いを入れて、バラバラになっているグリーンスネークの山に、解体 極を発動すると、ヘビ皮、肉、牙、毒、魔石、になった。
素材は、同じ種類のものだったが、
ヘビ皮は、前は、バラバラになっていたら、ヘビ皮もバラバラになって、解体されていたのに、
今回は、バラバラになる前の繋がった状態のヘビ皮が、出てきた。
「すげぇ……」
「当たり前だけど、こっちの方が価値は高いよ」
げんきが、ヘビ皮に驚いていると、
アエリスが、繋がったヘビ皮を持ちながら、教えてくれた。
「まぁ、そりゃな、大きい方がいいよな」
「あー、違う違う、大きい方がいいのは確かだけど、品質の問題なのよ」
「品質?」
「そう品質!この皮は、極上品質!今までのものは、良くて最高品質、ほとんどが高品質だったんだよ」
「ん?」
「素材には、1つ1つ品質があるんだよ。今まで、げんきが解体したものは、綺麗な状態で、狩ってきた魔物は、最高品質で、損傷の少ないものは、高品質だったんだよ」
「うーん、マンティスの羽が欠けたりしてたのが品質は悪くて、傷の無い魔物は、品質が良いみたいな感じの認識であってる?」
「合ってるよ。極上品質ってのは、一番いい品質で、この皮がそうなのよ」
「あんなバラバラだったのに⁉︎」
「それが、解体 極の効果なんじゃないかな」
「あははは………」
またぶっ飛んだスキルになったなぁー、と考えていたが、スキルを確認すると、ユニークスキルの欄にあったので、ユニークスキルなら、と考えても無駄だと、諦めた。
げんきは、その後も、スネークたち、ビッククラブ、ジュエルクラブ、と解体していった。
解体 極で解体したものは、余程損傷の激しい個体じゃ無ければ、極上品質の素材になっている、とアエリスが教えてくれた。
げんきが、最後のクイーンスネークを解体する前に、楓と椿が起きてきて、朝ごはんを食べることになった。
「解体 極、っていいスキルだね〜」
「もうレベル21まで上がってるよ」
「はやー、それに一番上の品質ばっかりなんて、売ればいくらになるのか、楽しみだね」
ごはんの時の話題は、ユニークスキルに変化した、解体 極、の話しがメインだった。
「やっぱり、まだ子供じゃ、げんきたちには勝てないよね」
「これ、子供⁉︎」
『子供⁉︎』
「そうだよ。言ってなかった?」
ごはんが終わった後、げんきが、クイーンスネークを解体するのをみんなで見るために、クイーンスネークの前まで行った時に、
アエリスが、子供、とつぶやいたのを、聞いたげんきたちは、クイーンスネークを見て、驚いていた。
「クイーンスネークは、早い個体で、300年くらいで大人になるのよ。大人は、全長500メートル以上はあるよ。この子は、生まれてから、150年経ってないくらいだから、まだ子供だよ」
げんきたちは、アエリスからクイーンスネークの説明を聞いて、へぇー、と言いながら、目の前のクイーンスネークを見ていた。
クイーンスネークを解体すると、
大きくて長いヘビ皮、頭、頭にあったツノ、牙、毒の入った瓶の山、肉の山、鱗の山、紫色のこれまで見た中で一番大きい魔石、になった。
「毒の魔石なんて珍しいね」
アエリスが、紫色の魔石を見ながら言っていて、
げんきたちは、何に使えるんだ、毒の魔石なんて、と思っていた。
クイーンスネークの素材も全て、極上品質、だとアエリスが教えてくれた。
げんきは、クイーンスネークの素材を紙に書いて、マジックバッグに入れると、今日の予定を話し合うことになった。
「この子達が狩りについて行きたい、って言ってるの〜」
楓のこの発言で、今日は、中層の一番広くて、一番弱いエリアに、一日狩りに行くことになった。
予定が決まると、
楓と椿は、お弁当を作りにテントに戻って、
げんきは、解体した素材の中で、外に出しててもいい物を、アエリスと話し合いながら、素材を置いてある部屋に、積んでいった。
用意ができると、げんきたちは、アエリスの案内で、一番弱いエリアの入り口に歩いて行った。
一番弱いエリアの入り口は、二本の大きな川の間にあった。
この川の内側が、一番弱いエリアになっているらしい。
「行ってくるよ」
「弱いからって、油断したらダメだよ」
入り口に着いて、ピーチたちが、ウズウズしていたので、着いてすぐに、
げんきたちは、アエリスに声をかけて、川の間を進んでいった。
「普通に森だね〜」
「でも、いっぱい魔物のいる音が聞こえるから、魔物はいるね」
「確かに、周りに灰色の点は、いっぱいあるな」
川の間を歩いて行くと、
開けた場所の先には、極々普通の森が広がっていた。
げんきは、マップで、魔物の反応を確認して、
椿は、索敵と五感強化で、魔物の反応を確認していた。
ファレスノ・ゴブリンソーサラー レベル41
ファレスノ・ゴブリンモンク レベル38
ファレスノ・ゴブリンアーチャー レベル35
ファレスノ・ゴブリンナイト レベル44
げんきたちが、このエリアで最初に遭遇したのは、ゴブリンだった。
「見るからにゴブリンです!って感じだね〜」
「こっちを見て、ニヤニヤしてる。豚ヤロウと同じ顔して、殺したい」
ゴブリンは、可愛い感じではなく、醜悪な顔をしていて、楓と椿を見て、ニヤニヤしていた。
げんきが、ゴブリンの情報を伝える前に、ゴブリンアーチャーから、矢が飛んできて、椿とピーチたちが、ゴブリンに突っ込んで行って、殲滅していた。
「ゴブリンは殲滅します」
なんか椿のスイッチが入ってしまい、椿が、索敵でゴブリンを見つけると、ピーチたちと一緒に、倒しまくっていた。
げんきと楓は、椿とピーチたちの後を付いて行って、
椿たちが、戦闘中に、近づいてくる敵を、楓が倒していき、
げんきは、みんなの倒した魔物をマジックバッグに回収していった。
これまで、げんきたちが、一番弱いエリアで、遭遇した魔物は、
ファレスノ・バタフライ レベル40前後
見た目は30センチくらいの蝶
ファレスノ・グラスホッパー レベル40前後
見た目は30センチくらいのバッタ
ファレスノ・ピッグ レベル40前後
見た目は50センチくらいの豚
ファレスノ・ラクーン レベル40前後
見た目は、30センチくらいのアライグマ
に、最初に遭遇した各種ゴブリンだった。
どの魔物との戦闘でも、椿が突っ込んで、弱った魔物に、ピーチ、ルビー、ホワイトが体当たりを食らわせて、ハクが、爪や牙でトドメを刺していった。
合計で、100体程の魔物を倒したところで、ピーチたちが、お腹が空いた、と言ったので、川の上流に向かって、歩いていき、湖に戻っていった。
道中で、灰色の点が近くにあったので、げんきだけ見に行った。
ファレスノ・オーストリッチ レベル74 72
2メートル以上あるダチョウだった。
げんきは、せっかくなので、風の刃で狩ってから、楓たちに合流した。
(おっきな鳥さんだー)
(あるじーすごいねー)
げんきは、合流して、湖に戻ってきて、
楓たちが、お昼ごはんの準備をしている間に、
昨日と同じように、離れた場所に、狩った魔物たちを積み上げていた。
ピーチとハクが、げんきについてきていて、ダチョウを見て、おっきな鳥、と驚いていた。
げんきが、全部出して、楓たちのところに戻っている時に、さっきの場所にいる鳥だよ、と2匹に教えてあげると、2匹は、倒すー、と飛び跳ねながら言っていた。
げんきたちは、お昼ごはんを食べ終わると、少し休憩してから、再度、狩りに向かった。
(おっきな鳥さん倒したー)
(あるじー倒したー)
げんきたちは、さっき進んで行った場所の、さらに奥に進んで行き、魔物を倒していった。
やっと、げんきが、マップでオーストリッチを見つけて、ピーチたちに倒させてあげることに成功した。
「良くやった」
げんきが、オーストリッチを倒して、褒めて欲しそうにしていたピーチとハクを撫でながら、褒めてあげた。
褒められた2匹は、嬉しいそうに、げんきの周りを走っていた。
その後も、魔物を倒しながら奥に進んで行くと、山の麓のような場所に行き当たり、いくつもの穴があいていた。
「おっ、囲まれてる」
「何に?」
「灰色の点」
「みんな、警戒してね〜」
ファレスノ・レッドドッグ レベル50前後
1メートルないくらいの赤い犬
ファレスノ・ドッグ レベル30前後
50センチくらいのぱっと見、柴犬
ファレスノ・オルトロス レベル121
体長2メートル以上は軽くある、2首の黒い犬
「あいつが、このエリアで、一番強いやつか」
げんきは、姿を見せ始めた魔物を上位竜眼で鑑定していき、穴の中から出てきた、夢で見た2首の黒い犬を最後に鑑定した。
「ワォーン」
オルトロスが、1鳴きすると、周りにいた犬たちが、一斉にげんきたちに襲いかかった。
楓と椿が、オルトロスに向かっていき、オルトロスを抑えた。
げんきは、襲いかかってきた犬を一度中央で、強い風を魔法でつくって、空間をつくると、ピーチたちが、攻撃しやすいように、援護していった。
げんきたちからしたら、オルトロスやドッグたちは、相手にならないけど、ピーチたちには、丁度いい相手なので、ピーチたちに倒させることにした。
ピーチたちは、げんきの援護を受けて、順調にドッグを倒していった。
レッドドッグとの戦闘になると、ピーチたちも余裕がだいぶ無くなってきて、攻撃を食らうようになったが、その都度、げんきが回復していった。
オルトロスは、楓と椿に攻撃を仕掛けたが、全て避けられて、軽い反撃を食らうことを繰り返していたが、焦れて、怒って、ピーチだけに向かって、レッドドッグとドッグを突撃させて、自身も土魔法のグレイブニードルを発動させた。
楓と椿に攻撃されて、半分程度しか、発動出来なかったが、集中して攻撃に晒されていたピーチと助けに向かっていたハクが、レッドドッグとの戦闘中で、グレイブニードルの直撃を受けてしまった。
げんきは、急いで、ピーチとハクにヒールを3回ずつかけた。
ピーチとハクは、直撃を受けて、お腹に深い切り傷があって、血が出ていたが、げんきのヒールで、すぐに傷は治って、血もあまり流れなかった。
げんきが、オルトロスを睨むと、2つの顔をニヤニヤされて、してやったり、といっているようだった。
「犬っころ風情が」
オルトロスを見て、ピーチとハクを傷つけられて、怒っていたげんきは、キレてしまい、一瞬の間に、オルトロスの目の前に移動していた。
「楽に死ねると思うなよ」
その場にいた全てのものが、固まってしまう程の圧力を無意識のうちに放っているげんきは、アイシクルを10本出して、前脚、後脚に放った。
圧力で動けないオルトロスは、まともに攻撃を受けてしまい、足を地面に縫い付けられてしまった。
オルトロスの悲鳴が聞こえる中、
げんきは、さらにアイシクルで胴体も地面に縫い付けた。
「げんくん、やりすぎ」
「あれ、まだいきてるの?」
げんきが、オルトロスを地面に縫い付けると、圧力がなくなって、楓と椿が、惨状を指差しながら、げんきに詰め寄った。
「……かろうじて生きてます」
げんきは、2人に詰め寄られて、ボソッとつぶやいた。
「そうなんだ〜」
「みんな、やっちゃって」
椿の指示を受けたピーチたちは、一斉に、地面に縫い付けられて、何も出来ないオルトロスを、攻撃し始めた。
その後、椿が、ピーチたちと周りに残っていたドッグたちを全滅させるまで、
げんきは、楓に、口撃を浴びせられることになった。
楓の口撃で、精神的なダメージを受けたげんきは、ピーチとハクに慰められて、癒していった。
げんきが、回復すると、ドッグたちを回収して、オルトロスの出てきた穴を、探索することになった。
穴には、人の使っていたと思われる鞄や武器、防具、宝石、などが、一番奥の部屋に置いてあった。
げんきたちは、使えそうなものや売れそうなものをマジックバッグに回収した。
他の穴にも、入っていったが、多少、回収できただけだった。
その後は、げんきの案内で、まだマップの埋まっていないところを回りながら、魔物を狩っていった。
戦闘に関しては、げんきは、手を出さないように言われているので、げんきは、案内だけをした。
ピーチたちのお腹空いたー、が合図のように、
空が暗くなってきていたので、
げんきたちは、遭遇する魔物を倒しながら、湖に戻っていった。
「おかえり」
「ギャ」
げんきたちは、いつも通りに、アエリスに出迎えられて、少し話してから、
げんきは、離れた場所に置いた魔物の死体を回収して、
げんきたちは、テントに戻っていった。
その後は、流れるように、ごはんを食べて、お風呂に入って、寝た。




