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39.ゴリラ


げんきは、ゆっくり身体を起こした。

昨日は、魔法の話しが盛り上がって、遅くまで話して、眠ったはずなのに、眠った感覚があまりない状態で、目が覚めてしまった。

二度寝しようか、と考えたが、とりあえずタバコでも吸うか、と思ってしまい、テントの外に出た。


テントの外は、どしゃ降りの雨で、その雨の中アエリスが、湖の上で踊っていた。


辺りが薄暗く、雨の音だけが響いていて、湖の上にいるアエリスだけに光りが当たり、雨の音をBGMに踊っているアエリスだけが、視界に入ってきていた。


どこか幻想的な雰囲気にのみこまれてしまい、

げんきは、テントの入り口で、その光景を見入っていた。


「げんき、おはよう」

「……アエリス、おはよう」


アエリスは、踊り終わると、テントの入り口で固まっているげんきのもとまで、ゆっくりと歩いて来て、声をかけた。

げんきは、踊り終わって、げんきの前に来るまで、ただ1人、光りを浴びていたアエリスから目が離せなかったが、げんきの前に来て、声をかけてきた時には、光りも収まって、いつも通りのアエリスに戻っていた。


「さっきのは何?」

「ただの舞よ」

「いや、ただの舞なわけ無いでしょ?」

「どうしてそう思うの?」

「見ていた光景は、どこか?何か?異常だった、と感じただけだよ……」

「やっぱり面白いね。そうだね……眷属の舞、水神の舞って言ったら、げんきはわかるよね。この話はこれ以上しないよ」

「あぁ、わかったよ」

「そっか、げんきは面白いね」


げんきは、2つの意味で、わかった、と言って、アエリスは、げんきの返事を聞いて、げんきに微笑みかけた。


げんきは、タバコを吸いに来たのに、アエリスのこともあったが、どしゃ降りなので、テントの入り口で吸うことにして、タバコに火をつけた。


「まだ2人は寝てるの?」

「寝てると思うよ」

「どしゃ降りだけど、今日どうする?」

「狩りはいけそう?」

「正直、中途半端な感じだね。魔物は巣でじっとしてると思うけど、移動は大変だし、戦闘もしにくい、って感じだね」

「そっか」


入り口で話していると、楓と椿が起きて、部屋から出て来た。


『おはよう〜』

「2人とも、おはよう」

「楓ちゃん、椿ちゃん、おはよう」

『えー』


げんきとアエリスに挨拶した2人は、入り口から見えた、どしゃ降りの雨を見て、2人で同じ反応をした。

げんきとアエリスは、2人が同じ反応をしたのを見て、やっぱり双子だな、と微笑ましく思っていた。


「まぁ、見ての通りのどしゃ降りだ」

「まずは、朝ごはん食べようよ」


アエリスが、早くごはん、ってオーラをだしているのを見た3人は、少しだけ我慢していたが、ごはん、ごはん、と身体を揺らしているアエリスを見て、堪らず笑いだしてしまった。


楓と椿が、朝ごはんを作りに、キッチンに向かっていったあと、テントの入り口から、びしょ濡れのシロが入ってきた。


げんきがシロに身体を拭くためのタオルのような布を渡すと、ギャ、っと言ってから、シロは身体を拭いてから、みんなに挨拶をしてまわっていた。


シロは、挨拶を済ませると、アエリスの横に行き、何か会話していたが、げんきはシロの言葉を理解出来ないので、内容が分からず、気になっていた。


朝ごはんが出来たので、アエリスとシロの会話をやめて、みんなと一緒に、朝ごはんを食べ始めた。


「さっきシロと何話してたの?」


げんきは、朝ごはんを食べ終わって、一服しながら、気になっていた2人の会話の内容を、アエリスに聞いてみた。


「うーん、森がどんな感じなのか、話してただけだよ」

「どんな感じなの?」

「雨で、魔物は巣でじっとしてるみたい。後は下層の魔物が中層に流れてきてるみたいよ」

「下層の魔物?」

「そう、シロが倒してきたのは、ファレスノ・コング、って魔物で、強さはオークジェネラルくらいかな」

「なんか危なそうだな」

「下層で縄張り争いに負けて、逃げてきたんじゃないかな」

「中層は大丈夫なの?」

「どっかで争いはあると思うけど、この雨で魔物たちは動いてないから、分からないかな」

「狩りはやめた方がいい?」

「げんきたちが、この雨でも動けたら、固まってる魔物を狩るチャンスなんだけど、魔物たちの動きが分からないから、どっちがいいとは言い切れないかな」

「うーん……」


ちょうど、片付けをしていた楓と椿が、片付け終わって、げんきとアエリスの話しに混ざってきたので、楓と椿に状況を説明して、全員で話し合うことになった。


話し合った結果、げんきたち3人とシロで、オークの群れを目指して、森に入ってみて、狩りが出来そうなら、狩りをすることに決まった。



「なんかあったら、すぐに戻って来なさいよ」

『了解』

「わかってるよ」

「シロもよろしくね」

「ギャ」


げんきたちは、どしゃ降りの中、いつもと同じ場所から森に入っていった。


「多少動きにくいくらいか」

『そうだね〜』


げんきたちは、雨で緩くなった地面を歩いて、動きの確認をしていた。


「俺たちが森に入るまでは、オーク動いてなかったのに、急に動き出したな」


げんきのマップには、げんきたちが森に入るまで、木の家があった場所に固まっていたオークの点が、一斉に動き出したのがわかっていた。


「こっちに来てるの?」

「逆方向に進んでる」

「逃げてる感じですか〜?」

「方向はオークのいた洞窟に向かってる感じかな」

「下層の魔物はどうなの?」

「うわー、シロ、下層の魔物はあれ?」


げんきのマップに、何か分からない灰色の点が30個近く、オークの固まっていた場所の近くに、いきなり出てきた。

出てきた方を見ると、距離はあるのに、一体のかなりデカイ魔物の姿が見えたので、指差しながらシロに尋ねた。


「ギャ」

「やっぱり」

「あれがそうなの?」

「おっきいですね〜」

「もう少し近づいてみよう。灰色の点は31個あるから警戒よろしく」

『了解』

「ギャ」


シロが頷いたのを確認したげんきは、竜眼で見る為に近づいていった。


げんきたちが相手の姿が見える位置まで近づくと、そこにいたのは、一体の4本腕の3メートル以上はあるデカイゴリラ、12体の2メートルくらいの赤いゴリラ、18体の赤いゴリラより一回りは小さい茶色のゴリラだった。


『ゴリラ』


コング、と言われて、実物を見ていなかったげんきたち3人は、コングってゴリラなんだ、と同じ事を考えていて、楓と椿はポロっとつぶやいてしまった。


デカイゴリラが、

ファレスノ・ビッグコング


赤いゴリラが、

ファレスノ・レッドコング レベル100前後


茶色のゴリラが、

ファレスノ・コング レベル80前後


げんきは、みんなに竜眼で見た情報を伝えた。


「さて、撤退しようか」

「賛成〜」

「えー戦わないの?」

「雨の中はやめとこうよ」

「修行の成果を試したかったのに」

「また今度な」


椿だけは、修行の成果を見せる為に、戦いたかったみたいだけど、げんきと楓に反対されて、渋々納得していた。


げんきは、帰る道中に、椿の修行の成果を見せてもらう為に、マップで魔物を探していたが、ゴリラの魔物が動き出したことで、他の魔物がげんきたちのいる方向と逆に動いてしまい、帰る道中に魔物と遭遇することはなかった。


森を抜けて、湖に着くと、アエリスがいたので、アエリスに森の状況を話しながら、テントに戻って行った。


「今日一日は自由にしよう」

「わかった」

「わかりました〜」


テントに戻って来たげんきたちは、外は雨だし、と言うことで、エンフィスに来てから休みがなかったので、今日は自由にしていい、と決まり、

明日からは、森が落ち着くまで、スキルの習得やレベル上げをすることになった。


自由、と決まって、テントの中か近くで、何かすることを探すことになった。


げんきは休みと決まったので、部屋で本を読むことにして、部屋に入っていった。


楓と椿は、習得していない属性魔法を選んでから、習得することにした。


アエリスは、楓と椿の属性魔法スキルの習得の手伝いをすることになった。



げんきは、お昼ごはんの時間まで、部屋から出ることなく、本を読んで、気になるところは、紙に書いていった。


お昼ごはんを食べ終わった頃には、雨が小降りになっていた。


げんきは、昨日聞いた三種類の魔法を各属性習得出来るものからしていこうと、修行していた場所に向かった。


楓と椿は、テントの近くで、アエリスと属性魔法の習得をすることにした。



げんきは、暗くなってきたので、テントに戻る為に歩いていると、前から赤い玉が2個迫ってきた。


「えっ」


げんきが慌てて避けると、次は石つぶてが襲ってきた。


「何⁉︎」


マップを発動させても、敵の反応もなく、数回の攻撃を避けていると、攻撃は止んだ。


「げんくんごめん」

「げんくんごめんなさい」


テントに着いて、攻撃をされたことを話すと、楓と椿が、謝ってきた。

習得した魔法スキルの攻撃が、どこまで届くのか、実験していたらしい。


「テントから飛ばしてきてたの⁉︎」

「そうだよ〜」

「予想以上に飛んでいったみたい」


テントからの攻撃なら、自分の魔法よりも射程が長いので、げんきは驚いていた。


「マジで?」

「本当だよ」

「威力はそのままで、射程に魔力を注いで、放ってみてた〜」

「なるほど、威力しか考えてなかった」

「私たちも、アエリスに聞いたんだけどね」


げんきが、アエリスの方を見ると、中々のドヤ顔をしたアエリスがいた。


楓と椿が、晩ごはんを作りにテントに入っていった後、げんきは、アエリスに楓と椿の使っていた射程重視の魔法について、教えてもらった。


晩ごはんが食べ終わると、シロはどこかに行ってしまい、

楓と椿は、片付けが終わると、お風呂に入りに行ってしまった。


「アエリス、ちょっといい?」

「?」

「この本なんだけど……」

「その本がどうかしたの?」

「読もうと開いても、白紙なんだよね」


げんきは、マジックバッグで、魔法の種類、と表示されていた本を出して、アエリスに見せた。


アエリスは、げんきの出してきた本を手にとって、開いたり、閉じたりしていた。


「あー、なるほど」


アエリスは、何かわかったように言った後に、げんきに本を返した。


「何かわかった?」

「これは、本の見た目をした魔道具だよ」

「えっ、魔道具?」

「そうだよ。本を持って、本に魔力を流してみて」

「わかった」


げんきは、言われた通りに、本を持って、魔力を流してみてが、本は何も変化が起こらなかった。


「開いてみて」


首を傾げていたげんきに、アエリスが次の指示を出した。


「開いたけど、白紙のままだよ」

「それでいいのよ。最初のページを開いて、頭の中で、水魔法を考えながら、魔力を流して」

「了解……おー、ウォーターボール、ウォーターウォールって文字が出てきた」

「その本は、開いた人が使える魔法の種類を教えてくれる魔道具だよ。使い方はさっき教えた通りで、閉じる時は、本を閉じて、魔力を流したら、中は白紙に戻るようになってるみたいだよ」

「なるほど、ほいっとな、おー白紙になってる。でも覚えてない魔法が載ってる方が良かったな」

「まぁ、使える魔法の確認くらいしか、使い道ないかもね」


あまり使い道の無い魔道具だと、判明してしまい、ガクッとなっているげんきを、少しだけ笑いながら慰めたアイリスは、楓と椿がお風呂から戻って来たところで、テントから出て行った。


なんだか疲れてしまったげんきは、お風呂に入って、部屋に戻って、すぐに眠った。



次の日の朝、テントの外は、まだ真っ暗な中、げんきは起きた。

げんきはタバコを吸いに、外に出て、真っ暗な事に、少し戸惑ったが、眠くはなかった。


元の世界よりも、睡眠時間が短くなっているのは、気になったが、そういう身体なのだろう、と思いながら、タバコを吸っていた。


「ギャ」

「げんき、おはよう」

「2人とも、おはよう」


げんきがタバコを吸っていると、

アエリスとシロが、真っ暗な中、げんきのところまで歩いて来た。


「今からシロが、森の様子見に行くんだけど、げんきも一緒に行かない?」

「なんで?足手まといだと思うけど」

「森に入って、マップ使えば、楽でしょ」

「あーわかった。用意してくる」


理解したげんきは、テントに戻って、静かに装備を整えて、アエリスとシロのところに行き、真っ暗な中、2人の後についていった。



「シロ、ゴリラは昨日の場所から、ほとんど動いてないけど、数が少なくなってるから、多分家みたいな建物の中にいると思う」

「ギャ」

「ゴリラは、近づいて見なくてもいい?」

「ギャ」


げんきはシロの言葉はわからないので、シロは首を振って、返事をしていた。

ゴリラの魔物は、動いてないみたいなので、見なくていいとなった。


「ゴリラのいるところにいたオークの群れは、湖の近くにいるみたい。見に行ってみる?」

「ギャ」


シロが首を縦に振ったので、げんきは真っ暗な森の中を、マップを頼りに、オークの群れに近づいて行った。


オークの群れの近くに来たら、げんきは急に視界が良くなった。

《夜目》のスキルを習得して、真っ暗な中でも、昼間ほどではないけど、さっきまでと比べたら、遥かに周りが見えるようになった。


オーク・キング


視界が良くなったので、オークの群れを確認してみたら、黒い鎧を着たオークがいたので、竜眼を使ってみた。


「あれがキングか」

「ギャ」

「シロの方が強いよね」

「ギャ」


キングを見ながら、シロの方が、と聞いたら、もちろんとばかりに首を縦に振っていた。


「他は動いてないし、とりあえず戻る?」

「ギャ」


シロが首を縦に振ったので、げんきは、シロの後について湖に戻って行った。


湖に戻って、アエリスと合流して、テントに戻りながら、森の様子を報告した。


げんきたちが、テントに戻って来ると、周りが少しずつ明るくなっていた。


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