36.やらかした
「ごはんだよ〜おきろ〜」
げんきは、何度も繰り返される声で、起きた。
「……おはよう」
「おはよう〜、もうみんなごはんの前で待ってるから早くね〜」
楓は、げんきが起きたのを確認して、部屋から出て行ったので、げんきも寝起きの姿そのままで、後を追って、部屋から出て行った。
「おはよう」
「いいから座りなさい」
「ギャ」
げんきは、テントから出て、テーブルにいたみんなに挨拶したが、アイリスとシロは、ごはんの前で待っていたからか、げんきに対する扱いが雑であった。
楓と椿は、苦笑いしながら、げんきが椅子に座るのを待っていた。
いただきます、と一斉に言うと、まだ寝ぼけて、ボーっとしついるげんきを置いたまま、げんき以外は、朝ごはんを食べ始めた。
「げんくんは、今日の修行は魔法だよね?」
「うーん……そうだね。俺になんか手伝って欲しいの?」
「いやいや、私は1人で闘気の訓練するよ。お姉ちゃんが、1人でやる、って言ってたから、それとなく様子見て、話しかけたりしてほしくて。私は魔法イマイチだから……」
「わかってるよ。俺も気にかけてるし、アエリスが楓の訓練に付き合うらしいから、椿も楓のこと気にし過ぎるなよ」
朝ごはんを食べ終わると、
げんきは片付けをしていた椿に、楓の様子を見ていて、と言われて、楓の側にはアエリスがいるから、と伝えて、椿を安心させた。
げんきは、テントから少し離れたところまで、移動してから修行を開始した。
げんきは、MPの多さをいかして、常に魔法を発動している状態で、最終目標のスキルの習得に取り組んでいた。
「げんき、森をどうするつもりなの?」
「いや……それは……」
げんきは、お昼ごはんの時間だと、伝えに来てくれたアエリスに冷たい視線を浴びせられていた。
げんきは、アエリスが来るまで、魔法を2つ同時に発動させることに集中しすぎて、発動させた魔法は、全て近くにあった岩に向けて放っていたのだが、最初に見た時は、10メートルくらいはあった岩が無くなり、その背後にあった森の木々に当たっていて、半径20メートルくらいの森がなくなっていた。
げんきはアエリスに小言を言われながら、椿にお昼だと伝えに行ったが、椿を見つけた時には、直径5メートルくらいのクレーターが、森に何個もあった。
げんきとアエリスは、新たに1つクレーターが出来たところで、椿に声をかけた。
椿もげんきと同じように、集中し過ぎて、周りに気を配れてなかった為、げんきたちのテントに戻るまで、2人はアエリスに小言言われ、苦笑いしながら戻ることになった。
げんきたちがテントに戻ると、
楓とシロは、すでに昼ごはんをテーブルに並べているところで、戻ってきた3人を見て、げんきと椿が何かやったんだろう、と一目でわかった。
ごはんを食べる時の話題は、必然的にげんきと椿がやらかした事について、になってしまい、
げんきと椿は弄られながらの食事になった。
「周りが暗くなったら、テントに集合で」
『了解』
「げんきと椿ちゃんは、ほっておいたら、また同じことの繰り返しになるから、修行する場所までついていきます!」
「うっ…」
「げんくんはわかんないけど、私は大丈夫だよ」
「あんだけ森を穴ボコだらけにしておいて?」
「いや……それは……つい……」
「つい、であんな事に?これは決定事項なので!早く!」
『……はい』
アエリスが、突然ついていく、と言い、理由を聞いて、げんきは早々に撃沈し、椿はなんとか逃げようとしたが、逃がしてくれる訳もなく、撃沈して、2人は黙ってアエリスの後について行った。
楓は、3人の会話を聞きながら、私は関係ないです、というオーラを放ちながら、自分の修行の用意をしていた。
「さて、あれでいいか」
『ん?』
げんきが昼まで修行していた少し先にある5メートルくらいの岩を、アエリスが指をさして、一瞬何かを唱えていた。
「よし!これからげんきは、あの岩に向かって魔法を放つように!」
「……どういうこと?」
「今、あの岩に魔法をかけたんだよ。魔法がかかっている間は、あの岩は割れたり、砕けたりしなくなってるんだよ」
「はぁー……なるほど……」
アエリスは、困惑しているげんきを岩まで連れて行き、魔法をかけたのを確認させた。
理解出来ていなかったげんきだが、魔法をかけられた岩を触ってみると、三重に薄い水の膜が張られており、岩に触れようとしても、触れなかった。
「わかった?これからはこの岩を狙ってね」
アエリスはそういうと、椿を連れて、椿の修行する場所まで行き、げんきのところと同じように、近くの岩に魔法をかけて、椿にも改めて説明して、楓の修行しているテントの近くに戻って行った。
その後、げんきと椿は、周りが暗くなるまで、修行をしていたが、どちらも魔法をかけられた岩は無傷のまま、ずっと的になっていた。
げんきは、周りが暗くなったので、椿が修行している場所まで行って、合流してから、テントまで戻っていた。
「魔法のかかった岩、いくら殴ったり、斬ったりしても、ビクともしなかった」
「俺もいろんな種類の魔法ぶつけたけど、全く効果なかった」
「魔法ってすごいね」
「魔法もすごいけど、この場合はアエリスがすごいんじゃない?」
「確かに!」
テントに戻っている間に、げんきと椿は、改めて、アエリスの凄さと魔法の凄さを感じていた。
みんなで晩ごはんを食べた後に、
げんきはアエリスとスキルの話しを少しだけして、お風呂に入ってから眠った。




