1.エンフィス
「うーん………」
顔をペシペシ叩かれて、まぶたをゆっくり開けると目の前に女の人の顔があった。
「やっと起きましたか」
「えっ………どちら様でしょうか?」
「色々聞きたい事はあるでしょうが、貴方で最後になりますので、とりあえずおちつきましたら、私の後についてきて下さい。こちらの事情で申し訳ないのですが、お願いします」
「あっ、はい。わかりました」
げんきは身体を起こし、自分的に丁寧に聞いてみたが、なんの情報もなく事情も分からないので、とりあえず頷きながら返事した。
げんきは身体に違和感がないことを確認して、周囲を確認しても起こしてくれた女の人以外は誰もおらず、部屋には扉が一つあるだけで家具など他には何もなかった。少し落ち着いてくると、最後と言う言葉も気になり、楓と椿の事も気になり、女の人の背中に水色の翼があることについても気になりはじめて、せっかく少し落ち着いてきていたところに頭の中はクエッションマークでいっぱいになっていた。
「あははっ、えらく感情豊かだね」
「………はい?」
「いやー私に話しかけずに周りを見ながらも、比較的早く落ち着いてきたと思っていたら、困り顔になり、焦り顔になり、最後に驚いて、この短い間でいろんな表情がみれて、ついね」
「はぁ、気になる事が多過ぎまして、でも聞いていいのか考えていたので」
「まぁ、今聞かれても何とも言えないってのが答えにはなるかな」
「やっぱりですか」
「ある程度落ち着いてきたみたいだし、あまり他を待たせるわけにもいかないから私についてきて」
げんきは頷き、女の人の後について扉に向かって歩き出した。
歩きながらも色々な考えが頭の中を駆け巡っていたが、不思議と先程よりも落ち着いていた。
扉を抜けて、会話もないまま廊下を少し歩いて行くと、広さ的には学校の体育館くらいひらけた場所に着いた。
女の人は入り口の横にいた女の人に何やら話しをしていると
『げーんーくーん』
の声が前の方から聞こえてきて、2つの影が俺に向かって突撃してきた。
「うおっ、楓も椿も身体は大丈夫か?なんか変わったことはないか?」
何とか突撃の勢いに耐え、2人を受け止め聞いた。
『大丈夫〜』
「それは良かった。今の状況に関して、俺がわかってる事がほとんどないんだけど、2人はなんか知ってたりする?特に楓」
「ぶー確かにお姉ちゃんの方が頭脳労働向いてるけど、今回に関してはどっちも同じだよ」
「ブハッ」
げんきが楓の方に頼ったことに、少し拗ねた椿がげんきに腹パンをお見舞いした。
そんなやりとりを笑いながら楓は見ていた。
げんきはいつも通りの2人とのやりとりを交わしながら、2人の無事な様子に安心していた。
2人が落ち着いてきたところで、げんきは話を戻した。
「それで、何がどうなってるか、2人が知ってることはある?」
「お姉ちゃんの方が説明するのが私より上手だからよろしく」
「結局説明するのは私ですか……」
げんきもやっぱりと思うがここでツッコミをいれると、またさっきの繰り返しになるとわかっているので言葉には出さなかった。
「ということで楓説明よろしく」
「はぁ〜、私達も詳しくわかってないのですが、わかっていることは大きく3つです。今、この場所にいる人たちは同じ飛行機に乗っていたと、そして、私達の周りにいる人たちは、背中に翼があったり、頭に角があったりなど地球ではコスプレ以外では見たことがないということ、その周りにいる人たちに話しかけても「答えられない」としか返ってこない事ですね〜」
「なるほど……。飛行機か……それで最後ってのにつながるわけね」
げんきは楓の話しを聞いて、一つ一つのことを考えながらつぶやいた。後半になるにつれて小さくなっていたので楓や椿にも聞こえていなかった。
げんきは考えをまとめながら2人に起こされてから気になってたことを聞いてみることにした。
「あと、俺の古傷や腰痛が治ってるみたいなんだけど、なんか知ってたりする?」
そう、げんきは起きてから身体に違和感がないことに対して逆に違和感を感じていたのだ。
「うーん、さっきまで近くにいたおじいちゃんとおばあちゃんが腰痛がどうとか話してたのを聞いた気はするけど、聞いてきた方がいいの〜?」
「いやー気にはなってるけど、聞いてくるほどの事ではな………いんだけどって、言い終わる前に椿が聞きに行っちゃったね」
「さすが椿ちゃん」
(フットワーク軽いね〜げんくんのことに関しては)
げんきと楓は話しの途中で走っていった椿をみて、改めていつも通りだと思うのであった。
椿が2人のところに戻ってきて、2人して椿をいじっていると
「今からこの入り口閉めちゃうから少し離れて」
と俺をこの場所まで案内してくれた女の人に言われ、3人は入り口から離れた。離れたことを確認して女の人は入り口にいた女の人に声をかけ、扉を閉めた。
入り口が閉まったことで周りは少しざわついたが、すぐに反対側の階段の上にある扉が開き、1人の男と2人の女が入ってきた。入ってきた3人は飛行機に乗っていたみんなの注目が集まったことを確認して、中央にいた女の人が一歩前に出てきて言った。
「えーと、私がこの世界エンフィスの創造神です」