136.ボーナス部屋とお久しぶり
げんきたちが、ボス部屋から出ると、
ピーチとショコラが、最初に、変化に気づいた。
マロンとクルルが、闘技場のような115階層にいるのだが、扉の前で待っているはずのセラたちが、115階層に居なかったのだ。
「ん?」
げんきは、マップを発動させて、115階層を見たが、セラたちは、居なくて、前までなかった空白の空間があるのに気づいた。
「げんき様?」
「ちょっと黙って」
マリアも、セラたちが居ない事に気づいて、げんきに声をかけたが、
真剣に、マップを見ているげんきは、冷たく返した。
げんきが、マップを2回確認して、セラたちが居ないと結論づけたら、マロンとクルルが、げんきたちの元に飛んで来た。
マロンとクルルは、楓と椿に、頭の中で話しかけて、
げんきの見つけたマップの空白の空間に、セラたちが居ると教えてくれた。
げんきが、楓から説明されて、ひとまず安心して、空白の空間の方に歩いて向かっていたら、空白の空間の前から、セラたちが出て来た。
「終わっちゃったね」
「壊れないのなら、まだまだいけたのに」
げんきのマップから、さっきまで有った空白の空間が無くなったと同時にくらいに、セラたち全員が、空間の空間の前に戻って来た。
「あっ、げんき様⁉︎おかえりなさいませ」
「おかえりなさいませ」×メイド
「あぁ、ただいま。何がどうなってるんだ?」
げんきたちに気づいたセラの挨拶で、他のメイドたちも挨拶して来て、
げんきは、怪我してる様子も無いし、元気だったので、何があったのか、全く分からなかった。
「げんき様たちが、ボス部屋に入っていってから、少ししたら、マロンちゃんが、今までなかった扉に気づいて、私が扉を開けたら、ダンジョンの小部屋みたいなところに繋がっていたんです」
「扉?小部屋?」
「鉄の扉みたいな見た目の扉で、小部屋は、洞窟の中の部屋みたいな感じです。私が、その部屋に入ると、多分、ボス部屋に入った時に聞いた声と同じ声だったので、鉱石の神様の声だと思う声が聞こえて来て、ボス攻略後、10分間のボーナス部屋で、部屋の壁が全て採掘ポイントになっている、と言っていました」
「ボーナス部屋、10分間か……」
「はい!それで、ボーナス部屋にみんなで入って、採掘しようと思い、みんな呼んだのですが、最初に入った人の1パーティー限定しか入れないので、マロンちゃんとクルルちゃんは、入れなくて、外で待ってもらっていて、私たちは、ボーナス部屋の中にあった、ツルハシ8本で、採掘して、その8本が壊れたのと、残り時間がわかる砂時計の時間を見て、時間もなかったので、採掘した石をマジックバッグに入れて、戻って来ました」
げんきは、ボーナス部屋に興味が出てきて、
セラたちが、採掘して来た石を見せてもらい、数は少ないが、妖精石や属性石もあり、次のボーナス部屋には、一度確認するという名目で入ってみることにした。
そして、ボーナス部屋の話が終わって、ボス部屋に入り、楓と椿が、出てきたギガントアダマンタイトゴーレムを瞬殺して、宝箱の中身を取り出して、げんきたちは、急いで、ボス部屋から出て、マップに新たに出現した空白の空間の前に向かった。
前回の空間の位置と変わっていたが、マップで見たら、直ぐにわかったので、げんきは、自分のメインパーティーを連れて、セラの言っていた鉄の扉を開けて、中に入った。
中は、セラの言っていた通りの小部屋で、部屋に入った瞬間、鉱石の神の声で、
「ボス攻略おめでとう!ここは、ボーナス空間!部屋の中の壁全てが、採掘ポイントとなっている。時間は、ボス攻略から10分間。中央にある砂時計の砂が無くなるまで。採掘道具は好きに使い給え」
と言われて、部屋の中央には、砂時計とツルハシが8本置いてあった。
げんきたちは、一斉に壁に分かれて向かい、不壊のツルハシをある分5本で、とりあえず壁をガンガン叩き、採掘しまくり、残りのメンバーは、置いてあるツルハシで、壁を叩いて、ツルハシが壊れたら、採掘した石の回収に回った。
砂時計の砂が少なくなってきた頃、
げんきは、採掘をやめて、セラが文字が壁に書いてあったけど、読めなかった、と言っていた、壁に書いてある文字を読んだ。
げんきには、言語理解があるので、文字は、スラスラと読めた。
古代語に属する文字で、
入って正面の壁には、一番希少な石が採掘出来るが、採掘道具の耐久値の消耗が一番激しい、
入って右の壁には、希少な石も採掘出来るし、採掘道具の耐久値の消耗も平均的、
入って左の壁には、稀に希少な石も採掘出来て、採掘道具の耐久値の消耗は緩やか、
と、書かれていた。
「マジか……」
げんきは、先に読んでおけば良かった、と後悔したが、げんき、楓、椿の3人で、正面の壁をガンガン叩いていたので、問題なかった、と思うことにした。
制限時間ギリギリにボーナス部屋からげんきは、
セラたちに、壁の文字について教えて、いつ手に入れたか忘れていたメガネのような文字が読めるようになる魔道具と、不壊のツルハシなどの採掘道具を渡した。
「俺たちが、ボス部屋の周回してる間、セラたちは、ボーナス部屋が出たら、中に入って採掘を頼む」
「かしこまりました!」
げんきたちが、ボス部屋の周回をしている間、やる事が無くて、悩んでいたセラたちは、げんきの提案を快く受けてくれた。
ボーナス部屋の確認も終わったので、
げんきは、ボス部屋の周回に戻った。
「お久しぶり〜?」
「おひさー?」
げんきの計12回目のボス挑戦で、115階層のレアボスを出す事が出来た。
ただ、レアボスの姿を見たら、げんきたち3人の見覚えのある姿だった。
ロックドラゴン レベル582 R
ー10メートル以上ある様々な石で全身を覆っているドラゴン
ファレスノではないが、ファレスノ大森林にある山の亜神ダンジョンの入り口の前にいたロックドラゴンと同じだった。
「間違いない。ロックドラゴンだな」
『前より強そうー』
「なんか、宝石か、鉱石か、そのおかげで、全身光ってるだけだな。レベルは、前より70くらい高い582だけど、ステータスは、少し高い程度だな」
『そっかー』
げんきたち3人は、少し懐かしみながら話しをしていたら、
その間に、ショコラが飛び出して行って、ショコラに釣られて、ピーチ、ハク、クロも飛び出して、ロックドラゴンに攻撃を開始していた。
マリアたちは、正真正銘のドラゴン、というので、身動きできなくなっていた。
ショコラがいるので、ドラゴン自体は、普通の人より、身近に感じているが、敵として、初めて相対して、ロックドラゴンの竜圧で、身動きできなくなっていたのだ。
「どうするの〜?」
「せっかく、ピーチたちが頑張ってるから、危なくなるまで見学かな」
『了解ー』
一緒に飛び出して行かなかったルビーとホワイトも、ピーチたちの攻撃に加わって、
ロックドラゴンに一斉に突撃していった。
レアボスのロックドラゴンは、全身を鉱石や宝石で覆っていて、物理、魔法の両方の耐性が上がっていて、完全耐性ではないが、限りなく近い状態だった。
ピーチたちは、大森林の時の連携を使い、ロックドラゴンに攻撃していったが、
魔法の効果が薄く、体当たりでの物理攻撃も攻撃が薄くて、体当たりしたピーチ、ルビー、ホワイトの方がダメージを受けることになっていた。
戦闘開始から、10分経ち、
ピーチたちは、ロックドラゴンに大してダメージを与えられないので、自分たちの攻撃を一つずつ浴びせて、何が効くのかを確かめることにした。
やはり、一番効果があったのは、ショコラのブレスだった。
そのブレスを受けた翼は、溶けてしまい、
ロックドラゴンは、飛べなくなってしまったが、
直ぐに、石の翼を作ってカバーした。
それを見たピーチたちは、
新しく出来た翼は、さっきまで有った鉱石や宝石で覆っていた翼でないに気づき、翼に攻撃を仕掛けると、翼は、簡単に砕けてしまった。
ピーチたちは、弱点見つけた、とショコラのブレスの前にロックドラゴンを誘導して、ブレスを浴びせて、ロックドラゴンを守っている鉱石や宝石の鎧を溶かしていった。
ロックドラゴンも、ただやられているだけじゃなく、全方位に金属の塊を飛ばしたり、土のブレスを吐いたりして、ピーチたちにダメージを与えていった。
げんきは、クロの回復が間に合っていない時に、少し助けてあげながら、ピーチたちを応援していた。
ピーチたちが、ロックドラゴンの鎧を完全に破壊すると、
ロックドラゴンは、光り、破壊した鎧を復活させた。
ピーチたちは、また、一から、鎧の破壊を開始して、
結果、ロックドラゴンの鎧は、三度復活して、竜力が尽きて、復活しなくなった。
それでも、ロックドラゴンは、MPで、全身を岩で覆ったが、今までの鉱石や宝石の鎧に比べたら、紙装甲なので、ピーチたちの攻撃でダメージを受けるようになっていった。
ロックドラゴンは、HPが半分以下になると、
地割れを起こし始め、地面や壁を食べて回復し始めた。
地割れにビックリしたのは、げんきたちだった。
いきなり、地面が割れ始め、げんきが結界を張っていたので、大丈夫だったが、結界がなかったら、危うく、地割れにのみこまれる事態だった。
ピーチたちは、ロックドラゴンが回復する量より多くダメージを与えて行き、
激闘、40分、ロックドラゴンを倒すことに成功した。
ロックドラゴンを倒したピーチたちは、
元に戻ったボス部屋を歩いて来たげんきたちに褒められて、撫でてもらい、嬉しそうにしていた。
「初回討伐ボーナス」
機械的な声がして、部屋の中央に、ちっちゃなロックドラゴンの乗っている箱が出現した。
鉱石箱 神級
ー1日に最大100個の鉱石を生み出すことができる。
生み出される鉱石の種類は、完全ランダムで、希少鉱石ほど出現率が低い。
ショコラが、パタパタ飛んで行き、鉱石箱を取ってきて、げんきに渡した。
げんきが、ありがとう、とショコラを撫でたら、ピーチがしまった、と悔しそうにしていた。
そんなピーチをげんきは、苦笑いしながら撫でてあげて、出現した宝箱に向かった。
出現した宝箱は、大きなオリハルコン製の宝箱5つ。
1つ目は、白金貨や金貨ぎ入った袋が、箱いっぱいに詰まっていた。
2つ目は、全てロックドラゴンの素材が使われている武器や防具。
3つ目は、箱いっぱいの宝石や装飾品、ロックドラゴンの素材。
4つ目は、神級の魔道具数点に、各種魔石。
5つ目は、消費系のマジックアイテム。
今までで一番価値のある宝箱で、
げんきは、4つ目に入っていた、各種魔石が一番嬉しかった。
各種魔石の中には、マジックバッグに必要な希少な空間魔石や転移系魔道具に必要な転移魔石など、今まで持っていなかったので、作れなかった魔道具を作れるようになる魔石があったのだ。
5つ目の宝箱には、ユニークスキルブックやスキルブックが合計20冊入っていたり、ミカやシャルを治療した神薬ソマトフがダース単位で入っていたりして、全て売れば、人生遊んで暮らしても、余るくらいの価値があった。
げんきたちは、みんな宝箱の中身に、ウハウハになりながら、ボス部屋から出て行った。
そして、このボス攻略で、次の日には、ロックドラゴンを倒したピーチたち全員の称号と職業が、勇者の従者から、勇者に変わっていた。
その事に気づいたげんきは、勇者と勇者の従者は、同時に習得出来なかった事に、少し残念に思ったが、
マジックバッグで、アエリスに送るつもりだった実験結果のレポートに、追加で、この情報を書き足して、アエリスに送った。
ボス部屋の前には、心配してる顔をしたセラたちがいて、話しを聞くと、
いつもなら、ボス部屋にげんきたちが入って行ったら、直ぐに、ボーナス部屋の扉が現れるのに、今回は、ボーナス部屋の扉が出現するのに、40分くらいかかっていたので、中で何かあったのでは?と心配していたそうだ。
げんきは、セラたちにレアボスだったことを伝えて、ショコラたちが、戦いたがり、それで、時間がかかったと教えた。
セラたちが、納得してくれて、もしかしたら、時間がかかる可能性がある、というのにも理解してくれた。
そして、げんきたちは、晩ごはんまで、ボス部屋の周回を重ねて、次の日は、朝から晩まで、ボス部屋の周回をして、晩ごはんの時間くらいで、げんきのボス攻略回数が99になった。
げんきは、次の日に裏ボスに挑む事にして、
裏ボス到達目前パーティーが、開かれて、みんなで、騒いで、明日に備えた。
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「ショコラちゃんのお酒美味しー」
「味が変わるのは、珍しいな」
「私は、1番最後の濃厚なのが堪らないわ」
げんきが、渡した黒時龍酒を飲んでいる属性の女神達は、一仕事終えた後の一杯を楽しんでいた。
「こら!」
そこに、竜の女神が、突入して来た。
属性の女神達は、まずい、とみんな一斉に、竜の女神から目を逸らした。
「まだ、隠し持ってたのね」
竜の女神の言葉に、属性の女神達は、下を向いてしまった。
というのも、げんきが、トン単位で持っている竜酒や黒時龍酒を、鉱石の神に樽に入れて、大量に渡した事で、
あの時、鉱石の神の部屋に来ていた関係者全員で、飲みきれない量が、神の住む神殿にいきなり現れたのだ。
通常、お酒関連は、酒の神の管轄なのだが、
竜酒や龍酒は、酒の神が生み出すことができないお酒なので、竜を司る竜の女神の管轄となっていて、
希少な竜酒や龍酒は、竜の女神が制限しているので、神であっても、容易に手に入れられないのだ。
その竜酒や龍酒が、突然、神の神殿に現れたので、
竜の女神は、鉱石の神の部屋に行き、酒盛りに参加して、余った分は、全て自分が管理するとして、回収していたのだ。
それなのに、属性の女神達は、黒時龍酒を飲んでいたのだ。
「見逃した欲しいなら、素直に吐きなさい!」
「……」
「そう、今後、貴女達は、竜酒や龍酒飲みたくないのね?」
黙っていた属性の女神達だったが、
竜の女神の言葉に敢え無く陥落して、入手経路から、隠し場所まで、全て話してしまった。
「あの色ボケ神!!」
竜の女神は、話しを聞いて、属性の女神達のいる部屋から出て行ってしまった。
属性の女神達は、危機が去って、安心して、一方に謝ってから、黒時龍酒を呑み直した。
回収したはずの黒時龍酒の出所は、げんきだ。
属性の女神達は、黒時龍酒が飲みたくなり、
げんきから貰った黒時龍酒を回収されてしまい、調薬の女神と一緒に飲めなかった魔の神に、
「加護を通して、げんきに言って、新しい黒時龍酒を貰って、調薬の女神と一緒に飲んだらいいのに」
と言い、竜の女神にバレたら困る、という魔の神に、げんきの余ってるマジックバッグの中に入れて貰えば、大丈夫、と悪知恵まで授けていた。
そして、ボスを周回してるげんきに、魔の神から話しかけてもらい、げんきは、何の疑問も抱かず、ショコラのお酒美味しいもんな、と呑気に、考えて、
一人で階段を下りて行き、黒時龍酒の樽を入れたマジックバッグを、小部屋においてきたのだ。
その後は、属性の女神達が集めた情報から、鉱石の神とお話しをして、共犯者にして、マジックバッグを回収させてきていたのだ。
魔の神は、属性の女神達に唆されたようなものだが、
調薬の女神と、一緒に、黒時龍酒を飲むことができて、良い夜を過ごすことができた。
次の日、突然、自分の部屋に、明らかに怒っている竜の女神が入って来て、
魔の神は、バレたと察して、部屋に隠していたマジックバッグを差し出したが、
竜の女神の怒りは収まらず、次の日の朝まで、途中で、連れて来られた鉱石の神と一緒に、竜の女神に叱られることになった。
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