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132.鉱石の神


(あるじーおかえりー)

(おかえりー)

「ただいま」


115階層に戻ったげんきは、

扉の近くで待っていたピーチとショコラに突撃され、どちらもキャッチした。


「げんき様、ご無事でなによりです」

「ありがとう」


ピーチたちより少し遅れて、セラたち、ハクたちもげんきの元に来た。


げんきは、攻略したことを話して、次のボスで、ピーチたちとセラたちも挑んで、楓たちの待ってる祝福の間に行く事を伝えて、準備をするように伝えた。


セラたちが、準備している間に、

げんきは、自分たちの拠点に、もしも他の探索者が来た時のために、入り口の扉に侵入防止の結界を張った。


げんきが、結界を張って、ボス部屋の扉の前に戻ると、

セラたちの準備が整っていて、ボス部屋にも入れるようになっていたので、早速、ボス部屋に挑むことにした。



「勇敢なる諸君!我は鉱石の神!我がダンジョンの最後のボスに挑む者達よ!諸君がダンジョンを攻略出来ることを祈っている!さぁ、最後の戦いの始まりだ!」


ボス部屋に入ると

さっきと全く同じ言葉が、聞こえてきた。


げんきは、同じ言葉か、定型文的なのかな、と思いながら、みんなの三歩前に出て、さっき使った爆雷竜の魔法陣を発動させ、みんなのいる場所に三重の結界を張り、ボスを待ち構えた。


ボス部屋に入る前に、

ピーチたちが、ボスと戦いたい、と言っていたが、

楓たちを待たせるわけにいかないので、

げんきが、全力で片付ける、と言って、ピーチたちには、周回する時に戦ってもいいと伝えて、宥めた。


げんきの全力を見れると、

ピーチ、ハク、クロ、ショコラのげんきの従魔たちは、目をキラキラさせながら、魔法が完成するのを待っていた。


げんきの爆雷竜が完成すると、

同時に、ボスのギガントアダマンタイトゴーレムが、出現して、

げんきは、爆雷竜を突撃させた。


前回と同じように、爆雷竜が、ギガントアダマンタイトゴーレムに接触した瞬間、

部屋を覆う白い光、凄まじい衝撃と音が響き、

光が収まると、部屋の中には、げんきたちしかいなかった。


「終わったよ」


げんきが、マップで、自分たちしかいないのを確認して、ピーチたちとセラたちの方を向いて、伝えた。


(あるじー、すごーい)

(お疲れ様です)

(攻略おめでとうございます)

(あのドラゴン強いねー)


げんきは、ピーチたちとセラたちの結界を解除するなり、ピーチたちに称賛され、ハクとクロは相変わらず硬い喋り方だと思った。


他のメンバーは、と言うと、

げんきの使う魔法を見た事があるルビーとホワイトは、相変わらず凄い、という感じで、げんきを見ていて、

他は、全員、目を開いたり、閉じたり、擦ったりしていたり、口を開けて、固まって、あわあわ言ったりしていた。



そんな中、男性の声が聞こえてきて、

みんな、ある程度、復活して、耳を傾けた。


「えー、攻略おめでとう。階段は、先に下りた仲間たちのいる場所とつながっているので、安心して下りて来て欲しい」

「了解です」

「では、下で、待っている、いや、待っております」


げんきは、こっちのは、定型文的なものじゃないのか、とどうでもいいような事を考えながら、明らかにさっきより丁寧で、柔らかな言葉になっていたので、楓たちが、何かしたのかな?という事が気になっていた。


「ピーチたちは、セラたちを宝箱の方まで普通に戻して連れて来てくれ」


げんきは、ピーチたちに、セラたちを任せて、部屋の中央に出現した3つの宝箱とドロップ、魔石を回収しに向かった。


セラたちは、ピーチたちによって、元に戻され、げんき様?、あれは一体?、ボスは?など呟いて、

全て回収して、出現した階段の前で待つげんきの元に来た。


げんきは、そんなセラたちを見て、軽く微笑んだ。


「みんな待ってるから、行くよ」


げんきとピーチ、ショコラが、階段を下りていくと、

セラたちは、げんきに聞きたいことはあるが、黙って、階段を下り始め、最後尾に、ハクたちが続いて、階段を下りて行った。



階段を下りた先は、

一面真っ白な神聖な場所ではなく、

祝福の間、と言われている場所とは全く思えない、

これまでの鉱石の神ダンジョンと変わらない洞窟だった。


楓たちのいる場所に、一直線の道を歩いていくと、

その場所には、ある程度ひらけた部屋に小さな石造りの建物がポツンと建っていた。


「げんくんおつかれ〜」

「おつかれー」


げんきたちが来た事に気づいた楓と椿が、建物の前で、手を振っていた。


「なんか、祝福の間、って名前負けしてないか?」

『まぁねー』


げんきたちも、建物の前まで行き、楓たちと合流した。



全員が建物の前に揃うと、

閉まっていた建物の扉が開いた。


「これより、祝福を授ける。全員、建物の中に入るが良い」


建物の扉が、開ききった瞬間、男の人の声が、上の方から響いてきた。


「入るか」


げんきの一言で、座っていた者は立ち上がって、げんきの周りに集合した。


「げんくん、もし、このまま帰ったら、どうなるのかな〜?」

「かっこよく決めた感じの男の人が、困ることになるんじゃないかな」

「ここまで来て、帰った人は居ないだろうし、やったら面白そうー」

「いやいや、せっかく来たんだから、祝福とやらもらおうよ」

「なんか、上から声がするのが嫌なんだよね〜。それに、かっこよく決めた男の人が、スルーされて、打ち拉がれているところを想像したら、面白そうでしょ〜」


げんきたち3人が、ただ面白そう、という事で、祝福を受けないで、帰ろうと言うのを聞いた、

ピーチたちとアスカ、ミカ以外のメンバーは、ただただ口を開けて、黙ってしまった。


実際、げんきも、楓、椿も、本気で言ってる訳じゃなく、楓と椿の悪ノリにげんきが長い付き合いなので、ノってあげているだけなのだが、

メンバー以外の者も、げんきたち3人の話を聞いて、固まっていた。


「あのー、出来れば、こちらの建物に入っていただけないでしょうか?」


どこか、焦った感じの男性の声が、部屋に響き、

しかも、先程までの上から聞こえてくる感じではなく、正面の建物からそれぞれの高さに合わせて、聞こえてきた。


「器用な事するなー」

「本当だね〜」

「2人が、言うからだ。ほら、遊びはここまでにして、さっさと入るぞ」

『はーい』


げんきたち3人は、笑いながら、建物に入って行き、

他のメンバーも、慌てて、げんきの後を追った。



建物の中は、石造りの古い教会のような場所で、

石の長椅子が、綺麗に並んでいて、1番奥は、一段上がっていて、石の机の上に石の本が置かれていた。


最後尾のクロが、建物の中に入ってくると、

自動で、扉が閉まり、石の机の前に、白い靄がかかり、ゆっくりと人の形になっていった。


「皆さん、鉱石の神ダンジョン、攻略おめでとう。我は、鉱石の神である」


鉱石の神と名乗った男は、40代半ばのちょい悪なおっちゃん、のような容姿で、どこか神々しいオーラのようなものを纏っているように感じた。


マリアたちやセラたちは、神と聞いて、軽く震えていたが、

ピーチたちは、敵じゃないの?と首を傾げていて、

げんきたち3人は、鉱石の神からの何とも言えない目線を向けられ、理解出来ず、首を傾げていた。


「これより、我の加護を授ける」


鉱石の神は、げんきたち3人からの目線に耐えながら、自分の役目を果たす為に、言葉を発し、手を合わせた。


鉱石の神が、手を合わせると、

小さな白い玉が現れ、げんきたち全員に一つずつ飛んでいき、身体に吸い込まれた。


「これで、皆は、攻略者になり、我の加護を受ける者となった」


鉱石の神は、何とか役目を果たせて、ホッとした。


「えーと、質問よろしいでしょうか?」


ホッとしたところで、げんきから声をかけられ、鉱石の神は、一瞬、ビクッとなって、返事をするのが少し遅くなってしまった。


「はい。何でしょうか?」

「加護の効果と、俺たちを見る目が、少し気になったんですが、どうしてですか?」


何とか取り繕って、返した鉱石の神だったが、

気にしていることをストレートに突かれて、黙ってしまった。


「あのー」

「あっ、はい。加護は、鉱石の目利きが出来るようになったり、採掘する時に、少し量が多くなったりします。もう一つの方は、話しをすると長くなりますし、話せる人が限られるのですが……」


げんきたち3人は、最初の威厳を無くした鉱石の神を見ながら、たぶん、創造神辺りが、何かしたんだろう、と思い至った。


「そうですか……えーと、少し時間あれば、その話しを聞かせて欲しいのですが……鉱石の神さまは、お酒や料理は好きですか?」

「話しですか……」

「もしかして、今は、飲んだり食べたり、できない感じですか?」

「それは、大丈夫なのですが……」


鉱石の神は、しどろもどろしながら、げんきに返事をして、少しの間、考え込み、急に、上を見上げ、仰せのままに、と呟き、

げんきたちの食事の誘いを承諾した。


げんきは、鉱石の神が、話しをしてくれるようだったので、マリアたちやセラたちに休憩にすることを伝えて、話しを聞いている間、好きにしていい、と伝え、

話しを聞く準備とお酒、楓、椿作のつまみを用意した。



「まず、先程の質問を話せるのは、げんき、楓、椿、アスカ、ミカの5人だけだ」


準備が終わったげんきたちに、鉱石の神が話しを聞かせてもいいメンバーを教えてくれた。


げんきたち3人は、話しを聞くことになり、

アスカとミカは、攻略した事のボーナスのようなオークションか街の買い物の話しを、マリアたちやセラたちとする、というので、話しは聞かないことになった。


話しをする4人は、一段上がっているところに上がり、げんきが、段の境に結界を張り、その内側に、鉱石の神が黒い結界を張り、4人以外侵入禁止で、声が漏れないようになった。


「ここまでしたんだ、メンバーからも予想出来るけど、創造神関連だな?」

「えーと、はい。そうです……」


鉱石の神は、げんきたち3人に見られながら、げんきの質問した、げんきたち3人を見る目について話し始めた。


鉱石の神の話しは、ある意味げんきたちの予想通りだった。


げんきたちが、鉱石の神ダンジョンに挑み始めたら、

神ダンジョン内は、管理している神しか中での様子が分からないので、げんきたちを気にしてる神達が、暇な時に鉱石の神の部屋に手土産を持って来て、一緒に見ていた。


そして、げんきたちが、今日の内に、神ダンジョンを攻略するだろうという話しを聞いた神達が、2回目のボス戦の時に、鉱石の神の部屋に集まって来て、

先頭に創造神がいて、後ろに何人も連れて来ていた。


神の中での格や位といった事を説明すると、

頂点に創造神がいて、

その下に、創造神が最初に造り出した直属の部下にあたる神、世界神や大神と呼ばれる神達がいて、

その神達の部下の神達がいて、

その下に、亜神ダンジョンを管理しているような眷属達がいる。


その神達の中で、鉱石の神は、物、物質を司る世界神の物の神の部下にあたる神で、

物の神と直接会ったことがないげんきたちだったが、ある物のおかげで、創造神が、鉱石の神の部屋に連れて来ていた。


つまりは、鉱石の神の部屋に、神の頂点、創造神と自身の上司にあたる物の神がいて、他にも世界神にあたる神達が何人もげんきたちに興味があって、創造神に付いて来ていて、

鉱石の神は、創造神からげんきたちについて話しを聞き、神達に見られながら、げんきたちの前に現れていた。


創造神から、げんきたちは、私の加護を与え、現在、エンフィスにおいて、最重要人物である、と言われていたので、

鉱石の神は、色々な事が合わさり、げんきたちを見るなり、緊張が最高潮に達してしまい、何とも言えない目線を向けてしまっていたのだ。



「何かごめん」


話しを聞いたげんきは、自分のした事ではないが、とりあえず鉱石の神に謝った。


「いや、私こそ、すまない。こんな状況生まれて初めてな事で、未だによくわからない感じなのだ」

「俺たちに緊張する必要はないよ。創造神には、後でそれとなく言っておくよ」

「あのお方に対して、軽く話しかけられる君は、一体なんなのだろうな。その事だけで、私なんかは、君達に緊張してしまうよ」


鉱石の神は、今の状況をげんきたちに話せたことと、げんきたちが、普通に話してくれることで、だんだんと気持ちが落ち着いてきていた。


「お互い、落ち着いたことだし、お酒飲んでくださいよ」

「そうだね。頂くよ」


げんきは、鉱石の神の説明で、状況が理解出来て、目線の理由もわかったので、鉱石の神に自分オススメのフィーの炎竜酒を注いだコップを渡した。


「うっ、美味い!これは、竜酒か?」

「はい、そうですよ。知り合いの竜の出した炎竜酒です。あとは、火竜酒、甘火竜酒もあるよ」

「なんと!竜酒が、三種あると言うのか……そちらも頂けないだろうか?」

「ん?いいよ」


げんきは、別のコップを出して、火竜酒と甘火竜酒を注いで、鉱石の神に渡すと、

鉱石の神は、おー、と歓声を上げて、一つずつ手に取り、味わって飲んでいた。


「竜酒を三酒飲めるとは、有り難い」


げんきたちは、鉱石の神から、頭を下げられ、まだまだトン単位であるのだとは言えなかった。


げんきたちからしたら、珍しい物ではない竜酒だったが、竜酒は、神の中で、竜の神が管理しているので、竜の神と仲の良い神以外は、神でも飲む機会がほとんど無く、酒好きの神達の憧れの酒だった。


竜酒について聞いたげんきは、鉱石の神に新しいコップを差し出した。


「げんき殿、これは?」


げんきの差し出したコップには、真っ黒の液体が入っていた。


「一気に飲まずに、まず一口だけ飲んでください」


毒など効かない神なので、鉱石の神は、げんきに言われた通り一口飲んだ。


「おっ、これは、黒いエールですかな?美味いですな」


エールと言われるお酒に近く、キンキンに冷えた喉越しの良く、スッキリした後味のお酒だった。


「もうそろそろですね。また一口飲んでみてください」

「あぁ」


鉱石の神は、言われるまま、さっきより少し薄くなった黒い液体を一口飲んだ。


「えっ!!」


今度の一口は、先程のエールとは違う物で、喉越しの良さは変わらず、でも味は、甘くなっていた。


「なんですか、これは!!同じ物ですよね⁉︎⁉︎」


パニックに陥っている鉱石の神に、げんきは、また一口、と言う、計7回一口ずつ飲んでもらった。


「あー、なんて酒だ………」


鉱石の神は、同じ物なのに、7回味の違う酒を飲んで、天に昇っていきそうな表情で、余韻に浸っていた。


天に昇っていったところで、家に帰るみたいなもんだけど、とげんきたちは、鉱石の神の表情に満足していた。


「このお酒は、黒時龍酒。あそこのショコラが、成長して覚えた龍魔法で作った物です」

「おー、なんと、幻の龍酒……」


鉱石の神は、龍酒と言って、そのまま後ろに倒れ込んで、動かなくなった。


良く分からないが、感激のあまり、意識を失ってしまっていた。


げんきたち3人は、何も言えず、ただ黙って、鉱石の神を見て、ピクピクし始めて、椿が耐えきれず笑い出したので、げんきと楓も笑い出した。


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