122.70階層のボス
メタルトレントを乱獲して、妖精石を大量に手に入れたげんきたちは、70階層のボスについて話していた。
「ここのボスは、通常もレアも本に書いてあったよな?」
「はい!通常ボスは、ビッグメタルトレント レベル220が2体。レアボスは、ジャイアントメタルトレント レベル250くらい一体とレベル200のメタルトレントです」
げんきの質問に、ダンジョンギルドで買った本を持っているマリアが、答えてくれた。
ビッグメタルトレント
ー10メートルくらいある金属で出来ている目と口のある木。
メタルトレントより、HP、防御力、魔法防御が高く、攻撃の仕方はメタルトレントと同じで、金属の礫や金属の枝で攻撃してくるが、攻撃範囲は、メタルトレントの3倍以上。
ジャイアントメタルトレント
ー50メートルくらいある金属で出来ている目と口のある木。
ビッグメタルトレントより、全てのステータスが2倍以上高く、攻撃範囲も2倍以上広い。
そして、MPを消費することで、メタルトレントを召喚することが出来て、他にも樹魔法と土魔法を使用することも出来る。
「今回も、一回目は、マリアたちとセラたちだけで、戦ってみる?」
「そうですね……通常ボスなら、勝てると思います」
「よし、なら、通常ボスだったら、マリアたちに任せて、レアなら、俺たちが倒すことにしよう」
「了解です」
「もしも、周回するとなったら、何回かに一回は、マリアたちに戦ってもらうから、よろしく」
「はい!」×多
マリアは、戦う時の作戦を話しに、メンバーのところに行った。
マリアたちの話し合いが終わったところで、
げんきは、一緒にボス部屋に入れないピーチたちに、ボス部屋の近くで、遊んでいるように伝えて、ボス部屋の扉を開けた。
「えーと、ビッグメタルトレントだな。みんな頑張ってくれ」
「はい!」×多
げんきは、眼でボスを確認して、通常ボスだったので、マリアたちとセラたちに任せて、
楓と椿と観戦することにした。
マリアたちは、部屋の中央より後ろにいるビッグメタルトレント2体にゆっくり近づいていき、金属の礫や金属の枝の攻撃範囲を探っていった。
「2体の攻撃範囲が重なっているところもあるのか……」
マリアたちは、おおよその攻撃範囲を調べ終わり、
セラを含むメイド5人と後衛を左側にいるビッグメタルトレントの金属の枝の攻撃範囲から外れていて、金属の礫が飛んでくる場所に配置して、セラたちメイドに盾を装備してもらい、左側のビッグメタルトレントに遠距離攻撃を仕掛けて、気を引いてもらう事にした。
その他のメンバーは、二つの大楯を構えたチャイを先頭に、左右をミカとマリアが守り、残りは、チャイの後ろという、メタルトレントの時に使っていた戦術で、左側のビッグメタルトレントの金属の枝の攻撃範囲に入らない場所から、右側のビッグメタルトレントに接近し始めた。
セラたちの役目は、左側のビッグメタルトレントの気を引くことで、最初から守備寄りで、攻撃も、シャーリーの弓、アリソンの魔法がメインで、他のメンバーは、盾を持って、攻撃をしているシャーリーとアリソンと回復役のレイラを金属の礫から守って、
マリアたちが、右側のビッグメタルトレントを倒すまで、左側のビッグメタルトレントが、マリアたちに攻撃を仕掛けないように立ち回っていた。
「突撃ー!」
マリアたちは、セラたちが左側のビッグメタルトレントを引きつけている間に、右側のビッグメタルトレントに接近して、弱点である直接攻撃を仕掛けるために、チャイが金属の礫を受け、ミカとマリアが左右から来る金属の枝を弾いて、じわじわと近づいていき、左側のビッグメタルトレントの金属の枝の攻撃範囲に入ると思っている場所まで行くと、
マリアは、セラたちにもわかるように、大声で叫び、
セラたちに左側のビッグメタルトレントへの攻撃を強くしてもらい、自分たちは、右側のビッグメタルトレントに突進して行った。
右側のビッグメタルトレントに取り付いたマリアたちは、右側と左側のビッグメタルトレントの金属の枝による攻撃をチャイ、ミカ、マリアが受けて、その間に、他のメンバーで、右側のビッグメタルトレントに直接攻撃を仕掛けた。
「一時撤退!一時撤退!」
時間にして、15分くらいで、マリアたちは、右側のビッグメタルトレントを倒すことに成功して、
マリアは、セラたちも含めて、残りのビッグメタルトレントの金属の礫と枝の攻撃範囲外まで、撤退した。
マリアたちは、撤退した場所で、ポーションとマジックポーションを飲んで、HPとMPが回復したところで、残りの左側のビッグメタルトレントに全員で、攻撃を仕掛けた。
左側のビッグメタルトレントは、右側のビッグメタルトレントが居ないので、チャイ、ミカ、マリアの金属の枝を受け止めることにも、余裕があり、数人が、金属の枝による攻撃を一回受けただけで、10分掛からず倒すことが出来た。
「終わったー!」
ボスを倒したことで、部屋の中央に大きめの銀製の宝箱が出現したのを見て、
盾役のチャイ、ミカ、マリアは、その場に座り込んだ。
「おつかれー」
『お疲れ様ー』
げんきたち3人が、疲れ果てているマリアたちに手を振りながら、労いの言葉をかけると、
マリアたちは、げんきたちに手を振り返して来た。
「楽勝とまでは、言えないけど、良かったんじゃないか?」
「フゥー、私たちが出来る範囲だとこんなものだと思います」
マリアは、楓と椿から渡されたコップの水を飲んでからげんきに返した。
「なんか気になったことはあった?」
「そうですね……やはり、回復役が1人しかいないのは、このレベルの戦闘になると、気になります」
「あー、レイラしか居ないんだったか……」
げんきは、レイラ以外のメンバーを眼で確認していった。
「イリーとエリーの樹魔法のレベルが上がればいいのですが、今のところは、レイラ様だけです」
げんきは、マジックバッグの確認欄から、聖魔法のスキルブックや回復の出来そうなスキルブックを探したが、見つからなかった。
「これからの成長に期待だな」
「そうですね」
マリアは、げんきとの話しが終わると、
宝箱の前に集まっているメンバーのところに行った。
宝箱を開けるのは、今回活躍したチャイで、
チャイは、初めての大役に、少し震えながら、宝箱を開けて、中身を取り出していった。
レアボスの為に周回する予定なので、
宝箱の中身は、ボス部屋の前に戻ってからすることにして、中身と魔石、ドロップを回収して、げんきたちは、ボス部屋を出て行った。
ボス部屋の前に戻って、マリアたちは、宝箱の中身を鑑定台で、鑑定していて、鑑定するたびに、歓声を上げていた。
その中から、レイラが1人で、げんきのところに来た。
「どうかした?」
「その……さっきの戦闘で、全部でポーション38本、マジックポーション12本使ってしまいました。申し訳ありません」
レイラは、ポーションを使ってしまったことを謝りに来ていた。
「前にも言ったけど、気にしなくていいよ。えーと、ポーション38本、マジックポーション12本と」
げんきは、レイラに軽く返しながら、マジックバッグから、減った分のポーションとマジックポーションを取り出して、レイラに渡して、みんなに補充しておいて、と頼んだ。
「はい、わかりました」
レイラは、何も気にしてないげんきに、もう一度、頭を下げてから、渡されたポーションを自分のマジックバッグに入れて、マリアたちのところに戻っていった。
「レアボスでねー」
「今日は、この階層で、泊まることになりそうー」
「そうだね〜」
げんきたちは、マリアたちがボスを倒した後、70階層のボスに、14回挑戦して、全て通常ボスだった。
「今日は、この階層にテントを張るぞ」
げんきは、宝箱と魔石、ドロップを回収して、ボス部屋の前に戻って、
楓、椿、マリアと話し合い、予想以上に、時間が経っていて、18時前ということもあり、今日は、70階層にテントを張って泊まることに決めた。
マリアたちとセラたちが、テントや晩ごはんの準備をしてくれるそうなので、
げんき、楓、椿の3人とピーチたちで、レアボスを求めて、ボスの周回をすることにした。
「まず、負けないと思うけど、一日経っても、俺たちが、ボス部屋から戻って来なかったら、みんなで、家に帰ってくれ。もしも、もう俺が死んでたら、屋敷の地下の結界が無くなってるはずだから、その時は、みんな好きにしていいから」
「そんなこと、あるはず無いでしょうが、その時はそうします」
げんきは、マリアに自分たちに何かあった時のことを考えて、伝えてから、ボス部屋に入っていった。
マリアは、自分たちで倒せたボスにげんきたちが倒される想像が出来ず、笑顔で、げんきたちを見送って、テントを張りに戻っていった。
マリアに見送られてから3回目のボスで、
げんきたちの前には、馬鹿でかい金属の木が現れた。
ジャイアントメタルトレント レベル251 R
他にも、ジャイアントメタルトレントを囲むようにレベル200のメタルトレントが40体ほどいた。
「よっしゃー!」
『おっきいねー』
げんきたちのいるボス部屋の入り口からでもわかるくらいデカイ木に、げんきたちとピーチたちは、樹の亜神ダンジョンにいたジャイアントオールドトレントを思い出していた。
ピーチたちも、おっきいー、と言って、げんきたちに倒したあよー、と伝えてきた。
「最初は、ピーチたちに任せるよ。頑張ってね」
(わかったー)
ピーチたちは、げんきの許しが出たので、一斉に、飛び出していき、メタルトレントを蹂躙し始めた。
ピーチ、ルビー、ホワイトを先頭にして、メタルトレントの金属の礫の攻撃を避けること無く、突進していき、金属の枝の攻撃は、ハク、クロ、マロン、クルルが魔法で迎撃して、ショコラが、撃ち漏らした枝を弾き返していた。
ピーチたちは、最初からいたメタルトレントの半分以上を倒して、ジャイアントメタルトレントに肉薄して、体当たりや魔法を撃ち込んで、ジャイアントメタルトレントのHPを削っていった。
ジャイアントメタルトレントのHPが半分を切ったところで、ジャイアントメタルトレントの金属の葉っぱが、ピーチたちの上に降り注いで来て、数が多過ぎて、迎撃出来そうになかったので、
ピーチたちは、一旦、ジャイアントメタルトレントから距離を置くことにして、げんきたちが観戦してる場所に行って、減ったHPを回復させた。
ジャイアントメタルトレントは、落ちて来た葉っぱにMPを注いで、メタルトレントを召喚し始めた。
ピーチたちが、全快まで回復し終わったことには、ジャイアントメタルトレントの周りには、レベル200のメタルトレントが、100体以上に膨れ上がっていた。
ピーチたちは、再度、メタルトレントたちに突撃を開始した。
げんきは、ピーチたちの戦いを見ていたら、ある事に気がついた。
「あれって、ドロップと魔石だよな?」
「んー?そうだね〜」
「妖精石だねー」
げんきが見つけたのは、ピーチが倒したメタルトレントが居た場所に、妖精石が落ちていたことだった。
そして、げんきは、少し考えて、ピーチたちを呼び寄せた。
「みんな、ジャイアントメタルトレントに攻撃せずに、メタルトレントだけ倒してくれないか?」
(どうしてー?)
(倒さないのー?)
「ジャイアントメタルトレントが、メタルトレントを召喚してくれたら、その分、メタルトレントのドロップの妖精石が、集まるんだ。階層にいるメタルトレントを探して倒すより、いっぱい集まるんだ」
(わかったー)
「ジャイアントメタルトレントのMPが無くなったら、メタルトレントを召喚出来ないから、その後は、倒していいよ」
(やったー)
げんきがピーチたちと話しをしている間に、
ジャイアントメタルトレントは、更に、メタルトレント100体以上を召喚していた。
ピーチたちは、げんきに言われた通りに、ジャイアントメタルトレントに攻撃せずに、ジャイアントメタルトレントを中心に円を描くように、走り回り、メタルトレントを殲滅していった。
げんきは、引力魔法で、ピーチたちが倒して、ドロップした妖精石と魔石を引き寄せて、
楓と椿が、引き寄せられて来た妖精石と魔石をマジックバッグに回収していった。
げんきたちが、ボス部屋に入ってから1時間経たないくらいで、ジャイアントメタルトレントは、MPが尽きて、メタルトレントを召喚出来無くなり、魔法も使えなくなり、ピーチたちに倒された。
ピーチたちのおかげで、2000個以上の妖精石を回収することができた。
普通の探索者なら、ジャイアントメタルトレントが、メタルトレントを召喚出来ないように、金属の葉っぱにMPを送る動作をした瞬間に、無防備な状態のジャイアントメタルトレントに直接攻撃を仕掛けて、ダメージを与えて、召喚を失敗させながら、倒すのだが、
げんきたちは、召喚の邪魔など、一回もしないで、MPが尽きてから倒すという、今までにない倒し方をした。
げんきたちは、ピーチたちを労って、撫でてあげてから、中央に出現した普通サイズの金製の宝箱3つの中身を取り出して、ジャイアントメタルトレントのドロップと魔石を回収して、ボス部屋から出て行った。
ボス部屋の扉から出たら、セラとマリア、シャルが、ボス部屋の扉の前で待っていた。
「心配しましたよー」
「なっ、だから大丈夫だって言ったのに」
「おかえりなさいませ」
セラとマリア、シャルは、晩ごはんが出来ても帰って来ないげんきたちを心配して、ボス部屋の前で30分以上待っていた。
セラとマリア、シャルから、その話しを聞いて、げんきたちは、苦笑いしながら、テントの方に進んでいった。
他のメンバーも、それなりに心配していた見たいで、
げんきたちが、テントが張ってある場所に着くと、
みんなからの出迎えを受けることになった。
げんきたちは、テントの前に並べられたテーブルについて、晩ごはんを食べ始めて、
レアボスのジャイアントメタルトレントの話しをした。
晩ごはんを食べ終わってから、
明日の予定を少し話し合ってから、みんな、順番にお風呂に入ってから、休んだ。