116.セラたちの戦闘訓練
セラたちメイドより早く起きたげんきは、
静かにテントを出て、タバコに火をつけた。
「おっ!大量、大量」
げんきが、タバコを吸いながら、結果の外に出ると、
大量のモンスタードロップの銀鉱石と魔石が、散乱していた。
昨日の夜にげんきが発動させた結界には、雷魔法も混ぜられていて、結界に触れると、電気が流れる仕掛けが施されていた。
ボス部屋の周りでは、モンスターは、生まれないが、モンスターが人の気配を察知して来る事はあるので、一応の結界だったが、予想以上にモンスターがやって来ていたようだった。
一応、セラたちには、結界の事は教えてあり、結界に触れないように伝えていた。
「回収、回収」
げんきは、引力球で、散乱したドロップと魔石を集めて、マジックバッグに回収していった。
モンスターが勝手に結界に触れて、ドロップと魔石になって、倒しているからレベルも上がる、中々良いやり方だなー、と思いながら、回収していた。
「おはようございます、げんき様」
「ん?セラ、おはよう」
集めたドロップと魔石を回収していたら、起きてきたセラが挨拶に来た。
「これが、昨日聞いた結界の効果ですか、凄いです」
「この二倍だよ。もう半分は、マジックバッグに回収してるから。昨日は、ちゃんと寝れたかい?」
「二倍ですか……あ、はい、昨日はよく眠れました。それにしても、こんなにもモンスターが来ていたのですね」
「あぁ、今回の結界は、弾力があるようにして、攻撃を防ぐようにしていたから、音は聞こえなかったんだよ。モンスターを倒した事になって、経験値、ドロップ、魔石が、寝ていて手に入るのは、良いやり方だけど、ドロップが銀鉱石なのが、勿体ない感じだな」
鉱石の亜神ダンジョンのドロップは、全ての亜神ダンジョンで、階層毎に分かれているが、同じものがドロップする。
1〜10階層では、砥石。
11〜20階層では、鉄鉱石の欠片。
21〜30階層では、鉄鉱石。
31〜40階層では、銅鉱石。
41〜50階層では、銀鉱石。
51〜60階層では、ミスリル鉱石の欠片。
分かれている階層の後半に行くほど、ドロップの大きさや品質は良くなっていく。
ただし、レアモンスターに関しては、各亜神ダンジョンで、ドロップするものは違う。
「げんき様、銀鉱石がいくらになるかは、私にはわからないですが、この二倍の量の魔石だけで、一月は遊んで、暮らせるだけの価値はあるでしょう。それだけのものを寝ているだけで、手に入れられただけで良いではありませんか」
「まぁ、それもそうか」
げんきは、笑い、つられてセラも笑い出して、一緒に魔石と銀鉱石を回収していった。
げんきとセラが、魔石と銀鉱石を全て回収し終わったところで、他のみんなも起きてきたので、
みんなで、予定の確認をしながら、朝ごはんを食べた。
「さぁ、行こうか」
「おー」×メイド
(おー)×ピーチたち
げんきたちは、テントなどを片付けて、げんきの魔法も解除して、ボス部屋に入っていった。
「流石に、二回連続レアボスはないか」
げんきは、あわよくば、もう一度レアボスを引き当てたかったが、流石に、そう上手くいかず、通常ボスだった。
ボスは、ピーチが、一瞬で倒して、
げんきたちは、宝箱の中身を回収して、51階層に向かった。
51階層の転移陣にセラたちとピーチたちが登録したら、ルビーとホワイトに、メイド用の鞍を装備して、メイドたちに乗り込んでもらった。
「さぁ、楓たちに追いつくぞ!」
げんきの号令で、げんきたちは、楓たちと合流するために、出発した。
げんきたちは、げんきのマップを頼りに階段を目指して進み、遭遇するモンスターは、クロとショコラが蹴散らしていった。
「さて、楓たちは、まだいるかな?」
げんきたちは、1時間程で、55階層まで下りてきていた。
「おっ!いた、いたー!ピーチこのまま、真っ直ぐ行った先の行き止まりに楓たちがいる!」
(わかったー)
げんきは、55階層に着いて、マップに楓たちの反応を発見した。
げんきたちは、楓たちがいる方に進んで行った。
「この壁の先にいるな……面倒だし、壊すか」
「いいのですか?」
「いいだろう。多分、楓か椿のストーンウォールだろうし、なんかあったら、俺が直すよ」
げんきは、太刀を構えて、壁を斬りつけた。
壁は、げんきたちが通れるくらいの三角の道を開けた。
壁の向こうのには、テントが見えて、テントの中から、楓たちが出て来た。
「なんだ、げんくんか〜。壁壊されて、焦ったよ〜」
「壊す前に、手紙くらい送ってよー」
「悪い、悪い、面倒で」
『面倒ってなんだー』
げんきたちは、笑い、周りのみんなも笑い出した。
「げんき様、おはようございます」
セラたちが、ルビーとホワイトから、下りていると、
シャルが、げんきに挨拶をしに来て、
他のメンバーも、げんきに挨拶していった。
「おー、みんな、もうレベル120台まで上がってるな」
「まぁね〜、げんくんの案内がないから、階層内を手当たり次第に探索して、ここまで来たからね〜」
「本当に、大変だったよー」
楓たちは、マップがないので、階段の場所がわからなかったので、各階層を手当たり次第に探索して、55階層まで来ていた。
「俺の有り難みがわかった?」
『げんくん、いつもありがとー』
げんきに楓と椿が、抱きついて、
その様子見て、シャルが、私も、と飛びついてきて、
そこに、ピーチとショコラも追加で、飛びついてきて、げんきは、揉みくちゃになってしまった。
楓たちは、みんなで、朝ごはんを食べていたところだったらしいので、
げんきは、楓たちが朝ごはんを食べている間に、セラたちの戦闘訓練をすることにした。
ただし、ルビー、ホワイト、マロン、クルルの食いしん坊組が、楓と椿の作った朝ごはんがあると聞いて、テントに入っていったので、ピーチたちも一緒に残して行く事にした。
げんきは、セラたちを連れて、近くにいたモンスターの集団に向かった。
「うーん、とりあえず、動きの遅いメタルゴーレム から、始めよう」
モンスターの集団は、レベル110のロックフロッグ2体、ロックウルフ2体、メタルゴーレム1体、メタルウルフ1体の計6体の集団だったが、
げんきが、サクッとメタルゴーレム以外を倒した。
「さて、頑張って」
「は、はい!」
セラたちは、緊張しながら、メタルゴーレムに向かって、走り出した。
セラたちは、誰が見ても、分かるぐらいに、2組に分かれた。
1組目は、げんきのメインパーティーのセラを含むメイド4人。
勢いよく走って、メタルゴーレム の前まで行ったが、戦闘経験が、1階層でゴーレムに殴られたことくらいなので、どうしていいのかわからず、周りをキョロキョロ見回していて、
メタルゴーレムが動き始めると、屁っ放り腰、とまぁ、腰が引けていて、
いざ、メタルゴーレムから、攻撃されると、4人とも身体が動かず、パンチがクリーンヒットして、綺麗な放物線を描いて、げんきのいるところに飛んで来た。
2組目は、第2パーティーのげんきが戦闘することができると言われて選んだ2人と多少の戦闘経験がある2人の4人。
4人は、1日で急激にレベルが上がったこともあって、最初は、戸惑って、探り探りといった様子で、メタルゴーレムと対峙していて、攻撃は、余裕を持って避けていた。
セラたち4人が、攻撃を受けて、飛ばされた頃になると、げんきが選んだ2人は、身体の感覚を掴んで、連携とまでいかないが、交互に攻撃して、的を絞らせないような動きを見せて、その間に少し遅れて、残りの2人も、身体の感覚を掴んで、攻撃に参加して、
あっさりメタルゴーレムを倒した。
げんきは、全員を集めて、それぞれの感想を伝えて、
次の戦闘は、第2パーティーの4人だけで、基本的な、単純な動きだけで戦ってもらい、メインパーティーの4人には、戦闘を観察してもらう事にした。
げんきが、メタルゴーレムを探して、集団を見つけて、メタルゴーレム以外を倒して、
第2パーティーの4人は、戦闘を開始した。
4人は、げんきの指示通りに、攻撃、防御、回避だけの単純な動きだけで、さっきよりも早く倒す事が出来た。
「お疲れ様。セラたちも、あんな感じに出来たら、最低限戦えるかな」
「はい。頑張ります」
「緊張しすぎかな。もっと楽に考えな。さっき、メタルゴーレムに殴られた時、HPは、みんな2しか減ってなかったんだから、攻撃を受けても、死ぬことはない。でも、なるべく殴られないようにね」
「は、はい」×セラたち
「じゃあ、行こう」
その後、セラたちだけ、メタルゴーレム1体と三回戦かった。
1回目は、第2パーティーのマネに苦戦して、結果、殴られて、飛ばされても、すぐに戻って、メタルゴーレムを殴る、というゾンビアタック的な動きをして、メタルゴーレムを倒す事が出来た。
2回目は、避ける練習をする為に、攻撃なしで、セラたちには、メタルゴーレムの攻撃を避け続けてもらい、4人が避けれるようになったところで、避けたら、攻撃するという攻撃の仕方で、時間は1回目の倍以上の30分かかって倒した。
3回目は、何の指示もなく、自分たちで、考えて、倒してもらい、メタルゴーレムの正面にいたセラが、2回攻撃を受けただけで、5分くらいで、倒した。
「お疲れ様、最初よりは、格段に良くなってるよ」
「ありがとうございます」
「後は、自信が持てるようになったら、自衛くらいは、出来るようになるよ」
「はい!頑張ります!」
「今回は、このくらいにしておこう。楓たちが、こっちに向かってきてるからな」
「かしこまりました」
げんきとセラたちは、戦闘訓練を終えて、こっちに向かってきている楓たちと合流した。
「ここからは、一気に、60回層のボス部屋を目指すよ」
「おー」×多
合流したげんき一行は、
ルビーとホワイトに、運搬用の鞍をつけて、ダンジョン組とメイド組に分かれて、8人ずつ乗ってもらい、ダンジョン組の余った1人のマリアには、ハクに1人用の鞍をつけて、騎乗してもらった。
げんきは、ピーチに騎乗して、
楓は、ルビーの頭の上に騎乗して、
椿は、ホワイトの頭の上に騎乗した。
全員が、準備出来たところで、げんきとピーチが、先頭に行き、60回層のボス部屋に向かった。
ピーチたちの爆走モード初体験のダンジョン組は、みんな楽しそうに、キャー、キャー、言っていたが、
相変わらずというか、何と言うか、セラは、ピーチたちの爆走モードになったら、静かに、気を失った。
約1名の幸せそうに寝ている人がいる中、げんきたちは、1時間くらいで、60階層のボス部屋の前に到着した。
「最初に、ボス部屋の中に入るのは、セラたち以外にしよう。理由は簡単!セラが幸せそうに寝てるから!」
寝ているセラ以外が、一斉に笑い出した。
「とりあえず、あっちの方にテントを張って、簡易の拠点を構えてから、ボス部屋に行こう」
「おー!」×セラ以外
ボス部屋の壁沿いに行ったところで、げんきが、ストーンウォールと結界魔法で、拠点の場所を確保して、テントなどを用意して、セラをメイドたちに任せた。
げんきたちは、パーティーを組み直した。
メインパーティーは、げんき、楓、椿、シャル、アスカ、ミカ。
第2パーティーは、シャル以外のオークション組8人。
第3パーティーは、ピーチたち従魔8体。
第4パーティーは、セラたちメイド8人。
として、第4パーティーのセラたちを拠点において、
げんきたちは、ボス部屋に向かった。
「最初は、通常ボスでもレアボスでも、俺たちで倒すから、みんなは見学な」
「はーい」×多
げんきが、ボス部屋の扉を開けて、みんなで中に入って行った。
「通常か、椿、やっちゃっていいよ」
「わかったー」
ロックリザード レベル151
亜竜に属する、4メートル以上ある岩の鱗で覆われたトカゲ。
鉱石の亜神ダンジョンの攻略に立ちはだかるボスで、レベル的には、低い感じだが、亜竜種ということで、全体的にステータスは高く、特に、HP、防御力、魔法防御は、他のステータスの2.5倍以上の数値がある。
他にも、火魔法、土魔法を戦闘に混ぜて来て、
これまでのボスとは、比べものにならない厄介な敵である。
そんな相手だが、椿は、出現すると同時に、巨大剣で斬りかかり、出現から、3秒くらいで、バラバラにしてしまった。
「終わったよー」
「おつかれ〜」
「お疲れさん、斬るのが、遅かったけど、斬りにくかったのか?」
「いや、いや、どう斬るか迷っただけ」
「何それ〜」
げんきたち3人は、バラバラになって、消えて行く、ロックリザードを見ながら、笑っていた。
「初回討伐ボーナス」
金の小さな宝箱が、部屋の中央に出現すると同時に、
部屋の中に、声が聞こえて来た。
げんきたちは、聞いた事のある声だったので、驚かなかったが、マリアたちダンジョン組は、上を見上げて、口を開けて固まってしまった。
「さっさと、回収しに行くか」
『そうだねー』
げんきが、宝箱に近づいて行くと、
マリアたちが、見上げていた、白い球体が、げんきの手の中に降りて来た。
不可視鞭 亜神級
ーメタルカメレオンの素材を使った鞭。
付加は、透明化、認識阻害(中)、拘束強化。
(透明化ー鞭を透明にすることができる。認識阻害ー鞭を発見し難くする。拘束強化ー鞭で、捕まえると、拘束する力が強くなる)
『面白そうだねー』
げんきが、宝箱の中身を回収して、みんなのところに戻っている時に、不可視鞭の情報を楓と椿に話したら、2人の食いつきが良かったので、楓に渡しておいた。
「みんな、戻るよ」
げんきたちは、ボス部屋から出て、扉の前に戻った。
「次は、どうする?マリアたちがやる?ピーチたちがやる?」
「あのー、げんき様、私たちは、後でいいです」
扉の前に戻ったげんきは、マリアたちにやれそうか聞いたのだが、ピーチたちの次は、私たちがやりたい、というオーラに負けて、ピーチたちに先を譲った。
「わかったよ。次はピーチたちな」
(あるじー、ありがとー)
(やったー)
特に、ピーチとショコラは、戦えると喜んでいた。
その後、ボス部屋に入って、通常ボスをピーチたちは、全員で、一斉に攻撃して、ロックリザードは、出現した場所から動くことができず、ボコボコにされて、最後は、ショコラの全力ブレスによって、跡形も残らなかった。
げんきたち3人は、ピーチたちをお疲れ様、と出迎えていたが、
マリアたちは、初めて見る、ピーチたちの戦闘に、開いた口が塞がらない、と言った様子だった。