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105.鉱石の亜神ダンジョンへ


げんきは、朝、お腹の上で、飛び跳ねていたショコラに起こされた。


(あるじ、起きてー)

「うっ、うん、起きてるよ……」

(街に行きたいのー)

「まだ真っ暗だよ。だから、明るくなってから。朝ごはんの前に、ちょっとだけ散歩行こう」

(やったー)


ショコラが、街に行けるから、嬉しくて、部屋の中を飛び回っていたので、寝ていたピーチたちも目を覚ました。


げんきは、起きたみんなを連れて、外に出て、タバコに火をつけた。


ショコラは、外に出て、家の周りをクロと飛び回って、

ハクは、芝生のような草の上で、のんびりしていた。


ショコラとクロが、屋敷を見終わったくらいに、馬の中で一番大きいリーダーの馬が、げんきのいた噴水のあるところに近づいて来たので、

ハク、クロ、ショコラを紹介して、ハクたちにも、家の周りにいる馬は、仲間だよ、と教えた。


リーダーの馬は、ショコラに怯えていた他の馬を連れてきてくれて、ハクたちは、敵じゃない、と教えているようだった。



リーダーの馬以外もハクたちと仲良くなっていると、

空が明るくなってきて、

ショコラが、げんきの側で、ソワソワしだして、明るくなってきたよー、街に行こうよー、と言い出したので、げんきの予定より早く街を散歩しに行くことにした。


げんきは、ショコラを抱えて、メインストリートまで出ると、

ショコラが、キョロキョロして、家いっぱーい、と飛ぼうとしたので、げんきは、腕に力を入れて、止めた。


「勝手にウロチョロしたら、ダメ。約束出来ないなら、家に戻るよ」

(わかったー)


ショコラが、げんきの腕の中で、大人しくなったので、散歩を再開した。


まだ、朝が早いので、人は少なかったが、ハク、クロ、ショコラには、新鮮だったみたいで、目をキラキラさせていた。


げんきたちは、街の広場まで、歩いていき、りんごのような果物を売っている店が、開いていたので、10個程買い、みんなで齧りながら、家に戻った。


げんきの中では、問題も起こらず、ハクたちも楽しんでいたので、散歩しに行って良かった、と思っていたが、

街の中で、ドラゴンを見た、トラを見た、あのげんきが、ドラゴンを抱えていた、など噂になり、その日の内に、サーシュン中に広がっていった。



何故か、伝えてもいないのに、家の前で待っていたシャルに出迎えられたげんきたちは、

みんなが集まっている食堂に向かった。


「みんな、おはよう」

「おはようございます」×多


げんきが挨拶すると、みんなが立って、合わせて挨拶してきたので、げんきは、少しビックリして、周りを見渡した。


「打ち合わせは、楓たちが来てからにしよう。あと、打ち合わせにセラたちメイドも来て欲しいんだけど、みんな厨房かな?」

「はっ!呼んで参ります」


横にいたシャルが、げんきの言葉を聞いて、即座に反応して、厨房で、朝ごはんの準備しているセラたちを呼びに行った。


シャルが、セラたちを連れてきて、

楓と椿、顔の赤いレイラとマリアが、食堂に来て、

全員集まったところで、打ち合わせを開始した。


「みんな集まったところで、ダンジョン、鉱石の神ダンジョンの攻略の打ち合わせを始めようか」


げんきは、一度、間を取って、みんなを見渡した。


「まず、鉱石の亜神ダンジョンの攻略だけど、今日の昼から、行きたいと思います。メンバーは、ピーチたちとメイド以外の全員。最初は、みんながどの程度戦えるかの確認から、始めよう。パーティーは、ある程度固定するつもりだけど、状況によっては、変更するから、そのつもりでいるように」


げんきは、パーティーを発表した。


メインパーティーは、

げんき、シャル、レイラ、マリア、イリー、エリー、ドリィ、の8人


第2パーティーは、

楓、椿、アスカ、ミカ、アリソン、チャイの6人


このパーティーにした理由は、

げんきのギャンブルルーレットの特殊効果に関係していた。


特殊効果は、メインパーティーなら、2分の1。

その他の第2、第3、第4パーティーなら、4分の1。

の特殊効果の恩恵を受けることができる。


そこで、メインパーティーには、レベルの低いメンバーを集めた。

ただ、げんきたち3人以外で、メンバー内最高レベルのレベル49のマリアは、レイラがいる事と前衛をしてもらう為に入っている。


げんきは、特殊効果についての細かいところ、ギャンブルルーレットに関しては、今のところ、教える気が無いので、ぼかしながら、メンバーに説明した。



「メンバーは、さっきも言ったけど、固定じゃないから、気をつけるように。次に武器や防具だけど、俺たちが持っている者を出すから、その中から、自分が使える物や使いたい物を選んでくれ」


げんきは、言い終わると、

楓と椿と一緒に、食堂の床に、マジックバッグから、自分たちの使わない武器や防具を並べていった。


げんきたちが、食堂の3分の1程の武器や防具を並べて、みんなを見ると、口を開けて、固まっていた。


「みんな、どうかした?」


げんきは、当然のように、疑問を聞いた。


「なんなんですか!これは!」


最初に答えたのは、マリアだった。


マリアに続くように、元冒険者の者や戦闘経験のある者が、同じような事を言った。


「何って、みんなが使う装備品だけど?あ、メイドのみんなも、なんかあった時のために、この中から、選んでおいてね」

「そうじゃなくて!なんなのこの量と聞いてるんです!それに、これだけの物を入れられるマジックバッグなんて……」


マリアは、自分で、言いながら、目の前にある物を見て、後半にいくにつれて、語尾が小さくなっていった。


「この量って言われても、みんながどんなのがいいか知らないからな。それに、これは、俺たちの使わないやつだから、みんな、自分の物は、予備と自分に合うようなものは、選んでおいてくれ」


げんきたちは、余っているし、それ以上のものをメインと予備があるので、無造作にポンポン出していたが、

げんきたちが出したのは、ダンジョンで、手に入れた全て魔法など何かしら付加されている物だった。


げんきが選んでくれ、と言うので、全員が、並べられている武器や防具の前に来て、手に取り、

マリアや元冒険者たちは、並べられている物が、普通の物では無いと気がついた。


みんなが、恐る恐る装備品を選んでいる中、

シャーリーが、弓を持って、げんきに近づいてきた。


「げんき様、少しよろしいでしょうか?」

「ん?何?」

「その、これは、間違ってなければ、オールドトレントの素材で作られた弓では無いですか?」

「ん?……惜しいね。それは、ジャイアントオールドトレントの弓だな。えーと、巨老樹の弓、亜神級だな」


げんきは、眼で弓を確認しながら、答えた。


巨老樹の弓ー攻撃力上昇、命中精度上昇、樹属性付加、樹属性矢生成。

(樹属性付加は、放った矢に木属性の効果が付加される。樹属性矢生成は、MPを消費することで、木属性の矢を作り出すことができる)


「……ジャイアントオールドトレント……嘘、じゃないですよね?」

「えっ⁉︎嘘じゃないよ」

「その、このような、貴重なものを使ってよろしいのでしょうか?」

「全然、構わないよ。えーと、まだ余ってたよな……ほい。あと、近寄られた時ように、ナイフみたいなものを選んだ方がいいと思うよ」


げんきは、同じ弓をマジックバッグから出して、シャーリーに渡して、軽く助言しておいた。


シャーリーは、震えている手で、弓を受け取り、ぶつぶつ呟きながら、ナイフを選びに戻った。


シャーリーが離れていくと、

今度は、レイラを連れたマリアが、げんきの元にきた。


「げんき様、これは何でしょうか?以前使っていたものより、明らかに、良いもののような気がするのだが?」


マリアが、見せて来たのは、大剣、槍、盾、鎧。


「えーと、象牙の大剣、象牙の槍、エレファントの象牙で作られてるやつに、えーと、山亀の盾、山亀の鎧、こっちは、マウンテンタートルの甲羅が使われてるやつだな。どれも亜神級だよ。流石に、良い目をしてるな」


象牙の大剣ー攻撃力上昇、打撃属性追加、重量変化。

(重量変化は、名前の通り、大剣の重さを変えられる)


象牙の槍ー攻撃力上昇、打撃属性追加、刺突大強化。

(刺突大強化は、刺したり、突いた時に、ダメージ上昇)


山亀の盾と鎧ー防御力上昇、魔法防御上昇、ダメージ反射。

(ダメージ反射は、所持している者がダメージを負わなかった場合には、攻撃してきた者にダメージが返っていく)


が付加されていた。

その事も、マリアに教えた。


「亜神級………その、私なんかが、使っていいのか?げんき様たちが使うべきだと思うのだが……」

「俺たち?俺たちは、自分の物は持ってるから、大丈夫だよ。ここに出したのは、申し訳ないけど、俺たちが使わない余り物だから」


マリアは、これまで自分の使っていた家宝の剣より、等級の高いものを余り物、と言われて、

これが余り物、と呟いていた。


「えーと、レイラのやつは、杖と服か」

「え、はい、そうです!私がいたことがある国の神殿の巫女長様が、持っていたのと同じ感じがしました」


レイラは、マリアに目をやりながら、げんきに持っていた杖と服を見せた。


「杖は、巨老樹の杖、服は、山亀の巫女服。杖はMP大上昇、魔力上昇、樹魔法強化だね。巫女服は、マリアの鎧と一緒の効果だな。防御力より魔法防御よりってとこだな。光と闇と聖魔法のスキルだと、杖の樹魔法がもったいないな……樹魔法のスキルブックあるから使って覚えてみて」


げんきは、余っていた樹魔法のスキルブックをレイラに渡して、スキルブックを使用させた。


「魔法のスキルブックなんて高価なものを、私が使っしまって、よかったのですか?正直、レベル2ですし、戦闘の自信がないのですが……」

「別にいいから。自信は、戦っていったら、つくよ」


レイラは、はぁー、と言いながら、まだ、ぶつぶつ言っているマリアを椅子に座って、話しかけていた。


その後、げんきたちの会話を聞いて、並べられている物が、貴重なものだとわかり、みんな遠慮していたが、げんきたちに、大丈夫、と言われて、みんな、自分に合うものを選んでいった。



「みんな選び終わったみたいだね。なんか申し訳ないんだけど、全員分のマジックバッグはないんだ。ダンジョン組は、それぞれ、メインとサブの武器と防具は、身につけておいて、予備は、部屋にでも置いておいてくれ。メイドのみんなは、いざという時に、持ち出せる場所に置いておいてくれ」


楓たち以外は、全員分のマジックバッグも用意するつもりなの?と疑問を浮かべていた。


メンバーが選んだメイン武器は、


レイラ、マリア、シャーリーは、げんきに持って来ていた物。


アスカは、象牙の双剣。付加は、攻撃力上昇、打撃属性追加、斬撃大強化。


シャルとドリィのドワーフ2人は、アダマンタイト製のハンマー。付加は、攻撃力大上昇。


イリー、エリーの調薬師2人と元冒険者のアリソンは、レイラと同じ巨老樹の杖。


ミカと元冒険者チャイは、マリアと同じ象牙の大剣と槍。


サブ武器は、それぞれが使えるアダマンタイト製の攻撃力大上昇の剣やナイフ。


防具は、


レイラとマリアは持って来ていた物。


ミカとチャイは、マリアと同じ山亀の盾と鎧。


残りのミカとチャイ以外は、象皮の鎧一式。

付加は、防御力上昇、魔法防御上昇、ダメージ軽減。


メイドたちは、

メイン武器は、アダマンタイト製の剣や槍。

サブ武器は、アダマンタイト製のナイフ。

防具は、メイド服があるので、要らないとはっきりと言われて、何か危険を感じたら、街で売ってるローブや革鎧を着ることになった。


「あと、マジックバッグは、とりあえず、各パーティーの俺たち以外に、武器なんかを入れる用に一つずつ、メイドたちには、物を入れるのと武器なんかを入れておくのを一つずつ用意しておいたから、使ってくれ」


げんきは、ファレスノ大森林で手に入れた中サイズのマジックバッグを4つ取り出した。


「打ち合わせは以上かな。朝ごはんを食べた後は、ダンジョン組は、お昼ごはんまでに、パーティーで打ち合わせして、武器なんかのことを整理しておいてくれ」


げんきは、マジックバッグをセラに2つ、マリアに1つ、アスカに1つ渡して、打ち合わせを終わらせた。


その後、メイドたちが用意してくれた朝ごはんを食べて、

げんきは、楓と椿とダンジョンでの事を相談して、

パーティーの打ち合わせに向かった。



「鉱石の亜神ダンジョンだけど、今日は、みんなが、どれくらいやれるかの確認だから、気合いを入れ過ぎないようにね」


集まっていたメインパーティーのメンバーは、マリア以外緊張していたので、げんきは、硬くなり過ぎないように、優しく言った。


「確認だから、一階から十階は、階層の2倍のレベルのゴーレムしか出ないから、マリアは攻撃しないで、メンバーを守ることを優先して、他のメンバーが、ゴーレムを倒すようにしようか」

「わかりました」

「今日、俺は、誰かが危なくなったら、助けには入るけど、基本的に、何もしないから、リーダーは、マリアね」


楓と椿と話し合って、3人は、今日は、みんながどのくらい出来るのかをチェックすることにして、基本的に、何もしない、と決めていた。


「えーと、私は、攻撃しないで、みんなを守って、リーダーとして、指示を出すのですか?」

「そういうことになるな」

「そうですか……どのくらいまで、進む予定ですか?」

「出来ることなら、10階のボスは倒したいかな」

「げんき様、流石に、初日から10階は、無理だと思います」

「まぁ、10階は、希望だから。それに、晩ごはんは、家で、食べる予定だから、遅くまでは、籠らないよ」

「そ、そうか、わかりました」


マリアは、自分以外が低レベルで、昼から、晩ごはんまでの時間で、10階のボスを倒せるわけない、と思いながら、げんき以外のメンバーで、配置や動きなどを話し合っていった。


げんきは、その様子を、ピーチをブラッシングしながら見ていた。



そして、早めのお昼ごはんを食べ終わって、

ダンジョン組は、防具を装備して、家の前の噴水に集合した。


「じゃあ、行こうか。ピーチたちは、お留守番よろしくね」


げんきたちは、ピーチたちに手を振って、家を出て、メインストリートの逆方向に進んでいった。


元々、げんきたちの家は、ダンジョンに近いところにあるので、歩いて、五分くらいで、鉱石の神ダンジョンがある高い塀に囲まれた場所に着いた。


検問や検査などは無いので、

げんきたちは、真っ直ぐ鉱石の神ダンジョンの左右にある左側の鉱石の亜神ダンジョンに向かった。


ルスツ王国のダンジョンは、ダンジョンを高い塀で囲んで、領軍の兵士が駐屯しているだけだが、

他の国では、検問や検査を受けないといけなかったり、お金を支払わないといけなかったりする。


「みんな、準備はいい?とりあえず、人が少なかったら、一階で、肩慣らしするからな」

「了解です」×多

「じゃあ、入ろうか」


鉱石の神ダンジョンと亜神ダンジョンは、山の麓にある洞窟が、入り口になっていた。


げんきたちは、椿が先頭に立ち、最後尾にげんきが付き中に入っていった。


「洞窟の中みたいだな。にしても、人が多いな……みんな!人が多いから、二階に向かうよ!」


げんきは、マップで、10組以上が一階にいるのを確認して、二階層に向かう事ににした。


げんきたち一行は、階段に向かう途中に、ゴーレムと戦っている探索者のパーティー3組を見かけただけで、ゴーレムと戦うことなく、二階層に行く階段に10分くらい歩いて着いた。


でも、結局、探索者パーティーが9組いて、3階層に向かい、同じ理由で、4階層、5階層と進んで行き、

げんきたち以外が、不安になり、でもゴーレムとは出会わないと、不思議な感覚になりながら、

6階層に到着した。




「おっ!探索者パーティーは3人組が1つだけだ!色々と予定通りには行かなかったけど、少し休憩したら、この階層で、戦ってみようか」


げんきたち一行は、少し休憩して、げんきのマップによる案内で、一体ゴーレムを発見した。


ゴーレム レベル12

2メートルくらいの岩で出来ている人型モンスター


「最初は、メインパーティーで倒してみて」


げんきの言葉を聞いて、

マリアが、ゴーレムの前に行き、大剣を盾にぶつけて音を立てて、ゴーレムの注意を引いた。


マリアは、ゴーレムの遅く重たい攻撃を軽く避けながら、メンバーに指示を出していた。


マリアの指示で、シャルとドリィが、左右から、ゴーレムの足をハンマーで殴り、

シャーリーが矢を放ったが、ゴーレムのいた場所をすり抜けてしまった。


シャーリーの矢がゴーレムに当たる前に、シャルとドリィがゴーレムに追撃をして、倒してしまった。


「げんき様、ゴーレム倒しました」

「やったー」


シャルが、げんきに報告して、ドリィが喜びの声を上げると、

シャーリーは、苦笑いして、

他のメンバーは、喜んでいた。


げんきは、弱過ぎないか、ゴーレム、と思っていた。


その後、げんきの案内で、ゴーレムと遭遇して、楓と椿無しの第2パーティーにゴーレムと戦ってもらったが、大して変わらない結果になってしまった。


げんき、楓、椿は、二回目の戦闘が終わって、このままだと、戦えるのかわからない、と話し合い、

次の階層に行く事にした。


でも、7、8、9階層で、同じように一回ずつ戦ってもらったが、結果は同じ。

前衛が攻撃をして、追撃をすると、ゴーレムを倒せてしまった。

後衛が、何もする必要のないまま、戦闘が終わってしまい、後衛の力が、全くわからないままだった。


同じ階層に来た事のあるアスカ、ミカと別の亜神ダンジョンで戦った事のあるマリアは、順調過ぎて、逆に不安になっていた。


3人は、しきりにげんきたちを見て、

大丈夫なのか、このままでいいのか、と聞きたいが、

3人が話し合っていたりしたので、聞けていなかった。


結局、げんきたち一行は、マリアが無理だと言っていた10階層に2時間と少しで、到着した。



「うーん、ボス部屋の前に2組のパーティー、その手前に2人組がいるな。これならいいかな」


10階層に着くと、

げんきは、マップで、人を確認して、大丈夫だろうと判断して、近くにいたゴーレムに向かった。


「とりあえず、さっきまでと同じでいいから、戦ってみて」


結果は同じ。

メインパーティーも第2パーティーも、今までと、全く変わらなかった。


「どうする?」


げんきは、隣にいる楓と椿に聞いた。


「とりあえず、前衛は攻撃しないで、後衛だけで、倒させるしかないと思いますよ〜」

「渡した武器が良過ぎたんだね。今更、弱い武器渡すのも、なんか変な感じだしねー」

「防具の具合も確かめる予定だったけど、無理そうだな。とりあえずは、楓の案で、やってみようか」


げんきは、決まったことをみんなに伝えて、

近くにいるゴーレムに案内した。



「私が前に出る!後ろは任せた!」


マリアは、シャルとドリィに後衛の守りを固めるように言って、ゴーレムの前に出た。


シャーリーは、マリアに当たらないように、矢を放っていた。

ゴーレムに矢はダメージが通りにくい、と言われているので、大したダメージは与えられていなかった。


シャーリーがチクチク攻撃している間に、イリーとエリーが、スキルレベル1の水魔法のウォーターボールを詠唱して、ゴーレムに放ち、ウォーターボールを受けたゴーレムは、倒された。


レイラは、直接攻撃はしていないが、光魔法のライトで、ゴーレムの周囲を照らして、ゴーレムの動きを見やすくしていた。


「中々、良かったよ。次からは、自分たちで、後衛も戦闘に参加出来るように、調整してやってみて欲しいかな」

「わかりました」


その後、第2パーティーでも同じ感じだったので、

げんきは、後衛の攻撃だけでも、レベル20のゴーレムを倒せるのが、確認出来たので、マリアに調整してみて、とお願いした。


マリアは、他のメンバーと話し合って、色々試してみることにした。


げんきたち一行は、げんきの案内で、ボス部屋に向かいながら、遭遇したゴーレムを交互に倒していった。


メインパーティーは、途中からは、マリアは指示するだけで戦闘させてみたが、問題なく、ゴーレムを倒すことが出来た。



「邪魔だな」


げんきは、マップを見ながら、呟いた。


「どうかしたの〜?」

「いや、ボス部屋の前に4人組と2人組のパーティーが居るんだけど、どっちもボス部屋の前で、ずっとうろついてるんだよ」

「何がしたいのかな〜」


げんきたちの疑問に答えてくれたのは、マリアだった。


「多分、寄生だと思います」

「寄生?」

「はい。自分たちだけでは、ボスを倒せないので、ボス部屋に来たボスを倒せるパーティーと、臨時のパーティーを組んでもらって、一緒にボス部屋に入って、自分たちは何もしないで、ボスを倒してもらって、ボス部屋を通過する者たちを、寄生、と呼ぶのです」


マリアは、げんきたちにわかりやすく説明してくれた。


「寄生ね。そんなことして、なんか意味あるのかな」

「えーと、ダンジョンの階が進むごとに、モンスターも強くなりますけど、魔石の質やいい物がドロップするようになるので、稼ぎが良くなって、レベルも上がりやすくなります」

「なるほどな。なら、この2組は、寄生だろうな。無視することにしよう」


げんきは、疑問も解決出来たので、ボス部屋に向かった。


げんきたち一行に、ボス部屋の門が見えてきたら、

ボス部屋の前にいた2組が、げんきたちに近づいてきた。


「少しいいでしょうか?私たちと臨時のパーティーを組んで、ボスに挑まない?」

「俺たちと臨時のパーティーを組んで、ボスを攻略しないか?」


案の定、どちらも、寄生目的だろうな、とげんきたちは、思った。


「寄生か……臨時のパーティーなら、お前ら2組で組んで、ボス部屋に入ればいいんじゃないか?」

「それは……」


げんきの言葉に、4人組の方のリーダーらしき女は、口ごもってしまった。


「俺たちは、寄生ではない!ちゃんと、戦える!ボスに挑む用意はある!」

「寄生などと一緒にするな!」


2人組の少年2人は、げんきの寄生に過剰に反応していた。


「そうか。なら、さっさとボスに挑めばいいんじゃないか?待っててやるから、挑めよ。不安なら、丁度、臨時のパーティーを募集してるから、臨時のパーティーを組めばいいだろ」


結局のところ、2人組も寄生出来るなら、したいと考えていたので、げんきの言葉に、何も返せなかった。


「おい、どうした?さっきまでの威勢はどこに行ったんだ?やっぱり、寄生じゃないか。お前らが、ボス部屋に入らないなら、俺たちが、入るが、どうする?」


4人組は、ボス部屋の前から離れていき、

2人組は、黙って、げんきを睨みつけていた。


「道も開いたし、行こうか」


げんきは、2人組を一瞥して、ボス部屋の扉に向かった。


「無視するんじゃなかったの〜?」

「ん?あー、あの2人組、ルスツ王国の男爵の息子だったから、どんなもんか、試したんだよ」

「げんくんに、何も言い返して来なかったし、寄生だったよね〜。貴族の息子が寄生なんかして、大丈夫かな〜」

「威厳無くなるよねー」


げんきたち3人は、笑いながら、話しをして、ボス部屋の扉の前に着いた。


「貴族の息子は、しつこいな。まだ、パーティーを組んでくれるとでも思ってるのかな?」


げんきは、後ろから付いて来ていた2人組を一瞥して、ボス部屋の扉を開けた。


ゴーレムナイト レベル45 R

岩の剣と盾を持っているゴーレム


「おっ!レアボス!」

『ラッキー』

「うーん、レアボスだし、2組で、戦ってみて。マリアも攻撃していいから。無理そうなら、たすけるから」


げんきは、レアボスだったので、げんきたち3人を除く、全員で、戦わせることにした。


「わかりました。私とミカさんは、正面で、攻撃を防いで、チャイは、後衛の守り!他の前衛は、左右と背後から攻撃して、後衛は、ガンガン攻撃して!」


マリアの指示で、みんな動き出して、

マリアとミカが、正面に着くと、

一斉に、攻撃を開始した。


レアボスだと言っても、今までのゴーレムより多少素早いだけなので、マリアとミカは、攻撃を避けながら、反撃していった。


マリアとミカが終始、ゴーレムナイトの気を引いていたので、15分ほどで、ゴーレムナイトを倒すことが出来た。


今までで一番長く戦闘していたので、メインパーティーのマリア以外は、疲れて、倒れ込んでいた。

ただ、自分たちだけで、ボスを倒せたので、みんな笑顔だった。


部屋の中央に鉄製の普通サイズの宝箱が出現して、

倒れていたメンバーも立って、宝箱のところに行った。


げんきたち3人は、時間はかかったが、誰もまともに攻撃を食らわなかったので、いい感じかな、と話し合いながら、みんなが集まっている宝箱のところに向かった。


「何であけないの?」

「私たちは、配下ですから」

「いや、気にしなくていいから。それに、みんなが倒したんだから、開けなよ」


げんきの言葉で、みんながみんなに遠慮してしまい、

どうぞ、どうぞ、と言い合い、

結局、リーダーの役割を果たしていたマリアが、宝箱を開けた。


宝箱の中身は、ゴーレムナイトの剣と盾1つずつ、銀貨の入った袋4つ、小サイズの土の魔石5つ、少サイズの無魔石10個だった。


みんな、マリアが取り出した宝箱の中身を見て、

どこか満足気な表情をしていた。



「うーん、まだ少し早いけど、キリも良いし、11階の転移陣に登録して帰るよ」

「はーい」×多


マリアが、宝箱の中身をマジックバッグに入れると、

げんきたち一行は、11階層の階段を下り、転移陣に全員が登録して、一階層の入り口に転移した。




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