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短編集

いつまでも君と共に……


 君と出会って、一年目が経つ。


 もう一年も経つんだね。長かったようで短かった気がする。

 この一年、僕らはずっと一緒にいたね。

 

 去年の春の休日に僕らは出会った。


 君には沢山の選択肢があったけれど、その中から僕を選んでくれた。

 それからはずっと僕が君のパートナーだ。


 一度、僕の調子が悪くなった時は君は慌てて対処してくれた。

 あれは嬉しかったなぁ。


 君が選んでくれた僕の上着は、気に入ってずーっと着ているね。

 何よりも君自身が気に入ってたもんね。



 君が困った時はいつも僕を頼りにしてくれた。

 毎日の朝も君を僕が起こしてきた。


 君も僕が働き続ける為に力を貸してくれたよね。


 これからもずっとよろしくね?



 ◇ ◇ ◇



 今日で出会ってから一年半くらい経っただろうか。


 僕はなんだか調子が悪い事が多くなってきた。

 気が付けば意識を失っている事がある。


 どうしてだろう?

 毎日ちょっと働きすぎたのかな?


 それでも君は、僕を見捨てたりはしない。

 君は仕方ないなぁと言いつつも僕と共にいてくれる。


 時には君は道具を使い、僕が働き続けられるように支えてくれた。


 不甲斐ないとは思っても自分ではどうにもできないから、ほんとごめんね?


 


 ◇ ◇ ◇



 あと一ヶ月で二年目。

 そんな時、君の様子は変わった。


 あるメールを見た時から僕の扱いが雑になった。


 ちょっと待ってよ。

 僕の事はもうどうでもいいの?

 これまでの約二年はどうでもいいの?


 確かに、最近は前にも増して調子が悪いよ。

 気を失う頻度も増えてきている。


 それでも君は一緒にいて、支えてくれたじゃないか!

 僕だって君の為に色々とやってきた!


 君が困った時は解決策を探す手伝いをした。

 一人では起きれない君を毎朝起こしたのも僕だ。

 楽しむ時は一緒に楽しんだし、辛い時も君は僕を支えにしていたじゃないか。


 僕を通じて、どれだけ多くの人と友人になったのさ!?

 僕がいなければ出来なかった事も多いはずだ!

 それなのに、そんな事は無かった事にするの!? 


 無理をしながらでも道具を使っても働いたじゃないか!?

 そもそも必要以上に酷使させたのは君じゃないか!?


 それでも僕は頑張ってきた!

 それなのに君は僕を見捨てるの!?



 ……いつも君は僕と共にいてくれるけど、僕の意見は聞いてくれないよね。


 君には相談出来る友達がいる。

 だけど僕にはそんな相手は存在しない。


 ……一体僕は何の為にこれまで頑張ってきたんだ……



 ◇ ◇ ◇



 遂にこの時がやってきてしまった。

 君はもう僕を見捨てる決意をしたんだね。


 明日が来れば、もう僕は君の隣に居られなくなる。


 僕と同じ立場だと君はどうするのかな?

 捨てられる自身を素直に受け入れるのかな?

 それとも腹を立てるのかな?


 ……君には分からないんだろうね、僕の気持ちは。


 ……僕にも君の気持ちは分からない。


 だけど、僕は君と共にいたい。

 たとえどんな事をしたとしてもーー



 ーーこれで僕は終わりだけど、君も一緒だよ?



 ◇ ◇ ◇



 あるニュース記事にてーー


 アパート火災で一名死亡。火事の原因はスマートフォンか?


 XX日深夜、◯◯市◯◯区で発生した火災で、火元と思われるアパートの二階の一室に住む二十歳女性とみて身元の確認を進めています。

 同日午前3時頃に、同アパートの住人が異常に気付き消防へと通報がありました。

 火はすぐに消し止められ、現場検証の結果、火元はスマートフォンではないかと推定されています。




 また別のニュース記事にてーー


 ◯◯社製スマートフォン『✕✕✕』バッテリー発火の恐れ、交換対応を開始


 20XX年3月に発生した『✕✕✕』のバッテリー発火による火災事故で、バッテリー及び基盤に異常があると特定された。そのため20XX/04/04より同機種のバッテリー及び基盤の交換・回収となった。

 以前よりバッテリーの異常の報告されていた機種ではあったが、20XX年3月以降に同様のバッテリー発火による火災事故が多発。ようやく原因の特定に至り、今回の交換・回収となった。


 現在のままを継続使用すると発火に至る可能性があるため、ユーザーには早期の新型バッテリーと基盤への交換を推奨している。また、基盤にも異常があるため交換までの間は電源を切っておくことも合わせて呼びかけている。



 



 

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