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2人の狙撃手  作者: 三歩
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~中継基地~4戦目

 青年の瞳、少女の瞳。互いが右の目を青と赤であった。しかし今は、2色の瞳を持っていた。青年は右の目を青く、左の目が新たに赤い。少女は右の目を赤く、左の目が新たに青い。


 兵士を統括する、1人の兵士が唾を飲み込む。


「・・・う、」



 カチカチと鳴る歯軋りをこらえ、声をあげる。


「撃てえええええぇぇぇぇぇ!!!!」


 バラバラに、兵士たちが引き金を弾く。青年と少女は駆け出す。少女はマシンガンを手に持ち、兵士達を撃ち抜いていく。青年は足元に倒れる兵士からマシンガンを奪い、少女に続く。


 屋上でライフルを構える、青い両目を持つ兵士2人。スコープで補足しようと焦るが、見えるのはただ、味方である兵士が次々と倒れる姿。その中、いよいよ戦車が外へと出てきた。


「あそこだ!」


 戦車の近くにいた兵士が、戦車へと大声で指示した。砲身がゆっくりと2人へと向けられていく。2人も戦車に気づいた。

 間へと標準が定まると、轟音と共に砲弾が放たれた。音速で飛ぶ砲弾が、地面を抉り、爆発する。爆風で巻き起こった砂埃と熱風が、周囲の兵士を巻き込む。だが、その苦しさよりも勝利を確信したことに心を誰もが躍らせた。


 しかしその希望は、煙の中から銃弾が再び放たれると掻き消された。兵士達は撃ち返すのに必死だった。しかし、こちらの弾は当たらず、煙の向こうから放たれる弾は、確実に仲間を撃ち抜いていく。戦車が照準をもう一度合わせる。

その合わせた目の前に、煙から飛び出した少女がこちらへと向かってきている。落ち着き、冷静に、戦車を操る兵士達は呼吸を合わせ、装填までを終えた。引き金を引けば、確実に爆風だけでも倒せる。

少女は進行方向に仰向けで倒れている死体に目を向けた。その腰から、何かを掴む。


「標準よし!」


「撃てぇっ!!!」


コックピット内で、合図を掛け合う。そして、少女はピンを抜いた手榴弾を投げた。砲身の中へ、手榴弾が吸い込まれていくように入った。


カラン、という乾いた後に首を傾げた兵士達だが、引き金は引かれていた。

手榴弾の破裂と共に、火薬の詰まった砲弾が車中で弾ける。分厚い装甲を覆われた戦車だが、砲身、ハッチ、接続部位が高温に熱され、火を吹き上げた。

燃え上がる戦車を通り過ぎた少女は、次の戦車ヘとむけて駆け出した。


基地屋上にいる2人は、照準をただ構え続ける。すると、戦車の側に少女の姿を見つけた。すかさず2人は照準を少女はと向け、1人が撃つ。

すると、1発目の銃弾が、空中で弾けた。


青い目をした兵士2人は、目を疑った。スコープの先を別の場所に向けた。そのスコープに映っていたのは、ライフルを構えていた青年。構えを解くと、少女に向けていた視線を、2人に向けた。赤い瞳と青い瞳がこちらを見ており、青年の口元が緩む。

目を少し細め、青年は笑っていた。余裕だと捉えられる笑み。2人は、わかりやすくも歯軋りをしてしまう。初めて感情が表に出た。

 少女は戦車を破壊後、再び銃を構え、地を駆け巡りながら、敵と応戦する。引き金を弾き続け少女を倒そうとするも、抵抗むなしく兵士達は倒れていく。いよいよと敵の攻撃が加速するタイミングで、青年が後方よりライフルで援護し、危機を取り除く。

燃え上がる戦車は、まだ火の勢いが衰えていない。門から出てきた兵士と兵器。そのほとんどが、活動を終えて大地に転がっている。そして、2人は解放されたままの門へと入っていく。

施設内に入ると、やけに眩しく感じた。2人が入る門に向け、ライトが集中して向けられているからであった。中にはまだ、兵士達が残っていた。戦車も数を残しており、入り口に銃口や砲身を向けている。


「うう動くな!!!ててて抵抗の動きを見せれば、すすぐに撃つぞ!!!」


その兵士達の中から、メガホンを手に叫ぶ兵士がいた。シワの目立つ老兵に見え、胸にはいくつか勲章のようなものが見える。青年と少女はひとまず足を止め、銃も構えることなく立っていた。抵抗の様子は無いのだが、囲む兵士達は気が気でなかった。兵器を、そしてあの大勢の仲間を、たった2人で倒した相手が目の前にいる。この時は2人を殲滅する目的を、皆共通で行動をしている。

同時に、その手に持つ武器を捨てれば、助けてくれないかという希望。老兵の声が、唯一兵士達を戦場に立たせている。


「な、何が目的だ!!我々の基地を襲撃し、仲間を、殺して!!」


老兵は人差し指を、2人に向ける。


「その目は紛れも無い!あの施設から脱走した2人!かつては我々の兵器として戦っていたはずだ!!!何故歯向かう!一体何が!!お前達にそうさせるんだ!!」


老兵は叫んでいるだけでなく、質問を投げかけていた。しかし、2人は無言。それでも、剣幕は険しく見える。


「この基地を制圧したとて、何も無いぞ!僅かな兵器と、人員を減らすだけ!!これしきの事では、我が軍の力は衰えぬ!!!」


腕を振り、腕を掲げ、必死に抗議する老兵。次に、屋上へと指を差した。


「お前達ももう見ただろ!既にお前達と同じ兵器は完成した!この戦争は、我々が勝利も同然!各国の抵抗はもはや無意味!貴様らとて、勝てるわけもなかろう!」


 思いつく限りの言葉を、まるでマシンガンの如く言い放つ。すると、青年が口を開いた。


「おい。」


 たったそれだけの言葉が出たとき、周りの兵士が一斉に体を強張らせ、銃を再び握り締める。漏れず老兵も、


「っひ」


 微かな悲鳴をスピーカーが拾い、慌てていた。青年も少女もその動きに対し、武器を構えることは無かった。


「巣は何処にある。」


「・・・え。」


「お前達が守る建物だ。」


「そ、そこを知ってなんとする。」


「壊す。」


「こ、壊すだと??」


「跡形も無く。全ての設備を、人を。そして、『俺達と一緒に生まれた奴ら』も一緒に。」


 青年は建物の屋上を見た。


「勝負だ!!俺とお前達、2対1でだ!」


 突然大きな声を出し、青年は屋上にいる男2人に挑戦を挑もうとしていた。地上にいる兵士達は騒然とする。屋上の2人は覗かず、声だけを聞いていた。両方、いつでも撃てるよう装填し、機を窺っていた。


「挑まなければそれでもいいさ!だがな、お前達ならわかるはずだ!この今基地内にいる奴ら、兵器に!俺達は、殺せない!」


「なっ・・・!」


 老兵は目を見開き、唖然とする。


(な、何を馬鹿な!いくらなんでも、お前達が不利なはずだ!こちらにはまだ戦車が残ってる!人もだ!それに、屋上の2人がいるだけでも、大きくこちらが優位!何故ここまで大口を叩ける・・・!)


 思考をめぐらせている老兵は、視界が一瞬暗くなるのに気づいた。


「・・・・・・・・・?」


 何が起きたか分からなかった。しかし、自分の目線が先程よりも地面に近くなる。というよりは、顎がコンクリートに付けられていた。同時に、頭に冷たい感触が一部あった。腕を少し動かそうとしたが、背中に回っていた。


「は?え?」


首を僅かに動かせば、何故か兵士達が自分の上に向けて銃口を構える。僅かに後ずさりしながら。倒れる老兵の背中の上には、腕を押さえる少女がいた。老兵の後頭部に銃を突きつけ、上から見下ろしている。


「い、いつの間に・・・!」


「いいよ。」


 少女は青年に一言送った。


「ああ。」


 青年も一言で答えた。


「え、いや、ちょっと。」


 とんとん拍子で進む状況に、老兵は慌てだした。


「な、何を勝手にしている!私を殺せば、お前達も」


「わからない?」


 耳元に、吐息が当たる距離で少女の声が聞こえた。 


「もう皆、引き金から指を離したよ。死にたいなら、もう一度口を開くといいよ。」


 少女が答えを教えてくれると、老兵は体中に巡る血の気が冷える感覚に襲われた。答えどおり、兵士達は銃口を降ろしていた。勝てないとわかったから。

 青年はその場を少女に任せたまま、上を向いていた。後残るのは、屋上にいる兵士2人。こちらの回答がくるのには、時間はかからなかった。屋上の端に、2人がやってきた。屋上は暗闇だが、青い両目は光っている。対峙する3人の間には、いつの間にか風は吹いていなかった。空にある雲も晴れ、月明かりが見える。

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