〜中継基地〜1戦目
暗闇が広がる世界に、灯りが灯ってる。起伏のある荒れた大地が光に照らされており、広範囲の地形が見渡せるほどに、大きな灯り。
荒野の中に見えていた灯りの正体は、青年と少女が探していた中継基地。人の背と比べて3倍ほどの防壁。有刺鉄線を張り巡らせ、ゲートは鉄門で区切られている。地上には戦車や武装四駆車が配備され、ヘリポート、軍事兵器格納庫も設置してある。少し背の高い山には監視塔が複数建ち、肉眼でも互いの建物が把握できる距離で統一されている。外端にある監視塔に兵士は2人ずつ、内側に高い方には1人体制で、常に周囲の警戒に当たっていた。基地内、また監視塔にはサーチライトが設置。階段付近を照らす常夜灯を設置されている。
その配置を、遠い砂山の間から覗く者がいた。双眼鏡を覗くのは、あの青年。帽子とマスク、ゴーグルをかけ、青年はただ1人基地を見ている。
「流石は要となる場所。軍備や兵力は妥協せず。ここにいても兵器の駆動音が聞こえる。」
しばらく監視を続けた後、スコープを腰のホルダーへとカラビナで接続する。腹ばいのまま後退し、ある程度山から滑るやうに降った後に中腰で立ち上がる。そして、右手を上げた。青年が眺めている離れた先に、マントを羽織り、フードを被る少女がいた。少女はスコープを覗いており、青年の信号を見た。
「開始。」
それを合図に、少女は駆け出した。手に持っていたスコープ付のピストルを腰のホルスターへと戻す。向かうのは、一番少女から近い監視塔。小屋付きの監視塔の外に出ているのは、2人の兵士。1人は別方向へと視線を向けており、少女はその兵士1人の視線のみに警戒する。
僅かに兵士の視線が変わる瞬間を目掛けて、砂山の影を利用しながら接近する。やがて上から眺める死角が最後となとなった窪みに身を伏せ、一度音を殺した。息を止め、目を閉じて、音に集中する。それから少しして、状況が変化した。
「がっ!!!」
伏せる少女の耳に、悲鳴が短く聞こえた。
「どうした!」
別の声が同じ方向から聞こえた。その声が聞こえた瞬間、一気に少女は飛び出す。目指していたのは、監視塔。距離は決して近くはない。だが、少女も青年も、兵士に見るから前に間に合うことは確信していた。
初速から地を跳ね出し、一気に駆けていく。マントが浮き上がりたなびく。監視塔へと辿り着き、螺旋階段を登れば上へ登ることが出来る。しかし少女は別の方法を持っていた。到底階段を使わなければ届かない高さ。少女はゴツゴツとした岩場へと足をかけ、跳躍する。まだ監視塔には少し距離を残している。だが、浮き上がった体は更に空中を昇り、監視塔の高さへと到達していた。少女は腰の後ろへ手を回す。目の前に映るのは、ヘルメットが吹き飛び頭部から血を流す兵士を抱える、あと1人の兵士。目のあった兵士の顔は青ざめ、驚愕の表情を浮かべてる。
少女は拳銃を抜き、兵士へと構えた。
「ばっ!」
声を発すると同時に、拳銃から放たれた銃弾が兵士の眉間にヒットした。ライフルと拳銃に装着されたサプレッサーによる消音効果によって、この光景は2人しか知らないものとなる。監視塔の上階へと着地し、次の監視塔を見る。監視塔のライトの照準をズラす。元ある場所をまっすぐ辿ると、別の監視塔、その更に奥を見ると、基地がある。サーチライトの角度が動いたのを確認した青年は、次の監視塔へと標準を向ける。少女もまた監視塔から飛び降り、次のターゲットへと駆ける。
すると、目指す監視塔の兵士が何かに気づく。
「ん?」
視線の先に見えるのは、少女がいた監視塔。階段付近と見張り台は照らされてるが地は暗闇。
「おい。7番塔に監視兵が見当たらない。」
「なに?」
すぐに兵士は、後ろにいた兵士にも声をかけた。兵士2人は注意を7番と呼ぶ監視塔に向けており、背後の手すりに手を掛け、静かに着地した少女に気付かない。
「何してるだアイツらは。ひぐぅっーー」
「無線を繋げて確認しよう。」
前に立つ兵士が振り返ると、口を抑えられ、首元をナイフで切られる兵士が目の前にいた。
「なっーーがはっ!!」
蒼白した兵士は、次の瞬間右のこめかみから撃ち抜かれた。意識がまだある切られた兵士は背中から倒れる。首から血を流し、激痛の中で少女の顔を見た。
「か、、、ここ、、、なぜ、、、いる!」
「貴方達が守るものを壊すため。ごめんね、すぐに殺さなくて。」
少女は膝をつき、ゆっくりと兵士の額に銃口を突きつけ、引き金を引く。ビクンと兵士の体が跳ね、最後は力なく体が伸びきる。その光景は、青年も見ていた。ほんの少しだけ目を細め、目を瞑る。数秒して再び目を開く。
「さあ、次だ。」
そばにいる誰かでなく、聞こえるはずのない少女に声を掛けた。少女も目を閉じていたが、目を開くと再び立ち上がる。
刹那、兵士を見ていた少女が顔を上げ、基地を見る。慌てた様子で床へはいつくばるようにしゃがむ。遠くから聞こえた銃声。そのわずか1秒足らずで少女の顔があったであろう柵の部分に、銃弾が当たる。
青年は少女の異変に気付く。