深海
みなさん、今日はお集まりいただきありがとうございます。
みなさん、と言っても3人だけなのですけれど…
まぁまぁ、そんな怖い顔をしないでください。
ところで、みなさんはあの殺人事件を覚えていますよね?
もう、5年くらいは経つでしょうか…
未だに迷宮入りの、あの事件です。
とある女性が崖から突き落とされて死亡した…死体は海に流されてしまい、今も行方はわからない…
え?自分は関係ないと? ははは
面白いことを言いますね。
まぁ、それは後ほど聞きましょう。
今日は、その事件について教えてほしいのです。
なぜ、女性は殺されなければいけなかったのか。
なぜ、女性は殺されたのか。
殺したのは誰なのか。
まずは、池田 正博さんからお願いします。
俺と鶴芽 稜子は、元同僚の関係にありました。
仕事の事以外で話したことは一度もありません。
でも、鶴芽さんは男子と女子 ともに人気者でした。
優しく仕事ができ、人付き合いもうまい…そんな方でした。
だから、なぜ殺されたのか俺には全くわかりませんでした。
でも、今思えば誰かしらは鶴芽さんのことを嫌っていたのかもしれない。
ある女子とかね…
一度だけ、見たんです。
鶴芽さんが課長に褒められている時、賀川さんが恨めしそうに鶴芽さんのことを見ていたのを。
本当に怖い目でした。背中がゾクっとしちゃいましたよ。
だから、もしかしたら犯人は賀川さんじゃないかと思います。
それでは賀川 麗華さん、次お願いします。
私と鶴芽さんは、仲の良い友達でした。
私は名前のせいで散々、いじめられてきました。
麗華…なんてそんな いかにも美しい名前をつけられたばかりに、いじめられたんです。
まぁ、見ての通り そこまで美しい顔じゃないですし…
それでも、鶴芽さんだけは私をいじめず 友達になってくれたのです。
あれは確か、大学生の頃でした。
そして、私は決めたんです。
鶴芽さんと同じ職場で働きたいと。
もう、本当に頑張りましたよ。
でも、もう1人…鶴芽さんと同じ職場に就きたいと頑張っている人がいました。
森岡さんです。
私、思いました。
あぁ、この人は鶴芽さんのことが好きなんだって。
だからこそ、鶴芽さんの事を殺しちゃったと思うんです。
え、理由?そんなの簡単ですよ。
鶴芽さんは事件が起きる1週間後に結婚をする予定だったんですから。
うーん、もう矛盾が生じてますね。
それでは最後に、森岡 隆さんお願いします。
確かに私は鶴芽さんに多少の好意はありました。
それでも、私とは不似合いだと とうの昔に諦めていました。
職場に就くために頑張っていたのは事実です。
でも、それは鶴芽さんが理由ではありません。
母のためです。
元々、父親はいませんでした。
しかも、母は病弱でした。
大きくなるにつれ、母を守れるのは私だけだと身を粉にして頑張ってきました。
鶴芽さんの職場は、収入がとても良いから。
それにもう母は病院に入院していたので、金が必要だった。
それだけのことです。
好意があるというなら、池田さんじゃないですか?
鶴芽さんのことが前々から好きだと、飲みに行った時 言ってましたよね?
みなさん、お話どうもありがとうございました。
みなさんがみなさん、疑っているようですね。
今度は僕の番でしょうか。
本当は、全て知っていたんです。
そして、今確信に変わりました。
犯人はあなた達全員だ。
あるところに1人の女性に好意を抱いている男性がいました。
それでも、その女性は結婚をするらしい。
そこで、それなら殺してしまおうと決心しました。
あるところに1人の女性を嫌っている女性がいました。
理由は簡単。自分よりも美しいから。
そして、好きだった人もその女性を好きになってしまった。
そこで、許せなくなり 殺してしまおうと決心しました。
あるところに1人の女性と同じ職場で働く男性がいました。
その男性はお金が必要でした。
そこで男性は職場のお金を盗みました。
それを女性に知られてしまった。
そこで、殺すしかないと決心しました。
3人の考えは一致しました。
後はわかりますよね?
え?警察?ははは
呼びませんよ。彼らはあてになりません。
そうだ。1つだけ…
稜子は、僕の妻になるはずだったんです。
今も深海の底で眠っているでしょうか。
僕の迎えを待っているでしょうか。
僕はこれで、この部屋から出ます。
あと、1分くらいで毒ガスが撒き散らされますが 頑張ってください。
それでは…稜子によろしくお願いします。