Gと黒いGの違いに気付きました
昔クラスメイトの島さんこと
志島 洸夜に言われた事がある。
「悠介はもう少し考えてから行動した方が良いと思うんだ…」と
苦笑しながら
そのイケメンスマイルを崩す事なく。
今その意味が本当に分かった。
俺は現在
木々の間から夕陽の淡い光が差し込む山の中を激走していた。
なぜか?
あのクソゴブリンが前に会った場所に居なかったのである。
普通の戦闘でも瞬殺だと思えてた所為で
闇魔法のペイントを付けて無かったのだ。
母に宣言してしまった手前
手ぶらで帰れない!
すぐに空間魔法の感知を使い
感知の範囲内に居る人影を探し
3匹ほど捕捉したのだが
どれが件のゴブリンなのか判別が付かないので
1匹、1匹当たっている最中なのだが…
先程1匹倒したが
あのゴブリンではなく
普通の薄汚い緑色のゴブリンだった。
前回同様に後ろから首を狙ったのだが…
『ゴクッ』っという感触と共に普通に死んだ。
あっさり死んでしまったので
そのまま放置する訳にもいかず
火魔法で骨まで残さず消した。
その時火魔法スキルを習得出来たのは嬉しい誤算だったが…
そしてふと思い出した。
焦っていた事
探していたゴブリンと違った事
一撃で死んでしまった事で
ゴブリンの死に何の感慨も浮かば無かったな…
あ!
手土産忘れた!
今回はもう遅いので
次のゴブリンでラストにしようと思う。
黒であれ、緑であれ流石に家で母が待っているんだ。
ん?もう1人?母以外には居なかったと思うけど?
激走の結果
そこにはスプラッターな衝撃的シーンが俺の目に映った。
お食事中であったらしい。
仕方ないので
俺はそのまま木陰に身を細め食事が終わるのを待った。
ほら最後の晩餐とか言うじゃん?
俺も走ってた所為で疲れてるし…
息整えなくちゃ…
…
…ダメだ。
見てなくても音で容易に想像できる…。
蜂の件も俺に補足説明とばかりに脳裏に過る…。
俺は余りこういうのは好きではないのだ。
前世で慣れよう!と思って
今では見たところで気分が地に堕ちるぐらいで済むんだけど
今回の様に生きたままの状態を食うところとか…
殺されてる方が必死にもがいてる様とか…
それでも絶対的に覆らない差とか…
分かっている。
俺自身チートに成ろうとしている以上
弱者からしたら俺はあのゴブリンと一緒なのだ。
力を持つ以上そいつは弱者からしたら悪なのだ。
対抗しようとも出来ない
怖くて自分の意見なども言えない
だから言いなりになる。
生きたまま食われているのと変わらないじゃんか。
(同属嫌悪乙って感じだな…)
こんな言葉で思考が堕ちるのを食い止める。
(やらなければいけない事があるんだから…)
そうこうしていると
アイツの食事が終わった。
(そうアイツだ。)
俺は木陰から出て件の奴に瞳を向ける。
血溜まりの中、腰を下ろしている黒い塊。
(会いたかったぜ…
お前を殺して今日をハッピーバースデーにするんだからな…)
腰に差していた大人用の木剣と子供用の木剣を両手に構える。
大人用の木剣はまだ俺からしたら大き過ぎだし
二刀流なんてやった事無い。
と言うか剣術すら我流で真面目に他の人のを見た事すら無い。
だが
俺には『器用さ(極)』がある。
魔術師というジョブに就いた。
コツを掴むのとコントロール、テクニックに関しては
魔法スキル習得でお墨付きを受けている。
分野は違うが、まぁ大丈夫だろ!
今は速度も力も場数も劣っているから出来るだけ手数を多く!
(扱えなくてもぶん投げる事ぐらいは出来るからな!)
これが本音。
大、小の木剣を手に走り出す。
だが前の時と違い
ゴブリンが俺の存在に気付き
手元にあった棍棒を手に立ち上がり迎え撃つ様に構える。
俺は右手の大きな方の木剣を横から
対するゴブリンは俺の木剣など毛程も気にせず
俺を一撃で叩き潰そうと棍棒を上から振るう。
(力の対決じゃ負ける…なら!)
俺は木剣の軌道をゴブリン本体から棍棒へと替えて
そのままだと
木剣を棍棒との間に挟んだところで
プチュっと潰さて終了だ。
弾こうとしても跳ね返されて意味無いだろう。
木剣が棍棒に当たる瞬間
自ら威力を削ぎ棍棒へとアテる。
これでは防ぐ事は出来ない。だが逸らす事なら出来る!
川の流れを変える様に徐々に
決壊しないよう細心の注意を払いながら逸らす。
決死の逸らしと
半身であった体勢のお陰で
頬スレスレに棍棒が過ぎ去り地面へと落ちた。
(し、死ねる!
あんなの脳天に喰らったら本当にプチュッと逝く事が出来るって!)
棍棒が当たった地面が陥没している。
だが…今は好機!
すぐさま俺は左手に持っている木剣を逆手へと持ち直し
腰を捻じ切れんばかりに捻り
ゴブリンの顔へ木剣を入れる。
「あの時の仕返しだコノヤロー!!」
入れる際、接近し過ぎていた為
木剣の鍔の部分をトンファーに見立てて殴り飛ばした。
流石にカウンターの一発は効いたのか
元から歪んでいる顔はさらに歪み。
右へとフラつく。
逃さず攻撃を逸らした時に上げてあった右手の木剣の柄頭をゴブリンのこめかみへと叩き込む。
「ーーー!!」
声にもならない声を上げゴブリンは手から棍棒を落とし足元へと倒れ込む。
(終わらすかよ!)
追撃に回転を加えた左足でゴブリンの背に蹴りを入れた。
が
たかが5歳児であるのを忘れていた。
回転の入った蹴りは確かに普通に威力が乗り
5歳児の蹴りを超えてはいたが
ゴブリンの背に高いダメージを与える程では無かった。
倒れ込むゴブリンに蹴りを入れた左足が掴まれる。
「!!!」
ゴブリンの握力は万力の様で
そのまま足の骨が砕かれるかと思う程
だが握り潰すのではなく前方へと投げ飛ばされた。
(あはは〜俺よく飛ぶな〜…)
木々の枝が背中に当たって折れたり…
折れなかったり…
折れなかった枝の所為で
俺は空中で縦回転をするはめに…
けれど回転してくれた事で
当たったらヤバそうな枝を発見出来て
なんとか避ける事に成功した。
勢いが削がれてきた所で地面へと着地。
服が切れ、身体に切り傷や打撲が出来たが身体に異常は診られない。
すぐにゴブリンが居た方に視線を移すが木々が邪魔で見えない
空間魔法で探知してみると
(は?なんでアイツが逃げてんの?)
アイツが俺から遠ざかるのが分かった。
アイツを追いかけ様とした所で
辺りが暗い事に気付いた。
(あ〜帰ろうとしているのか?)
このまま追いかけたところでアイツが帰ろうとしている以上時間が掛かるし
戦う以上もっと掛かる。しかも…
(俺の帰宅時間も、もうヤバい)
仕方ないので
転移で家に帰ろうとする。が
(あ!お土産…)
そこから俺は暗い森の中を激走してゴブリンを探すのであった。
「うぉーーー!!なんで転移は見た事の無い場所には行けないんだーーー!!!!」
無事ゴブリンを探し出して瞬殺した後、家に帰ったところ
引っ叩かれ
あっちこっちの傷に心配され
服が切れてる事に小言を言われ
せっかく取ってきたゴブリンを捨てられた。
(小言を言ってるママも可愛いな〜)
シュンっとしてる態度とは裏腹に俺はそんな事を考えて居た。
その後
ちょっと豪華な母の手料理を食べて
俺の5歳の誕生日は終了した。
不定期なんっスよ!
自分はPVの重圧に耐えきったっス!
昨日凄く嫌な気分でしたったっスけど
レベルアップした気がしたっス!(レベルダウン?)