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69話


「ディルは…人間ではないわ…。残念だけど」


「人間ではない?…」


「正確には体は人間だが、神の力を持っているとだけよ…」


「神の?…どういうことだ?…」


「ディルは魂をその体に保存することができるの…魂、つまり一つの命を体に保存する…それは多くの犠牲もある代わりに、魂を救うことでもあるの…」


「魂を救う?…」


「この世界は死後、神によって天国やら地獄に行くなんて考えられているけれど、実際は何もないの。確かに神はいるわ…でも、興味がないことは干渉しないの。人は死ぬと、そのまま意思もなく何も感じることなくこの世界を彷徨うの。なぜディルが生まれたのか…それは「もうそれくらいでいいだろう…本題じゃ」


突然、アンカの喋り方が止まり雰囲気的に男に変わったようだ。


「ここまで聞けばいいだろう。しかし、先までの争いにディルは関係はない。知りたいのは、このアンカという幼子のことだろう。私たちは魂の存在だ。まあ、他の奴らより多少力が強いだけだが…

私たちは、とある杖に存在を。とある剣に力を封印されている。その杖と剣の所有者はディルだ。だから、我々の所有権もディルにある。このアンカという幼子は魂に関する力を持っている。おそらく、神じゃない何かの力がそうさせたのだろうが…ディルは魂を保存する。その義理ではあるが妹であるアンカは親和性が高いようで、ディルの保存した魂を体に目視できたり、触れたりする。」


「こ、この子は…しかし、ステータスにそんなことは書かれてなかったぞ!」


「ステータスは隠されているものもある。なんせ、最初からディルのステータスを見れていなかったではないか。この幼子の能力は『閲覧権限』だ。ジョブは『イタコ』だ。普通なら口寄せをしない限り、魂を体に憑依出来ないはずだが我々は少し破格でな。無理やりできるのじゃ…」


「そ、そうか…」


「わかったか?」


「理解は出来ないが、まあ、わかった。」


「わかったなら…いい。では、我々は杖に戻る。そこの黒馬に乗れ…」


そういうと、一瞬アンカの目が閉じ、再び開けられるとそこには純粋な瞳のアンカだった。アンカは不思議そうな顔で、ローズの首に抱きついてくる。


「何したの?…」


「なんでもないわ…アンカ。さあ、行きましょう」


首に抱きつくアンカの尻のあたりに手を当て、アンカを抱えて立ち上がる。すると、黒馬が膝を下ろし乗りやすくしてくる。そっと、黒馬に跨ると走り始めた。かなりの速度だが、もう慣れ始めた。追ってくるゴーストもいないせいか、風邪を切る音だけが聞こえる。



『つまらん。』


ゴツイ体の魔物や、不気味な魔物が次々と森からでてくる。しかし、出てきた瞬間に魔獣はただの肉塊になる。

それは門の前にいる青年の振るう槍の不可視の刃のせいだ。すでに何十、何百もの魔物の死体が転がりあたりを真っ赤に染めている


「大丈夫か?…ラスティ」


「大丈夫…」


「そうだ、保健室に行って魔力回復のポーションをもらってこようか?…」


「うん…光属性の…後光双葉のポーションを」


「わ、わかった。」


そっと、ラスティから離れ終生の森の門から学園に入っていく。正直、あのままあそこでガブリエルを見ていたら気が狂う…気分が悪くなってくる…

保健室といえば、確かかなりすごい保険医の先生と聞いていたな…あったことはないが。

ラスティを待たせていると思うと、自然と駆け足になっていく。気がつくと全速力で廊下を走っていた。

しばらく進んでいると、突然数名の悲鳴が聞こえて来る。進む先から聞こえるその声を警戒しゆっくりと進む。


グチャ…バァンっ…


廊下を曲がり、その廊下に保健室はあるのだが、その廊下から声や不敵な音が聞こえるので、壁に背を預けそっと顔だけ出し廊下を見る。すると、そこには逃げ惑う生徒の後ろから闇魔法だろう黒い何かを飛ばし殺していく少女の姿があった。その少女は一瞬で思い出した。なんせ、兄が命をかけてまで救おうとしディルの力がバレてしまった原因でもある少女だった。あまりにも悲惨な光景にカフはゆっくりと来た道を戻ろうとした。


「あれは…勝てない…あのガブリエルなら…」


そう思ったカフはゆっくりと廊下を戻ると、すぐに全速力で来た道を戻る。


「ん?…逃げたな…追うか」



しばらく黒馬に跨ってどこかよく分からない森を駆け抜ける。いつもは知っている道を通るのだが、ここまで獣道は初めてだ。しばらく走っていると開けた場所に出る。そこは進んでいた道をいつの間にか戻っていたようで、開けた先に出たと思うと、シリウスと離れた場所だった。そこには、燃え上がる剣を持ったディルが立っていた。その姿はとても勇ましく…そして…怖かった。


「ブルゥ…グゥ!」


ディルの姿を見つけた黒馬は、少しアゴを鳴らすとものすごい速さでディルに駆けていく。まるで大好きな主人に抱きつくように…ディル…この子は…

ディルは近く馬の気配に気づいたのか、顔を向ける。ものすごい速さで近く黒馬に手を少しかざすディル。黒馬は手のひらに当たるか当たらないかほどの距離で止まる。すると、ディルはそっと顔を撫でる。


「ディ、ディル!」


ローズはそっと黒馬から飛び降りると、ディルに近く。ディルは驚いたように目を見開き、固まるがすぐにいつものディルの姿に戻りローズの目を見てくる。


「お母様。このようなところで…」


「あなたこそ!ここで何をしているの!」


「それは…」

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