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66話 銀河

シリウスは見ている光景が理解できなかった。あの幼い頃から知っている、そして、その才能を誰よりも知っているはずだった。しかし、目の前のディルは、別人としか思えない。この時、シリウスの頭の片隅にあった一つの星と星が線で繋がれた。


「ディル…やはり…お主は『銀河』の一人なのか…」


「何を言っておる。あの小僧がか?…いや、まさか…そんなわけあるまい…」


「はははは!ディルを拾ったのは運命か!」


大声で笑うシリウスの声が戦っているディルにも声が聞こえる。ディルは正直なところ、シリウスが確実に立ち去ってから倒してもよかったのだが、シリウスですら倒せなかった魔族を俺が剣で倒したってのは少し無理があると思ったからだ。なら、火剣士の姿を見せれば納得してくれるだろう…火魔剣士の言い訳は巨万とある。


「笑っていないで、早く寄り道を済ませてください!」


「なんだってんだ!このガキっ!火魔剣だと?…お!キタキタキターー!憎悪・嫉妬来たー!」


突然目の前のアクィラの目から赤い涙が流れ、歯が砕け散りそうなほど強く噛みしめている。

明らかに先ほどより異常な感じが伝わって来る。魔力も変化してきているようで、黒い…闇魔力だ。


「はぁはぁ…コロスコロスコロス…。  あっちゃー!理性ぶっ飛んでるねー」


アクィラの口から人間とは思えないほど低い声が出る。怖いな…てか、コロスって言ってのアクィラ本人だろ?…そんなに恨まれる覚えはないぞ?…まあいいけど。今すぐにでも殺したいが…


「おい、来ないならこっちから行くぞ!『豪狂化』」


一瞬でアクィラの体が真っ黒になり、全身から黒く長い毛が生える。まるで二本足で立つライオンのようだ…

ライオンのようになったバクは驚いている俺に満足そうな笑みを作ると、説明してくる。


「ははは!驚いたか?これは獣人の大昔の王の記憶から頂いたものだ!さあ、こいy…」


なにやら長ったらしく説明をしていたので、顔面に炎に包まれた『スラッシュ』をぶつける。さすがに交わせなかったようで直撃し爆発音と共に土煙を上げながら飛んで行った。すると後ろからアブロンの呆れた声が聞こえる


「敵とはいえ、説明しておるやつに不意打ちとは…まあ、戦闘中に悠長に話しておる方も悪いが…」


「隙は隙です。さあ、シリウス様早く」


「ああ!わかった。アブロン、道を教えてくれ!」


「俺はお前らの仲間でもないのだが…まあ、いいだろうぉ。シリウス、こっちに来い」


アブロンがシリウスを呼びつける。すると、アブロンはシリウスを抱え上げそのまま先の移動のように足からジェットのような炎を上げながら中に浮かぶ。老人が少女に抱えられ、ロケットのように空を飛んでいく光景はなかなかにシュールだ。アブロンが空を飛んでいくと、バクも復活しこちらにとぼとぼと歩いてくる。


「あの女…人造人間か?…」


「俺も知らん。さて、復活したんだろ?こいよ」


「言わなくてもなっ!」


一瞬でアクィラが距離を詰めてくる。つばぜり合いになる。

先ほどは不意打ちで一発当てたが、こうして戦うと隙が少ない。かなり面倒だ…打ち合っていても、合間合間に攻め込んでくる。まあ、どうやら剣術の関しては俺の方が上のようで捌きは切れる。しかし、こちらには同時に火魔法も使える。鍔迫り合いの最中、相手の顔面めがけて火魔法の『爆発(エクスプロージョン)』を無詠唱で発動させる。


「っ!」


さすがに交わせなかったようで、アクィラの顔の皮が焼け落ちる。一瞬香ばしい匂いがする。

そこからは一方的な戦闘になっていく。鍔迫り合いになれば体のどこかに火魔法をぶつけ、火魔法をうまく避けたとしてもすぐに剣撃がやってくる。どんどんとアクィラの体は皮が切れ、肉が露出し数本だが骨も折れているだろう。一方俺の方は無傷だ。ミノタウロスと戦った時は、数が多かったせいで攻撃を食らったこともあったが、一対一で戦えるなら俺はどんないてでも勝てる自信がある。


「はぁはぁ…お、お前!父親にこんなことしていいのか!」


「さっき、『コロス』とか連呼してたのは、本人の意思だろう?それに情はない」


「ちっ…デュークを殺したほどの男だと思ったが…ガキにこうもやられるとは…」


「次で終わらせる。」


剣の柄を握る力を強めると、明らかにアクィラが動揺している。いや、おそらくだが操っているバクが、だろう。


「わ、わかった!やめろ。こいつを殺したところで、お前は俺を殺せない。それにこの体は他にもやることがある…」


「何をするつもりだ。」


「ははは、俺を追い込んだんだ少しくらい教えてやろう。目的は一つ、人間の地の支配だ」


「なぜ、そこまで魔族は人間の地を狙う。ミノタウロスもそうだった。何かあるのか?」


「それくらい自分で探せ。さあ、帰らせてもらう」


「帰すと?」


「残念だが、逃げ足の速さは自信があるもんでね!」


一瞬アクィラは持っていた剣を俺に投げつける。俺は素早く弾くと、すぐに剣を構えるがすでにそこにはアクィラの姿はなかった。どうやらまんまと逃げられたようだ。



「アブロン、その姿はどういうことじゃ?…そのローブ…うちの学園の生徒じゃろ」


「ん?ああ、呼び出されたんじゃ、被害者だぞ?」


「誰に呼び出されたというんじゃ…まさか…」


「そのまさか。見たろう、魔剣士にもなれる素質があるガキだ」


「どれだけの魔力を持っておるというのじゃ…」


「いや、違うの。確かに魔力の量も桁違いじゃろうが、質が違ったの。澄んでいた…いや、落ち着きのある魔力に呼ばれたのじゃ…そうじゃな…あれは黒じゃ。他に色がない…黒い火属性の魔力じゃった…」


「どういうことじゃ?…」


「さあの。ついたぞ、あれじゃ」


シリウスは会話を止め、アブロンのさす地上を眺めるとそこには巨大な白いカボチャに車輪のついた馬車のようなものが森をものすごい速さで走っていく。その馬車の後ろから黒い格好をした何かが追いかけていた。何かは魔法を使って馬車に攻撃をしている…


「遠回りして、降ろしてくれぬか!」


「ったく…仕方ないの」



私は夢でも見ているのだろう。なぜなら、今の状況が理解できないからだ。

アクィラが突然、暴れ出し襲いかかってくるとシリウスが私をデュークの飼い馬に命じてディルの元にはこばされた。この時点でわからない。聞いていた話だとこの馬はあのケルピーさんですらテイムできなかったはず…なのになぜシリウスの言うことに応じて私とアンカを連れて行ったのか。突然アクィラはどうしたのか…


いや、そんなことより目の前の状況の方が理解できなかった…


「おい!聞いてんのか?」


「あ、ああ…聞いている…」


「まあ、そんなもんだ。要約すると、俺たちは守り神みたいなもんで、この子は唯一俺たちと、お前らを繋げる役目を持つってことだ。そんで、俺たちのことは何も言えない。以上、質問は?」


「すべてだ。」


「はぁ…」


「いっそ、秘密をすべて教えてしまえばいいのでは?」

「馬鹿!理解できるわけないだろ」

「多数決を取ればいいんじゃないか?」

「だから、あの子の意見を聞かなきゃだめでしょ!勝手なことはできないわ」


「それは…ディルと関係があるのか?…」


「…ああ。」

「っおい!何言ってんだよ!」

「このままだと動かないじゃんか!仕方ねーだろ。」

「勝手にしろ…」

「ねえ、説明するなら私がするわ。あんたらは杖に戻ってきて」

「は?お前何言ってんだ…「そうじゃな。女どうしがいいじゃろ。いくぞネメア!」

「ちょっ!触んなよ!くせーんだよパン!」


どうやら一悶着があったようだが、数分すると優しい笑みを浮かべるアンカがいた。やけに大人びた慈悲のある優しそうな笑みだ…


「初めまして。私はペルセポネ…まずはディルについて説明しましょう…あの子は」

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