5話 閑話 母として
「よし!ディル!『ステータス』と言ってみなさい」
「ふふふ、デューク様…まだ赤ちゃんです。言葉は言えませんよ?」
「はっ!そうだったな!…赤子は、大変だな…しかし、どうすれば見れるのだ?」
「私の居た村では村長が『技能開示の石』というステータスを見ることができる石を持っていましたが…」
かなり真剣に考えているようで、私も昔の村の事を話しました。今はもう関係ない事ですけど…
「よし!奪っ借りてこよう!」
「やめてください…」
デューク様はたぶんその気ではなかったと思いますが、自然と気分が下がってしまう…それをデューク様が感じ取ったのか謝られてしまいました…
「そうだな…すまない。しかし…ディルが自分でステータスを開くことができれば…」
「あぅーぁう?」
今この子…『ステータス』と言いませんでしたか?…何でしょう…この子…ディル…私は赤ん坊の事は分かりませんがここまで泣かない者でしょうか?…
ディルをよく観察する。すると、子供とは思えない真剣な表情で何やら読んでいるように目を動かしている。これはステータスを確認している人と同じ行動です…もしやこの子…
「デューク様…もしかしたら、ディルはステータスを見ているのでは?目がステータスを読んでいるものと似ている気がするのですが」
「そうか…?なら、なぜ干渉できないんだ」
「どうやら、この子はかなり知能が高いのではないでしょうか?目に赤ちゃんの無知さが感じられませんし」
この子は普通じゃない…なにか特別な何かを感じる…違和感?…知性のある目、観察し・考察している目だと思う…
「そうか!それはいいことだ。では、頼んでみるか?」
「そうですね…ディル。ステータスを見せてくれますか?」
たぶんこの子なら、それができる…違和感が『そうだ』と言っている。どうやら見ることができたようでデューク様の目が変わりました。
「どうでした?…」
「…あっ!すまない。えーと…人間の子供のステータスがどうなのかわからないが…異常なまでに低い…」
なっ!…ステータスが低い…それはこれからの人生がうまくいく可能性そのものが低いということだ。赤ん坊ならなおさらそうだ…
「それでどれくらい低いのですか…?」
「平均的に20ってところだ…スキルも称号もない…」
は?…そうでした…デューク様は魔族でしたね…先ほどの心配が馬鹿らしく思えてしまいました。深く息を吸い込み長い溜息が自然とでます。
「はぁ…私が愚かでした…デューク様。ディルに職業はありましたか?」
「いいや、職業はないな…これも異常だ。」
「はぁ…人間の赤ん坊は平均20です。それに職業は15歳の生誕日に教会に行き本人が選択します。それからじゃないと称号もスキルも手に入りません。まあ、たまに生まれた時から職業が決まっている『天職』持ちと呼ばれますが、違うようですし」
驚きといった表情のデューク様に呆れより笑いが出てしまいます。
「すまない…私が人間についてあまりにも無知でな…これではちゃんと人間として育てることができない…父親失格だ…じぃ!いるか!」
ジルさんを呼び、指示を出します。やはり、高位な方なのだと思います…
「少し人間について学びたい。文化・風俗・歴史・豆知識でもいい。関連する書籍を書斎に運んでくれ。早急に頼む。それと、コーヒーを頼む」
嫌味を入れたジルさんの言葉につい笑ってしまう。大きい声で呼ばれるのが嫌いなんですよねジルさん。
ジルさんはディルに話しかけます。しっかり顔を見るディルはやはり不気味です…
「ディル様。お初にお目にかかります。私はジル=ドラキュースでございます。いつか私を「じぃ」とお呼びください。」
ジルさんが挨拶と一緒に握手のように指を差し出す。ディルは小さな手でジルさんの差し出した指をそっと握る。まるで握手のようです。ふふふ…やはり赤ん坊ですね。ジルさんの表情も笑顔で私も笑顔になってしまう。しかし、デューク様だけなにやら、うらやましそうな表情ですね。
「では、書籍をご用意しますので書斎でお待ちください。」
「うむ、頼む。それと、けしてうらやましいとは思っていないからな!」
「ハハハ。心得てます。では、失礼します」
ジルさんが嬉しそうに部屋を出ていかれました。デューク様はふとディルの顔を見ると笑顔で頭を撫でられました。ディルは嫌そうな表情でした…
「それではマリア。あとを頼むぞ。…じゃあな、ディル。あとで会おうな」
私はディルを見つめる。かわいらしい顔に、白い髪…なにかデューク様に似ていますね。本当にかわいい息子様ですね…