42話 終生の森とディルの本気
終生の森…学園の真後ろにあり、卒業する生徒たちが最後に挑む森。
そして唯一森と学園の間に城壁がある。その城壁に大きな木製の扉がある。これが学園と終生の森とをつなぐ後門だ。壁は厚さが3mあるので巨人族でも破壊はできない。
俺は門の前に立つ。三時になると門が開くそうで俺はその時を待っている。
「そろそろ…」
「ああ。」
隣に立つ大きなバックを背負った少女と短い会話をすると、それを合図か扉がゆっくりと開かれた。開かれるということは、シリウスの結界が切れたということだ。この門の結界はかなり強力でシリウスの魔力のほとんどを使い張っているそうだ。そのせいでシリウスは魔法が使えならしい。しかし、今回魔族との戦闘いうことで結界を外しフル魔力で向かうそうだ。
俺はゆっくりと門から出る。すると、開くスピードの2倍ほどの速さで扉は閉まった。獣の鳴き声や鳥の鳴き声がこだまする。
「ラスティ。こっちに来い…」
閉まった門の前にラスティを立たせる。そして、ラスティに触れながら「闇領域」を使用する。すると少女を中心に半径1mほどの黒い円が広がる。
「すごい…これは…?」
「ここは安全領域だ。そしてラスティを中心に作った。お前が動けば領域も動く…だから決して動くな」
「ん…」
「さて…早速か…」
森からドシンドシンという地響きと共に木々が吹き飛んでくる。俺はそっとラスティから離れ領域から出る。森から出てきたのは、体長4mほど、白く硬そうな肌に力強いツノが額に生えたサイだ。
サイはまっすぐ門に向かってツノを振り上げ突進してくる。俺は正面から突進してくるサイに向かって走る。そして剣を振り上げる。やっぱ、スキル名は叫びたくなるよな!
「『ラウンドスラッシュ』」
そういうと俺は剣を地面に深く突き刺し、そのまま振り上げる。すると真っ直ぐ不可視の刃が地面を伝ってサイの正面にぶつかる。すぐにサイのツノにヒビが入り、そのままサイの頭を切り裂いた。
「っち…あいつ硬すぎる。真っ二つにならないか…」
サイは突進の勢いを完全に止められその場で地面に頭を突っ込みながら絶命した。俺はすぐにサイに駆けていきスキルを奪う。どれだけ奪えたかわからない、ステータスを見ている暇はない。それにかなり強いな…
一息つく暇もなく、今度は二体の狼が現れた。鋭く尖った牙に、しなやかな足…
「ったく…」
シリウスに言われたのをおもい出す
《「終生の森は食糧不足で、魔物は皆肉に飢えている。そして、毎年何名かの試験でくる終生がここで死ぬ、その肉が唯一の楽しみのようでな…門が開くと、同時に人の匂いが森に広がり飢えた魔物が襲ってくる。絶えることはないぞ…わしもなるべく早く戻る予定じゃが…」》
おいおい、こんなに美味しい狩場はないぜ…。できるだけ多くの魔物を殺して俺の糧にしてやる…
俺は迫ってくる一匹の狼に向かって走る。「疾走」を使う。狼は噛みつこうとしてくるので、噛まれる寸でのところで口の中に火球体ファイヤーボールをぶちかます。すると、狼の自慢の牙が砕け、狼自体は熱さにその場で悶える。その隙に二匹目の狼が噛み付いてくるが「鬼人体術」の追加スキルの「鬼壊裏拳」で鼻頭を打つ。キャインっとかわいい声で吹き飛ぶ。どうやら鼻の骨が折れたようで血だらけだ。悶えている二匹を斬り殺す。
「はぁはぁはぁ…」
肉体的には疲れていないが、息が荒くなる。が、すぐに他の魔物がやってくる。今度は真っ赤な体色をした鬼が現れた。その腕にはかつての終生が持ていたであろう上物の槍が握られていた。
鬼はまっすぐ俺に向かってくる。皆単純バカで、まっすぐ向かってくる。俺は素早く剣をしまい鬼に駆けていく。そして鬼の槍が俺を突き刺さろうとした瞬間剣に触れる。右手は柄を、左手は鞘を持つ。
「『伊蔵の居合』」
鬼の振るった槍は俺にあたることなく、すれ違う。しかし、剣はしっかりと抜かれており振り斬った後だ。
スキルはまだ終わっておらず、素早く血を払い、剣を鞘にしまうとスキルが終了した。その頃には鬼の胴体は真っ二つに切断されていた。俺は素早く狼と鬼の魂記録を奪うと鬼のも持っていた槍を構えもっていた剣をしまう。剣の消耗が早そうだからだ。
▽
「はぁはぁ…ラスティ…水をくれ」
俺は素早く闇領域に入る。ラスティは大きなカバンに手を突っ込むと何かを探す。見つからなかったようで今度は両手をカバンに入れる。それでも見つからなかったようで、今度は体をカバンに突っ込み探す。手足がバタバタしてるな…埋まりそうだな…
「ディル…助けて…」
どうやら、埋まったようだ…。俺は素早くラスティの両足を引っ張る。引っ張りだしたラスティの手には赤い水筒が握られていた。俺は水筒を受け取ると一気に飲む。
「プハッ!…よし!これ持っていてくれ!」
▽
俺はすぐに領域から出る。1分程度の時間だったが、すでに門の前には五体の魔物が来ている。それぞれ先の狼ほどの大きさだ。鋭く尖った鎌を二本持ったカマキリ、大きく逞しく伸びた一本のツノを持ったカブトムシ、鋭く尖った鋭利な二本のツノを持つクワガタ。それと、2mほどの人型だが異常に腕が太く爪が長い怪物が一匹。もう一匹は先ほどと同じ鬼だ。すると、ロットから情報が入る
『注告します。人型の魔物ですが、小人です。悪意に満ちた精霊のブラックゲンガーです。上位精霊にドッペルゲンガーが居ますがドッペルゲンガーは祝福された精霊です。ブラックゲンガーは死体から特定の部位を自身に取り込んで強くなります。強さがわからないため一対一が良いかと』
あいつそんなに強いのか…ったく、小人ってのはどれもこれも面倒な奴だな…
だったら、一気にケリつけるか。俺は槍を地面に突き刺すと剣を持つ。そして、闇魔法を使う要領で剣に闇魔力の黒色の魔力で剣を包み込む。すると、髪がどんどんと伸び腰の辺りで止まり、身長も体格もどんどん成長していく。
全ての成長が終わると、身長は2mほどになった。来ているオリハルコン製の装備も闇魔力で包んだので真っ黒だ。
デュークにそっくりだ…今まで一度だけ使ったことがあるが思わず目を疑ったからな…
闇魔剣士の補助…「影渡り」を使い自身の影にぶくぶくと沈んでいく。狼が噛みつこうとしてくるがその頃には影を渡り近くにいたカブトムシの影から出てくる。気づいていないカブトムシの首に闇魔剣を振り下ろし首を刎ねる。
それからカマキリ、クワガタと影を移動し味方が死んだのに気づく頃には自分も死んでいる。しかし鬼に関してはなぜか俺が分かったのか咄嗟に裏拳をしてきたが、即座に両肩を斬り落とし痛みにもだえる暇もなく首を狩る。その頃には狼は恐れたのか逃げ様としていたが「影渡り」で近づき首を刎ねる。残るは、後一匹…すると、ブラックゲンガーは今までの姿はなく、そこにいたのは綺麗な金髪の女の子だった。目に涙を浮かべながら、まるで助けてと言いそうな感じで近づいてくる
「お前は…」
「助けて…助けて…」
少女は俺に近づいてくる。かなり必死そうな表情だ…しかし、その場で首を刎ねた。
「生憎だな…この姿では情もわかぬのだ。」
すると、少女の姿はなくなり最初に見たブラックゲンガーの姿で死んでいた。




