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36話 森の警備 カフの不安

カフ視点です。

私の名はカフ=B=カシオペア。小さい頃から厳しく武芸と幅広く学芸を学んできた。それは私が公爵家に生まれたからだ。偉大なる父上に、尊敬している二人の兄。私は家の恥にならぬよう努力しなければいけない…

私と同じ年の国王様の娘…フローラ様が学園に入学することになり、私も同じ学園に入学しサポートせよと父上からの命により、現在学園で生徒をしている。サポートと言っても姫様は技術科で私は冒険者科なので関わりはないが…そういえば技術科でもサポートさせる人間がいると言っていたな…確かカペラだったか?


「カフ様?どうかされましたか?…はっ!あの下人に何かを移されたのでは!そうです!きっとそうです!…」


「少し黙ってくれないか…」


「は、はぁ…」


私の横で何かと世話を焼いてくれる…いや、かき回してくる面倒な学友がいる。ケルという商人貴族の次男坊で、俺に取り入ろうとしてくる…正直鬱陶しい。身分によって態度を変えるのがさらに印象を悪くする。

ディル様…いや、ディルか。王族であるディルはなぜ自分の身分を黙っているのだろうか…先ほど見せたあの表情…「それ以上は詮索するな」といった殺気のある目立った…あの目は父上と同じ、いやそれ以上の威圧があった。魔剣を持ち、オークを瞬殺するほどの圧倒的な剣捌き…そして、学園入学試験の筆記で満点を取るほどの頭脳を持つ。そして、機転のきいた話術や周りに流されない肝が座っている。身分は関係ないか…はははは!やはり面白い!


「…その笑みは賛成ということですか?」


「…あ?ん?何の話だ?」


「ですから、あの下人。確かディルでしたか?あいつを私の家の人脈を使って調べさせ、家族を奴隷落ちさせてやるのです!」


「はぁ…それはやめてくれ。彼には関わらない方がいいぞ」


「どういうことですか?奴はカフ様に舐めた事をしているのですよ?下人の分際で!」


「不毛だ。食事にする…」


ディルが王族という身分を隠している。そして、この私を友として頭を下げてまで隠す事を頼んできた。やはり身分関係なく友人として頼みは守るが…はぁ…

私の忠告を聞かずに、未だにディルの悪口を隣で話すケルに嫌気がさしてくる…。ふとディルの方を見るとディルは、奴隷のラスティと口論をしているようだ…原因はプリンのようだ。しばらく黙って料理を食べていると突然校内放送が流れ始めた。騒がしかった食堂ないが、一気に静まり返る。


『全校生徒に連絡します。右剣校舎側の森にて魔族が現れました。生徒の皆さんは全員、可及的速やかに自室の寮へ戻ってください。右剣校舎側に寮のある中級生は寮ではなく、左杖校舎の魔講談室に移動してください。教員方と風紀員は職員室に集まってください。』


放送がブチリと切れると、しばらく無言の状態が続く。そして、全員が息を合わせたように皆が席を立ちあがり悲鳴をあげ食堂の出口に向かって走っていく。上級生が必死に走るのをやめさせようとするが、恐怖だからか皆聞く耳を持たない。

それはそうだ…なんせシリウス様の結界を張っているのに魔族が学園の領地に侵入したなど前代未聞だ。常識がひっくり返るようなことが起きたのだ…周囲を見渡すとすでにケルの姿はない。いち早く逃げ出したのだろう


「大丈夫か?震えるな。」


突然声をかけられたので振り返るとそこには相変わらず表情が読めない無表情なディルが立っていた。何を言っているのか理解できなかった俺は足元を見ると小刻みに震えていた。カフは俺の肩をたたくと力が何か力が抜けた気がした。どうやら、体は怯えていたようだ…


「ああ。すまない、助かった。ディルも部屋に早く戻れ。私は職員室に行ってくる」


「おう、がんばれよ」


笑顔で俺にてを振ってくるディル。初めて笑顔を見たな…俺はすぐに振り返り、すでに皆避難し静かになった食堂の出口を抜け職員室に向かう。



不気味なほど静かな廊下を走り抜け、すぐに職員室についた。職員室の扉は開いておりすぐに入ると、ただならぬ緊張感が部屋に充満していた。教員は一人一人研究室という部屋を与えられていて、職員室とは緊急時などに教員を集めるための部屋で、この部屋は理事長のシリウス様の部屋と繋がっている。

現在の職員室は、多くの先生方や風紀員の先輩たちが静かに集まっている…。そっと一番端の方で待っていると職員室の奥の扉が開き、そこからシリウス様とモールス様が出てきた。


「皆に集まってもらたのは、他でもない。放送で流れた通り魔族についてじゃ。高級生・終生の風紀員は右剣校舎側の警備を頼む。戦闘のできる先生方は協力して警戒を。中級生の風紀員は低級生の風紀員と二人組みを作りその他の森の警備を。終生の森にはワシが担当する。決して低級生と低級生で警備してはならぬ…。そして、決して森に入ることを禁止する。今晩魔族が現れなかった場合、明日ワシと数名森に入り調査を行う。高級生・終生は各々自分の持てる最大の武装を、先生方も同じく。低級生に関しては中級生から借り受けなさい。以上。」


シリウス様は素早く的確な指示をしていく。すごいな…迫力がある。鳥肌が止まらない…

シリウス様は話し終わると腕をそっと前に差し出すと、まばゆい光が手のひらから溢れている。


「彼等に光の護を。神聖の後光(ライトラダー)


聖魔法なのか教室にいる皆を包んでいく。どういう効果があるかわからないが、どうやら加護の魔法らしい。何か自分の背中にあった何かがなくなった気がする。ありがたい…シリウス様。皆シリウス様に一礼して部屋を出て行く。


「カフ。久しぶりだな」


「シェダル兄様。お久しぶりです…」


「こんな時に会うとはな。お前は俺と来い。装備は持っているか?」


「はい。父上から入学祝いで頂きました。」


「そうか。では、装備をした上で俺の担当の高級生側の森の警護だ。大丈夫か?…」


「大丈夫です…」


「そうか。では、待っているぞ」


静かな廊下を走り抜け、自室に向かう。自室には父上からもらったオリハルコン製の防具と剣がある。

兄様と一緒に警護…これほど安心なものはない。シリウス様にかけてもらった加護もある…そう考えながら、必死に悪い思考を振り払う。いつの間にか自室についた私はそっと部屋に入り装備を着る。オリハルコンの胸当て、手袋、ブーツ…部屋に光を反射するオリハルコン製の剣を腰に差す。準備を完了したので、部屋から出て高級生の校舎に向かう。

高級生の森…特殊な戦闘法でしか倒せない魔物や、レベルが段違いに上がる。戦闘するわけじゃない…あくまで警護だ…そう頭にねじり込み校舎に出るとオリハルコンの防具を真っ青に染めたシェダル兄様が立っていた。


「遅れてしまいました…」


「大丈夫だ。さあ、行くぞ…安心しろ。高級生の森にはシリウス様の結界がある。魔物は出てこないさ」


「はい…」


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