4話 閑話 母の過去
私の名前はマリア、小さな村の農家の長女として生まれました。
ごくごく普通に働き、普通に生活し普通な幸せを送っていました。そんなある日私の旦那が、村長の娘さんと夜逃げをしました。村長の娘さんは逃げる際、資金にするため村長のお金を盗み、旦那は私の家にあった家具や衣類を全て売り払い金にし、二人で逃げたそうです。
農場から帰ってくると何もない家の状況が理解できませんでした。そして、カンカンに怒った村長さんが私に問いただそうと家に来ました。しかし、村長も私の家を見て言葉を失い逆に私を慰めてくれました。
そのころになって、旦那との間に子供ができていたことが発覚しました。私は旦那との最後の関わりとして、腹に宿る命を産み、育てることを決心しました。
しかし、田舎の農村ですから働かないと食べてはいけない。私も最初は働いていましたが徐々に大きくなるお腹で、ついには働くことができなくなりました。村の人たちはだんだんと私を遠ざけるようになり、出産間近には誰も話しかけてきませんでした。しかし、村の約束で『出産と家事と葬式には必ず誰かが手伝う』があり、出産には産婆さんなどに助けてもらいました。
これで生まれる…生まれたらきっと旦那も戻ってくる。
「な、なんだいこれは!」
私の出産に立ち会った産婆さんが大声を上げて驚いている。何かあったのか…
産婆さんは赤ん坊を湯につけ拭い、布に巻いて私に渡してくる。しかし、その産婆さんの顔はまるで魔族に会ったかのような表情でした。私は布で隠れている赤ん坊の顔を覗きました。
その赤ん坊は鼻や口は存在せずただ穴が開いているだけ、腕が胸から生えていました。奇形児と呼ばれるようですが、村からは完全に悪魔の子とされました。赤ん坊は産声を上げる前に死にましたが、村からは私は追い出されそうになりました。そんな時、王国から生贄の話が村に届きました。内容は『悪魔に関する女を生贄として吸血鬼城に差し出せ』村は不気味な私を追い出せる好機とし、私もすでにこの世に絶望していました。私は喜んでその生贄になりました。
色々な署名や手続きをし、そして吸血鬼城に行くことになりました。吸血鬼城は村から歩いて7日の山の頂上にあるそうで、道を知りたければ蝙蝠に聞けば教えてくれると教えられました。
すでに多くの女性が吸血鬼にさらわれているようで、私も食われておしまい。しかし、村のためになるなら…そう思って七日間歩ききり、ついに吸血鬼城につきました。白くそびえる城は不気味なほど音がありませんでした。私が城門近づくと、勝手に城門が開き一人の初老の男性が出迎えてくれました。怖いほど肌が青白く黒い執事服が怖く感じました。
「ここまで遠路遥々お疲れ様でした。生贄になった方ですね。お名前は?」
「マリアです…」
「そうですか。マリア様、いい名を頂いたのですね。さあ、城主がお待ちです。さあさ、どうぞ」
老人がゆっくりと、城に入っていくので私も後を追います。何か考えていたことと違い、戸惑っています。
しばらく老人の後をついていくと大きなな扉の前に止まり部屋をノックし、そのまま中に入っていきます。
部屋の中央には玉座があり、そこには真っ白な髪の男性が居ました。
「生贄となった女性を連れてきました」
「そうか。ご苦労だった。…して、君の名は?」
「マリアと申します…」
「そうか。マリアか。ここまでは疲れたろう、あとで部屋を与えるからゆっくりと休みなさい。私の名はデューク=ドラキュースだ。まあ、そう硬くならなくても良いぞ。さて、腹が減っただろう。さあ、飯にしよう!」
「え?」
私を食べるのでしょうか。いや、でも部屋を与えるって…ん?頭が痛くなってきました。
デューク様は玉座から腰を上げると指を鳴らします。すると、長いテーブルが出現しその一つに腰かけられました。困っている私に老人が現れ椅子を下げてくれたのでそこに座ります。それから多くの食べ物を老人が運んできてくれました。とてもおいしそうです。ですが…食べてもいいのでしょうか…
「どうかしたのか?…ああ!毒などは入っていないから安心するといい。さて、君がここに来る経緯を教えて欲しい」
「私は…」
何故かすべてありのままを話してしまいました。しかし、なんだか気持ちが穏やかになった気がします。
黙って私の話を聞いてくれたデューク様はヴァンパイアというのが嘘のようにまるで人間のように私を思ってくれました。
「そうか…辛かったろう。ここなら大丈夫だ。安心するがいい…」
「はい…それで私はどうすれば…血ですか?…」
「ああ、その話をしなければな。月に一度、スプーン一杯程度の血と、衣食住を保証する。こんなもんかな?。まあ、他の女たちも居たのだが死んでしまってな…」
「し、死んで…」
「誤解するなよ!私が攫ってきたのは病弱で医者が匙を投げたや、問題のある女のみだ!決してやましいことはない!」
「ふふふ…」
顔を真っ赤にして必死に説明しているデューク様はとても可愛く、笑ってしましました。デューク様は頬をかじり恥ずかしそうにしている。なんだろうか…思っていたのと違うな…
なんなら、ここが天国で村が魔界に思えてくる…ふふふ…デューク様か…
△
それから一か月がたちました。ここでの生活にも慣れ始めた時、配下の蝙蝠さんとデューク様が話ているのを聞きました。どうやらここに…勇者が来るそうです。デューク様を殺しに…
しかしデューク様はそれを、私には伝えずいつも笑顔で接してくださいました。その優しさが私を余計に心配させました。
そんなある日、じぃこと、ジルさんが私を呼びに来ました。デューク様が呼んでいるということで私は焦ります。何かあったのか…部屋に入るとすぐにデューク様が話しかけてきました。
「おお!マリア!乳が出るとか聞いたがどうだ?」
「ええ。ここに来る前に子供を産みましたから…」
「その子はどうなったのだ?…」
「ここに来る理由となりました。」
「そうだったな…すまない…思い出させてしまったか…」
「いいえ。噂とは違いここで何不自由なく生活し、そのおかげで少し気持ちに整理ができました。これもデューク様のお蔭です…死にそうだった私を助けてくださりありがとうございました」
本心からそう言えた事に私自身驚きました。デューク様の申し訳さなそうな表情が嫌だったっからでしょうか?…わかりません。しかし、乳がでると聞かれるとは…ま、まさかデューク様!目覚めたのでは!?
デューク様は私の頭に手をのせてくれました。大きくて冷たい手ですがどこか、暖かさを感じる不思議な手でした。
「気にするな。ちゃんと交換条件で血をもらっているしな。等価交換だ…それですまないのだが…」
デューク様はそっと右手を差し出されました。そこには真っ白な髪に青い眼をした赤ん坊が私を観察するように見てきました。私は赤ん坊を受け取り抱っこをします。過去にあんな事があったにも関わらずこの赤ん坊は素直に抱くことができました
「こ、この子は…」
「捨て子を拾ってな…まあ、育ててみようかと…それでお腹が減っているようでな…」
「そうですか。では、乳を与えましょう。」
与えたことのない乳を、感覚で与えていく。うまく与えているのか分からない…でも、飲めているようだし…
ふと視線を赤ん坊からデューク様に向けると私の乳をみてにやけています…恥ずかしい…
「おいしいかー?ディルよ」
「ディル?」
「ああ!この子にそう名付けたのだ。よいだろ?」
「そうですね。それにとても元気な子ですね…」
「そんな顔をするでない。そうじゃ、その子を育ててみてはどうだ?乳が出るのもマリアだけだしな。まあ、たまに私にも抱かせてくれると嬉しいが…」
「ふふふふ。ありがとうございます。この子は、ステータス確認したのですか?あなた」
何故でしょう。この喜びは…気分が高まり自然と笑いが出てしまう。デューク様との子か…
「あ、あなた!?…や、やめなさい!だ、だが、私はディルを拾ったのだから父親なのか?…しかし…そうか…父か!」
「パ、パパって言ってごらん?」
「デューク様。お顔が赤くなっていますよ」
「バカなことを言うな!そ、そうだ!ステータスだったな!!」
ジルさんのようにデューク様をイジる。この方は反応がやはり面白い…ふふふ