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31話 『錬金術』

目が覚めたので、体を起こし着替え始める。ベッドに戻って寝たい感情を抑えこみ、剣を持って外に出る。

適当に階段を降りていき、外に出る。どこだかわからないが、ロットに聞けばどこにいようが安心だ。


「ふっ…ふっ…」


スキル「剣術」を発動させながら素振りをする。感覚を解き済まし、一振り一振りに意識をもって…いつもの千回す振りをし終わると、腹筋、腕立てスクワットを千回始める。いつもやっていることで、2時間ほどで終わる。そのあとは走り込みだ。


「はぁはぁはぁ…」


学園を二周ほどすると、息切れが始まったのでいつも走っている距離を走ったのだろう。今の時刻は5時ほどで、6時から生徒が起き始めるそうだ。すでに太陽が昇り始め、眩しい光が俺を照らす。


「気持ちがいいな…」


『そこを右に曲がれば、自室になります』


鍛錬が終わったので、ロットの案内で部屋に戻ってきた。俺は鍛錬でかいた汗を流すため風呂に入る。朝から熱めの湯船に浸かり疲れをいやす。やはり異世界でもお風呂に入るのはいいことだな…癒される…

風呂から出ると、すぐに柔軟をし始める。ベッドの上には来ている服がはだけている、ラスティが寝息を立てている。俺は溜息をつきながらはだけた服を戻そうとして気付いたのだが…体にかなりの傷がある。火傷や切り傷など…かなりひどいな…しっかりと治療しなかったのか後が残っている。


「いつか、治せてやれればいいな…」


そんなことを考えながら、服を戻してやる。起こさぬよう慎重に…そのあとは書類に目を通す。昨日から読んでいるのだが、やっと読み切る…学園の森についての説明んようだ

 まず学園の門から近くの村までは弱い魔物がいる。ゴブリンやスライムなどの比較的どこにでもいるような魔物でレベルなども大したことはなく、ここで低級生は基本的な魔物との戦い方を学ぶ。

 次に中級生のいる「右剣校舎」のあたりには小さな山があり、門の前の魔物とレベルが少し上がるそうだ。ここでは山という足場の悪い所や木々のせいで広く戦えない時の戦闘法や、森の中での安全確保、食料確保、応急処置などを学ぶそうだ。

 そして、高級生のいる「左杖校舎」ではパーティを組んで討伐する魔物が多く、数段階レベルが上がる。さらにアンデッドやドラゴンなど特殊な戦闘をしなければいけない魔物も生息していて、さらに小さな迷宮もあるそうだ。ここでは集団戦闘での役割、特殊な魔物の知識と適切な対処。迷宮での戦闘やルールを学ぶ。

 最後、学園の完全に後ろの森「終園」は終生用でかなり強いそうだ。あまり詳しく書かれていない。

この学園はシリウスの魔法でエリアの境界に結界を張っているので、魔物が入り混じることはないそうだ。


「ん…むぅ…」


「起きたか?」


ラスティは眠そうな目をこすり、体を起こして俺を見てくる。少し唇が突き出ているのでかわいいな…


「おはよぅ…ございます…」


「うん。おはよう。とりあえず、歯を磨いてこい。少ししたら朝飯を食べに行くぞ」


「うむぅ…」


眠そうな目のままベッドから出て、水場まで歩いていくラスティ。昨日の晩、ラスティの服がボロボロな事を聞いたのを皮切りにラスティの過去を知った。その話はおいおい話すとして。俺はラスティを奴隷とまではいかないが、侍女としてそばに置いておくことにした。


『面倒見がいいんですね。』


それと、ロットこと脳内アナウンスさんが、かなり砕けてきた。どうしてかはわからないが、おそらく名前をつけたのがでかいだろう。声は同じく抑揚のないのっぺいな感じなのだが、少し感情がわかる。やはり謎だな…まあ、聞いてもどうせ答えないだろう。

俺は実家から持ってきた紅茶のパックを使い、紅茶を作る。お湯が出るポットのような魔道具が備え付けてあったので楽だ。しばらく、紅茶を飲みながらラスティを待つといつも通りのつぎはぎだらけの服を着たラスティが出てきた。


「準備できたな。よし、行くぞ…」


「うん…」



1限目は9時から始まる。余裕を持って、それでも早すぎないよう10分前に教室に着くようにした。やはり遅刻はまずいし、早すぎて「あいつ張り切ってるな」など思われたくないからな

俺と同じ考えの生徒が多いのか、教室の前の廊下には多くの子供達で溢れていた。小さなラスティがはぐれないように手を握って教室まで向かう。

教室にはすでに多くの生徒が座っており、仲良く談笑をしている。俺たちも席に着こうと、いつもの一番上の窓側の席に座ると、カフが近づいてきた。


「おはよう!ディル。」


「おう。カフ…どうかしたのか?」


「いいや、今日は集会があるだろ?だから、きちんとした正装で…そちらの子は?」


「ああ、俺の友人の「ディル様の奴隷のラスティと申します…」


「ラスティ…どこかで聞いた名だ…まあ、いい。私はディルの友人のカフだ。よろしく頼む」


「はい…カフ様…」


「って、いつから俺とカフは友人になったんだよ」


ラスティがカフと挨拶をすると、俺は軽く嫌味を言う。本気で言っているわけではないが、本心から思っている。なんか、いつの間にか友達になったよな…まあいいけど…


「冷たいことを言うな。共にオークを討伐した言わば、戦友でもあるのだぞ」


「わかったわかった。ほら、先生が来るから席につけ」


「ったく…お前というやつは…」


しぶしぶといった表情でカフは前の方の席に座る。決して嫌そうな表情ではなく、ジョークを受けたような表情だ。その後、ケルが教室にやってくるとゴマをすり始める。カフが少し鬱陶しそうに見えるのは俺の性格が悪いからだろうか…。ふと横を見ると朝食を包んで持ってきていたラスティが口いっぱいにハムを咥えていた。ハムだけにハムスターみたいだな…ふふふ…


『……』


 ……ごめん。



しばらくするとチャイムがなり、同時にコルクが入ってきた。手には小さなノートのようなものがある。今日はあの首なし騎士はいないようだ。雑用係り的な存在なのかな?あれって魔物だよな…何のスキルを持ってるんだろ…ゴクリ。

コルクは昨日と同じように教卓をバンと叩く。


「みんな、おはよう!早速だが、ホームルームを始めるぞ…えーと…室長を選ばないとな…室長をやりたいやつは挙手!」


「はい!」


一番前の真面目系の男が手を挙げる。昨日…一番最初に自己紹介したやつだったな…えーと…エトムントだったか?まあ、学級委員っぽいからな〜見た目。

エトムント以外手を挙げるものは誰もいなかったので、室長はエトムントに決まった。一瞬俺を見た気がするが…まあ、気のせいだろう。コルクは持っていたノートに何かを書き始める。


「次は…事務連絡か…えーと…2限目の集会だが、最初にシリウス理事長のお言葉。次に、「監督生」と「特待生」の紹介と各委員会の引き継ぎだな。それから、少し連絡があって解散だ。土・日と休みだから、本格的に始まるのは明々後日からだな。取る授業の教科書は購買で売ってるから、買えよー…と、連絡は終わったな…後20分はあるな…それじゃあ…」


コルクはズボンのポケットに手を突っ込むと、何かを取り出した。石ころだ…コルクは石ころを右手で持つと何かを唱え始める。皆コルクの突然の行動が気になり、黙って手のひらの石ころを見つめている。

詠唱が終わると、石ころが突然発光し一瞬で手にあった石ころのゴツゴツとした表面がなくなり茶色の球体になった。


「俺の担当している授業は「錬金術」「土魔法」だ。土魔法は必修で錬金術は選択科目だ。まあ、得意なのは錬金術なんだがな。

錬金術とは、昔魔法で金を作ろうとした研究を始めた学術で、その歴史は古い。まあ、金なんていう全く違うものに石を作り変えられるわけがないんだが…それから派生し、今の錬金術というのは「物の状態を魔力により変化させる」学術になった。今石ころを魔力で変化させ砂にした。それから…」


再び何かを唱えると、腕にあった砂の塊は分裂し、数個の球体になった。

「魔力」ということは錬金術は魔法の一種なのか…


「これは全て一つの石だったものだ。石は色々なものから構成されている。アルミや鉄とか…まあ、わからないか。何が言いたいかっていうと、錬金術は鉱石を分けたり、くっつけたりできるってわけだ。いろんな頃に応用できる。最近じゃあ、錬金術持っている鍛冶士が増えてきているがいい傾向だ。錬金術は最も基礎で、最も需要がある学術だ。俺は冒険者をやっていたがこの学術は大いに役に立った。なぜだと思う?」


「はい!」


「お!エトムント。答えてみろ!」


「優れた武器がわかるからでしょうか!」


「違うが…まあ、それもわかる。武器というのは純粋に鉄だけで作られているものは逆に脆い場合もある。かといって、交じり物があるとそれもまた脆い。まあ、詳しくは授業でやるが…今は質問だ!わかるやつはいないのか?そうだ!ディル!お前はどうだ?」


コルクが大きな声で俺を指名してくる。どう考えても嫌がらせにしか思えないが、コルクの表情からは一切悪気が感じられない…はぁ…これって定番の答えでいいのか?…前振りもあったし…

エトムントがめっちゃ睨んでるんだけど…気のせいだよね?…


「はい…もし武器が壊れても、その場で直せること…または、獲物がなくなっても地面にある砂・から鉄を集め変形させれば即席の武器になるとかですか?」


「ははは!よく気がついたな!正解だ。さっきの石ころをわざわざ砂にした意味を理解していたようだな!

俺は冒険者の時、オーガと戦闘になった。オーガの突進を食らった俺は、地面に吹き飛ばされた。手に持っていた剣は数メートル先に転がっている。オーガはなおも突進してくる。俺はすぐに地面に手を触れ、ありったけの魔力で地面の鉄を集め壁を作った。オーガはそのまま壁にぶつかり、首の骨が折れて死んだ。ま、その壁もギリギリだったがな!ははは!」


笑っているのはコルクだけで、他は誰も笑っていない…逆に引いている。まあ、6歳の子たちに首の骨が折れてとか話すのがないよな…もっと配慮しろよ…コルクの笑い声とかなさるように、チャイムが授業の終了を知らせた。

さあ、次は久々にシリウスと会うのか…


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