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29話 自己紹介と謎の少女

差し出された手をすぐに握り、握手をする。大きくどこか暖かい手だ。弟を思いやる優しい兄に見えるな…。シェダル=B=カシオペア…あのカフのお兄さんか…長身で整った顔立ちに案外ガタイもいいな…確か、カフは「公爵家」と言っていたし、こいつも偉いのか…


「俺はディルです。末っ子とはもしかして、カフという名ですか?」


「ああ、そうだ。呼び捨てにするとは、肝が据わっているな。まあ、ここでは身分は関係ないからな。無駄にプライドが高いが、素直な奴だから仲良くしてやってくれ」


「はい。」


「さあ、そろそろ行かないと時間がありません。シェダル様、失礼します」


ソフランは軽くシェダルに頭を下げると、俺の手を握り廊下を歩いていく。ソフランの握る手に力が入っているのは気のせいだろう。俺は歩きながら、さっきの疑問をソフランに聞く。


「「風紀員」とはなんですか?…」


「風紀員は、学校の風紀を守る役員のことで、風紀員は授業以外では先生方より立場が上なの。風紀を乱すと風紀員が判断した場合、停学権限、退学までさせることができるわ。そんな権限を持つのだから風紀員は学年ごとに「学業」「魔法」「武術」の三つから成績が良い順に声がかかることになっているわ。シェダル様は私と同じ学年で、学年で最も強いから選ばれてるのよ」


「そうなんですか…」


「ええ。委員は結構種類があるのだけど、まあ、まだ早いかな。それと、委員は併用はできないの。だから私は特待生で風紀員にはなれない」


「なりたいんですか?…」


「いいえ。もし、私が特待生じゃなくても、風紀員には決してならないわ…権力なんていらない…」


表情が暗くなり、最後の方には声が小さくなっていた。やべ…地雷踏んだかも…

必死に話題を変えようと、頭をフル回転させるが結局何も思い浮かばず無言のまま歩いていく。しばらく歩いていると、目的の教室に着いたようで扉に「1-A」と書かれてた。


「ここが教室よ。ここから全てがスタートするの。頑張ってね?」


「はい!頑張ります!あの…ソフランさん…たまにお話したいんですがいいですか?…」


「…ええ!いつでもいいわ。「7-A」の教室に来ればいつでもいるから」


「はい!わかりました!では…行ってきます」


「行ってらっしゃい!」



俺はそっと教室の扉を横にスライドさせ中に入る。教室は筆記試験を受けた部屋と規模は小さいが傾斜のある大学のようなすり鉢状の教室だった。すでに多くの生徒が座っており、仲よさげに談笑している。

とにかく席に着こうと、空いている席に腰掛ける。窓側の一番う後ろの席だ。それにしても憧れてたんだよね〜。傾斜のある教室って。高校の時は普通の教室だったからな…

椅子に座ると上から教室にいる子供を見渡す。どうやら他の種族もいるようだ…猫耳に、ドワーフ…多分あれはエルフか?…俺はあんまり前世で転生物の小説など読んでいないが、そんな俺でもわかるくらいファンタジーしてやがる。少しテンション上がるな!

人間観察をしていると、すぐにチャイムがなり談笑していた子供達も席に座っていく。あ、カフだ。

チャイムがなり終わると同時に、教室のドアが開き筋骨隆々でサイズの小さいTシャツのせいでピチピチになっている男が入ってきた。その後ろから首のない鎧姿の騎士が入ってきた。騎士の手には大量の紙が束になって積まれている。筋骨隆々の男の方が教卓を両手で叩くと教室を見渡す。


「やあ、君たち。入学おめでとう。私がこのクラスの担任のコルクだ。お、デュラー!それをここにおいてくれ」


筋骨隆々が挨拶をし、デュラーと呼ばれた首なし騎士が手持っていた紙束を教卓に置く。首なし騎士は筋骨隆々に一礼すると、俺たちの方を振り向き親指を立てる。きっと顔があったら、真っ白な歯が光っていただろう…。コルクが睨むようにデュラーを見ると、察したのかすぐにデュラーは教室を出て行った。


「さあ、名前を呼ばれたやつはその場で軽く自己紹介をして、前に出てこい。必要書類を渡す。まずは1番…エトムント。」


すると、一番前の席に背筋を伸ばし座っている…まあ、ガリ勉臭漂青年が立ち上がる。あークラスに大体一人はいるタイプの内気な奴だな…


「はい。僕はエトムントです。よろしくお願いします」


それから続々と名前を呼ばれ、挨拶をし前に紙を取りに行く。すでにクラスの半分ほどが終わり、後半だ。挨拶で笑いを取ろうとした猫耳の少年はめちゃくちゃ滑っていたな…エルフの少女は声が小さすぎて何を言っているか聞こえなかったし、ドワーフは無口すぎて面白くない…

さて、そんな俺はどうするかって?…それはもちろん無難に終わらせるさ。名前を言って、よろしくお願いしますと言っていけばいいんだろう?


「次…えーと…ん?苗字が消されてるな…まあ、いい。ディル」


「はい。ディルと言います。よろしくお願いします」


なるべく記憶に残らないよう、あっさり気味に挨拶をする。


「おう。みんなーディルは筆記試験を全て満点。模擬試験をAで突破した天才だ。わからないところがあったら、ディルに聞けー」


 ………。


筋骨隆々な男、コルクがそんなことをいうものだから、クラスから音がなくなり皆が俺を見てくる。一番奥だったので、みんなが俺を見上げてる形になる。うぅ…早々に紙をとって次のやつに自己紹介させよう…

俺が席を立って教卓に近づくまで、皆が俺の動きに合わせて首を動かしてくる…見るなよ!俺は教卓までくると、コルクは前の生徒より数倍はある紙束を渡してきた。


「ほれ、これだ。えーと…「武器管理委員」「生徒会」「魔法委員」「風紀員」…うぉっ!めちゃくちゃ勧誘来てるな。まあ、併用はできないから自分にあった委員を探せ。次〜、ヨルン!」


一気に視線が集まってくる…おい…名前呼ばれたやつ!挨拶しろよ…

俺は紙束を落とさぬようゆっくりと、さっきの上の席まで運ぶ。数人の自己紹介が終わると、視線も俺から外れ始めた。俺は大きくため息をつく。


「次ー…カフ=B=カシオペア…ま、まさか!」


「はい。カフという。よろしく頼む」


俺と同じく静かになるが、今回は何か空気が違う…尊敬とか…そんな空気だ。俺のは怪しむような…

数人の女子は熱い視線をカフに送っているようだ。モテやがって…そんなにカッコいいのか?

それから興味がなくなり紙束に目を通していく。勧誘は置いておいて、学校に関する書類だ。時間割や部屋割りの紙などに目を通す。すると、全員の自己紹介が終わようなので、視線をコルクに戻す。


「では、今日はこれで終わりだ!配布した紙に部屋割りが書かれているから、ちゃんと部屋に行けよ〜。必要事項も紙に書いてあるんだ、いちいち説明はしない。以上」


そう言うとコルクが入ってきた扉を開け、出て行った。すると、皆緊張が解けたのか息を吐くのが聞こえる。緊張していたのか…可愛いやつらめ…そうだ、先に部屋に行こうか。確か地図があったな…

もらった書類から学園の地図を引っ張り出す。しばらく地図とにらめっこをしていると、誰かが肩を叩いてくる。振り返ると、そこには腕を組んでため息をつくカフがいた。


「ディル!さっき会った時に、同じクラスだと伝えてくれ。それにしても、武才だけじゃなく学才もあるとはな!」


「あ、そういえばカフのお兄さんに会ったぞ。」


「おお!そうか…素晴らしい人だったろう。父より尊敬しているからな」


「そうか…なあ、こ「カフ様。さあ、寮に行きましょう。そのような農民風情と話しては…」


俺の言葉を遮って声をかぶせてきた方を見ると、そこには俺をゴミを見るかのような目で見てくるケルがいた。カフはケルの態度が気にくわないのか、何かを言おうとするが俺が遮る


「やめないか。ディルは私の友「カフ様。御学友のお誘いです、どうぞ」


「さあ。行きましょう」


「あ、ああ…」


ケルは笑顔でカフにくっついていく。あーきもちわる…胸糞わる…吐き気する…はぁ…

あたりを見渡し誰も見ていない事を確認すると、俺は机の上の紙を「黒い吃驚箱」を使う。右手に発動させるとすぐに後ろから声が聞こえた。小さくか細く…いつもなら聞き逃すほど小さな声だったが今の俺にははっきりと聞こえた。


「闇魔法…」


俺はすぐに振り返り、声を出したものを見る。「黒い吃驚箱」はいつも手にひらより、小さくしていたので周りから見れば手をかざすだけで消えるように見えるはずだし、 さっきあたりを警戒したはずなのに…後ろには緑色の目に尖った耳、ダボダボな布切れを縫い合わせたような服装のエルフが立っていた。まあ、エルフかどうかはわからないがエルフのイメージとマッチしている


「あなたは人間?…」


「何を言っているんだ?…」


「闇魔法を扱える人間はいない…闇魔法は悪魔の魔法…」


「君は?…」


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