19話 見送りと旅立ち
俺は今は衣服に着替えている。起きてから、まだ10分程度だが完全に眠気は覚めている
現在の時刻は3:40分で出発する虎の刻まで20分程度しかない。…と言っても荷物を背負って行くだけの状態なのだが…
「よし…さて、少し早いけど行くか…」
俺は机の上のリュックを背負うと、剣を腰に刺し杖を内ポケットにしまう。年齢のせいで、身長が低く剣が異様に長く見えて不格好だが、仕方ないな…さあ、一人旅だ!
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「では…行ってきます…」
一人広い玄関で一礼をする…俺を見送るのは、誰もいない。まあ、まだ朝早く誰も起きていないのが普通か…
でも、一人は寂しいな…
俺が玄関の扉を押そうと力を込めた時、一瞬誰か人の気配を感じ振り返る。真っ暗な闇の中、綺麗な白い肌の小さな女の子が立っていた。アンカだ…確かに整った綺麗な顔立ちだ…しかし、アンカじゃない…気配が違う…
俺はそっと、女の子に近づく。すると、そっと女の子は口を開いた…
「ディル…大きくなったな…」
「え?…」
「ハハハ!父を忘れたのか?」
「ま、まさか…」
子供特有の無邪気な笑みではなく、大人の余裕のある…いや、愛する子供に向けるやさしい笑顔だ…この笑顔には見覚えがある…忘れることができない…しかし…まさか…
「お父さん…」
「お父さん…か。最初はパパと言って欲しかったが…仕方あるまい。」
「で、でも、なぜ…」
笑顔から急に険しい表情になると、早口で続ける。
「すまない。今の時間を大切にしたいが、この子の魔力が持たない。私はいつでお前の中にいる。それと、妹は大切にしてやりなさい。特にこの子は…くっ…時間だ…」
女の子はそっと俺の胸を叩くと苦痛そうな顔を浮かべ、すぐに倒れた。俺はすぐにアンカの小さな体を抱きしめる。きちんと息はしているようだが、先ほどまでのデュークの雰囲気は無くいつもの可愛らしいアンカが寝息をたてて眠っている。
このまま放置しておけないので、アンカを起こさないように抱きかかえローズの部屋に寝かせてきた。なぜ、アンカの体を通して死んだはずのデュークと会話ができたんか…わからない…。アンカか…不思議だ
しかし、逆に考えれば最高の見送りがあったんだ。デューク…短かかったけど…懐かしい…
再び玄関まで戻ってくると、靴紐を固く結び、立ち上がる。そして、胸を張って息を大きく吸い込む。
「…行ってきます!」
出来る限り、精一杯…聞こえるように。
俺の中に居るデュークに聞こえるように
俺を育ててくれたローズに聞こえるように
俺に知識を教えてくれたシリウスに聞こえるように
俺を鍛え強くしてくれたウォッカに聞こえるように
そして…
「…いつか、みんな俺の力にしてやるよ…」
俺は自然と笑顔になる…ニヒルな笑みで玄関の扉を開く。




