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22話 T

俺は会議室から出ると食堂に向かう。

俺に多くのことを教えてくれないのなら俺は俺なりにやれることだけをやろうと切り替える。正直今帝国について知ったところで俺が何かできるわけでもない。それに俺はどうせ成人すれば自由になれる。ローズには育ててもらったが、仕方ない。周りから見れば良い母親ではないかもしれないが、俺にとっては大切な母親だ。そうだ、自由になったらマリアを探そう…それとまたあの屋敷で暮らそう…。


「グルゥル…」


低い鳴き声が聞こえたので思考を止め顔を上げると、そこには大きな馬の顔があった。突然のことで驚いてしまったが、よく見ると、俺は馬小屋に来ていたようだ。自然とここに来てしまったということか…

俺は頬を舐めてくる黒馬の顎の辺りを強めに撫でてやる。黒馬が気持ちよさそうに目を細めながら顔をこすりつけてくる。


「そういえば、お前には名前がないのか?」


「グルルル…」


『名前はありません。主人権限で名を授けることができます』


「そうか、ならお前に名を授ける!そうだな…マスタング。お前はマスタングだ!」


「グルルルルルゥゥゥ」


俺がそういうと、黒馬…マスタングは頭を上げ大きな声で鳴く。いや、吠えた。その声は少し嬉しさを感じれた。俺は柵をよじ登ると、マスタングの背中に飛び乗る。すると、マスタングが後ろ足で立ちあがり嘶く。そのまま柵を乗り越えようとするマスタングを抑えつつ俺はそっと背中から降りる


「ごめんな、いつかは出してやるからそれまで待っていてくれ。」


「グルル…」


マスタングが小さく鳴くので首のあたりを優しく撫でてやる。

少し気持ちが沈んでいたが、マスタングのおかげで気はらしはできたと思う。さて、新しいスキルを入手たいところだが今殺人が起こればアンカの誕生会に影響がある可能性があるのでここは我慢だ。

では、今から何をするか…それはスキルの検証だ。所持しているスキルの中で闇魔剣士はどんな影響があるかわからない上に、スキルレベルが高すぎるので放置だ。まあ、とりあえず火魔法だな


『火魔法で使用できるスキルを参照できるよう設定しました』


俺はステータスボードを開くと、火魔法をタップする。すると、幾つかの項目が現れた。


ーーーーーーーーーーーーー

・火魔法

 魔力により火を生み出す魔法。比較的魔法適正は低い。

★使用可能なスキル


松明(トーチ)

火玉(ファイアーボール)

火矢(ファイヤーアロー)

火蛇牢(ファイヤープリズン)


うーん…思ったより少ないな…これが全部なのか?…まあ、仕方ない。一つ一つ見ていくか…


松明(トーチ)

 照明として使われる魔法。火魔法の入門用。魔力に応じて燃える範囲が違う。

火玉(ファイアーボール)

 初級魔法の一つ。火属性の魔力を球体状にし、飛ばすことができる。

火矢(ファイヤーアロー)

 初級魔法の一つ。火属性の魔力を矢のような形状にし飛ばすことができる。

火蛇牢(ファイヤープリズン)

 初級魔法の応用。炎でできた蛇が対象に近づくと渦を生み出し対象を閉じ込める


ほほ…やはりスキルレベルが2ではこんなものか。まあ、十分使えるだろう。さて、魔法といえば杖というイメージが強いがシリウスからもらった杖でも試してみるか。っても使い方がわからないんだよな…


『お教えします。魔法杖は魔法の発動をサポートする武具です。メリットとして発動効率化、発動速度の上昇、消費魔力減少などです。デメリットとして一度に一つの魔法しか使えない、杖の先から魔法が発動するので避けやすかったりといろいろありますね』


そうか……まあ、消費魔力を抑えられるならなるべく杖を使用した方がいいか。それに威力が上がるのもいいことだ。デメリットも大したことないしな。少し試してみるか…

まずは杖なしでやってみるか…俺は無詠唱で松明を使って見る。ん?…変な感覚だな…


『お教えします。現在使用している魔力は火属性の魔力です。』


おそらくあの違和感は普段使っているのが黒魔法で、黒属性の魔力だから?てか、黒属性でいいのか?まあいいか。

魔力にもいろいろあるんだなと思っていると自分の指先に小さな火が灯った。ろうそくのような火だな。少しずつ魔力を指先に集中させていくと指が炎で包まれた。


「あちちち…ん?いや、熱くない?…自分の魔力だからか?」


魔力をかなり込めると一気に炎が身体中を包み込む。って、ここは馬小屋だから燃えるぞ!

すぐに魔力を抑えると、全身の炎が徐々に指先に向かっていく。これはこれで強いんじゃないか?体全体に炎を纏って敵に抱きつくとか?

さて、魔力を完全に止めると炎が消えたので、次は腰に差した杖を取り出し再び無詠唱で発動させる。すると、魔力が手を伝って杖に入り込むと杖の先から勢い良く炎が噴き出した。突然のことで後ろにいたマスタングが俺に近づいてくる。すぐに魔力を止め炎を消す。


「すまない、マスタング。びっくりさせたな。俺もびっくりしたから許してくれ」


そういうとマスタングは大きく鼻息を吹きかけてくる。まるでため息のようだな…すまないって。

それにしても全然魔力を使ってなかったのにここまで火力が出るのか…これは制御できるまで杖は禁止だな…


『お伝えします。使用した魔法杖『星守り』の性能の影響です。まだ、解放されていないので性能の10%もでていません』


まじか!?これでまだ10%未満ってことはもっとヤバイのか…それと初めてこの杖の名を聞いたな。『星守り』か…なんか『星斬り』と似ているな。いや、関係あるのか?…それに『解放』とか言っていたな…


『……』


いつもならここで説明をしてくれるのだが、今回は説明されないようだ。まあ、とりあえずこの杖は緊急時以外の使用は控えよう。いや、禁止だ。

俺は杖を腰に差し直すとマスタングをそっと撫で、柵を飛び越える。そろそろ戻らなければ怪しまれるだろう。マスタングが名残惜しそうに見つめてくるが。軽く手を振るとそのまま馬小屋を出て城に戻った。



薄暗い一室。部屋の明かりはゆらゆらと揺れるロウソクが大量に並んでいるだけだ。そんな部屋に病的なほど肌の白い銀髪の男が豪華な椅子に腰掛けている。その椅子の正面…つまり男の正面には片膝を立て座っている黒髪の男がいる。


「わかっておるな。今度王都で開かれる誕生会とやらで例のものを回収してこい。」


「わかってるっつーの。何人か食べるつもりだし〜」



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