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21話 T


「確認をするぞい」


シリウスが指を弾くと何もなかった机の上に一枚の紙が現れる。どうやらアンカの誕生会が行われる大広間の図のようだ。かなり広いが、結局貴族共の社交の場なんだろう。それにしてもこの場にアクィラがいないのはなぜだ?…

疑問に思った俺は隣に座るウォッカに小声で尋ねる


「なぜお父様がいらしゃらないのでしょうか?…」


「そりゃ、あいつに話したらややこしくなるに決まってるからだ。それにあいつは次期国王だぞ?そりゃ、いろいろ…ってお前に話しても意味ないか。まあ、とーちゃんは忙しいってことだ」


ウォッカは話を無理やりまとめ笑顔で頭を撫でてくる。

そうか、そういえばアクィラはローズと結婚したんだから次期国王なのか。そりゃ、いろんなところに挨拶しなきゃダメか。


「アクィラが居ないからお前にも話ができるんだよ。子供たちは子供たちで場所が違うからな。だから、子供なお前にアンカを守ってもらうんだよ」


「なるほど…理解できました。お父様は僕が嫌いですからね」


俺がそう言うと、ウォッカは複雑そうな表情で再び俺の頭を優しく撫でる。

ウォッカと話している一瞬の隙に紙の上にチェスのような白い駒が並んでいた。どうやらこの駒がこの場にいる人たちの立ち位置らしい。そして、幾つか黒い駒が並んでいる。


「帝国の連中がどう動くかはわからないが、とりあえず見つけ次第視界の中に入れときゃいいんだろ?」


「そういうわけにゃいかんじゃろうのぉ?シリウス」


「そうじゃ。ったく、今回の目的は話したじゃろう…はぁ…」


「これで何度目ですか。さすがに私も暇ではありません。本日は確認のみということで来たのですが」


「そうじゃ。今回はあくまで確認するのと、ディル坊にここにいる人間の顔を覚えておいてもらうことだけじゃ」


「どういうことでしょうか?…」


「直接アンカが狙われる事はないとはいえぬ。そこで何か怪しい動きがあった場合、ここにいる人間にすぐ知らせるのじゃ。」


「なるほど…わかりました。」


さっきウォッカが言っていたが子供たちと大人は場所が違うならアンカが狙われた際は子供たちの中にいる俺の方が気付きやすいということか。シリウスは俺にうなずくので俺もうなずくと満足そうな表情で視線を逸らした。


「さて、アンジュはカラーの発明した魔法広域化絨毯に『魔法の発動無効』の魔法をかけ続けてもらう。そしてチャールズ。お主はやってくる貴族の管理に出される食事や飲み物の管理じゃ。怪しい人間はすぐに報告し、食事等の毒物対策は徹底せい。ワスプは、貴族共の顔を見て犯罪者が混じらないか見てもらう。また、何かあった場合お主のスキルを頼む。シャルソー。わかっておるな。殺すのではなく捕まえるのじゃ。そして、ティコよ、例の法衣を着て来てくれ。」


「そ、それは…王城での魔法の発動を許可するということですか?…」


「そうじゃ。極力控えてもらうがの。さて、最後にディル坊じゃが、アンカの周りを警戒してくれ。無理はするでないぞ?…」


「わかりました。」


俺は真剣な表情でシリウスを見つめながら返事をする。シリウスも満足そうに頷く。ウォッカについては何も言わなかったが、二人ならすでに話す必要はないということか。皆もそれぞれ頷いているので、わかっているのだろう。ここまでするということはアンカの誕生祭に何か起こる可能性が高いんだな。それに帝国か……


「さ、話は終わった。皆、そこに居るのが噂の子ディル坊じゃ。」


シリウスがそう言うと皆が俺の方を見つめる。どういうことかわからないが、こんな大物たちに見られるのはあまり好きではないな…ここは自己紹介か?…


「噂の子というのはよくわかりませんが、皆様初めまして私はディルと申します。宜しくお願いします」


「ほぉ…この子がシリウスが大事にしておる子かねぇ…確かに只者じゃない雰囲気だねぇ。私はアンジュだよ。おばあちゃんとでも呼んでおくれな。」


アンジュは優しそうな笑みを浮かべ俺を見つめてくる。軽く頭を下げると、風を切る音が聞こえたので腰の剣を抜くと、クナイのような刃物を弾いた。弾いたクナイはウォッカがキャッチする。俺は投げた本人に剣を向けながら剣を構える。


「っと、悪りぃ。そんな警戒すんじゃねーよ。俺はワスプだ。ったく、こいつ本当に6歳なんすか、ウォッカさん」


「そうだ。俺も六年間ディルの成長を見てきたしな!って、お前いきなりナイフを投げるんじゃねーよ!」


「俺のナイフを見もせず剣で弾くやつですよ?」


「いや、弾けなかったらどうするつもりだったんだよ」


「それもそうか!忘れてました!」


「このバカ野郎!」


もしワスプがワスプの近くにいたらゲンコツが落ちていただろう。それ以外の人間は俺のことを視界に入れているだけで何も話しかけてくることはなかった。正直信頼はできないが、シリウスたちがここまで心を開いているのなら大丈夫なのだろう。まあ、俺は俺なりに警戒をしておくか…

俺は剣を鞘に戻すと、軽くワスプに頭を下げる。ワスプの言う通りこの歳でここまでの動きは化け物か……


「この度は私の義妹をどうかよろしくお願いいたします」


俺は深々と頭を下げる。全員に影盗聴をかけたいがシリウスの前では下手なことができないので諦めた。


「はぁ…まあ、良い。皆もご苦労じゃった。」


シリウスがそう言うと、皆席をたち部屋をいでていく。全員が去ると、シリウスが再び深いため息をつきながら、俺を見つめる。俺はそっとシリウスの方へと近づく。


「ディルよ、お主には伝えておらんかったな…今回どうしてもお前を出席させてやりたいとローズが駄々をこねての…まあ、お主なら大丈夫じゃと思うが…なんにせよワシらが着いておるからそんなに心配せんでも良い」


「不安もありますが、妹くらい守ってみせますよ」


「ほほほ…その息じゃ。さて、詳しく話すぞ。よく覚えておきなさい」


「はい…」


「まずお主の素性は全て伏せておくこと。偽名も用意した。ディル=アーノルド。アーノルドとはワシの冒険者ギルドでの名じゃ。貴族なら誰もが知っておる。ローズの妹の子としても良いが、バレルとややこしくなるからの…お主はワシの孫ということにしておく。それからどのような輩が来るかわからぬ。子供でもな……」


「わかっています…それで、私にも詳しい話を教えてください。 帝国について」


俺が一拍置いてから帝国と口にすると、シリウスの表情が険しくなった。だが、何度も俺の前で『帝国』と言っていたしそこまで隠す必要はないと思うんだが…


「そうじゃな。だが、ワシの口から話さんでも大きくなれば自然とわかるじゃろう。さあ、もうお昼じゃ…昼食でも取ってくるといい」


「はい…」



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