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2話 気まぐれな吸血皇帝とディル

俺は山田(ヤマダ) 景虎(カゲトラ)だ。まあ、記憶ではだが。

俺は今、毛布を掛けられ籠に入っている。自身が赤ん坊ということは、理解しているのだが…何故赤ん坊になったのか、何故ここに居るのか分からない。

まあ、十中八九親に捨てられたんだろう。毛布が暖かい…日はもう沈み真っ暗な闇が俺を包む。だんだん意識も薄くなってくる。気温が一気に下がり体温が奪われていく。

死を覚悟した時、誰かが近づいてくる足音が響く。俺は少しだけ希望をもって声を出した。声帯が未熟なせいで言葉は出ない。


「あ…あーあ…」


足音は俺の声に気付いたのか近づいてくる。そしてしばらくすると、足音が止んだ。俺が顔をあげると、俺の希望が見事に砕け散った。俺のしっている人とは何かが違った…銀?いや、金色の入った美しい白髪に綺麗な青い瞳、服装も黒いコートに裏地は鮮血のようにきれいな赤。整った顔立ちだが、人とは思えないほど顔が白かった。病人かと思ったが、頬のコケなどもなく、健康体のようだ。男は俺を見て軽く笑った、その笑顔はとても冷たい冷酷な笑みに感じた。その時、唇から鋭く白い伸びた二本の牙が見えたからだ。


「ほぉ…人間の子供か…」


「どうなさるので?ロード様。」


男の肩にとまっていた1mはある蝙蝠が俺を見つめながら、男に聞いている。男は綺麗な手を軽く頬に置き、考える素振りをし、そっと口を開く。


「どうやら捨て子のようだな。俺が育てよう。」


「ですが、ロード様。もうすぐ勇者がやってくるのですよ?」


「いいのだ。私が通りかからなかったらこの子は死んでいた。それで、勇者との戦闘なり、この私が敗れたとして、この子が勇者に殺されようがそのような運命だったということではないか?どうせこのまま放置しても死ぬだけなら、なおさらな。」


「年をお取りになりましたね。」


「なんだ?不満か?」


「いいえ。滅相もございません」


「ハハハ。まあ、何人もの女の血を飲んできた。そのせいで生まれるはずだった子供の運命を奪っていたのなら、あの世で償うのだろう。なら、この子供の運命を繋ぐのもたまには、いいだろ。気まぐれでもいいのだ。それも運命だ。」


「ロード様…」


男はそっと俺を抱きかかえると、どこかへ連れて行った。男の胸の中はとても冷たかったが、その冷たさが居心地が良かった。



目を開けると俺は大きなベビーベッドに横になっていた。首は座ってるようで身動きは取れるがまずは周囲を確認する。大きなベッドが横にあり、どうやら誰かが寝ているようだ。窓が開いていて日差しが入り込んでいる。小鳥の鳴き声がとても気持ちいい。部屋は広く、物はあまり置いてない。おいてあるものは、机に一輪のバラが飾られた花瓶だ。

見ていると段々と自身の空腹を思い出してきた。俺は耐え切れず大声で泣いてしまった。

いや、これは仕方ない!俺は今現在赤ん坊なのだ。泣いているとすぐに、隣のベッドに寝ていた誰かが起き出し俺を見てくる。あれは俺を拾った男だ。どうやら困っているようで、ベビーベッドの俺を見てはうろうろとし始める。


「おおー!泣かないでくれー!何が欲しい?あー喋れないのか!ど、どうすればいいのだ!?あ、じい!じい!来てくれ!!」


男が叫ぶと、すぐに扉が開かれ執事服を着た初老の男が入ってきた。男はゆっくりと、俺に近づく。

初老の男は俺の目を見ると、軽くため息をつく。


「これは腹を空かせているのです。どうやらこの子は、あまり泣かないこのようですが…」


「そ、そうなのか!よし!じい!食事にしよう!それで、子供は何を食べるのだ?女児の肉か?それとも血か?」


「違いますよ。まず、歯がありませんし」


「で、では何を食べるいうのか!歯がないのであれば、血は飲めよう?よし!」


「どこへ行くのですか。赤ん坊は血は飲みません。それにこの子は人間の子供。吸血鬼ではありませんぞ。そうですな…そういえば、先日来た女が乳がでるなど言っていましたし連れてきましょう。」


「そうか!えーと…マリアだったか!呼んでくれ!」


「はい。では、この子を抱きしめていてください。では…」


初老の男は足音もなく、歩き部屋を出ていった。男はそっと俺を抱きかかえる。冷たい…


「おお!やわらかいな!爪一本で殺せてしまいそうだ。えーと…そうだ。名がなかったな…えーと…ディルだ!本当なら私の名を与えてもよかったが…もしこれから私のもとを離れた時、私の名がお前の邪魔をしたくはないからな」


ディル…俺の名はディルか!

自然と笑顔になる俺を見て、男は俺を抱えたままくるくると回りだす。


「そうだ!ディルよ!私も自己紹介をしなくちゃな!私の名はデューク。吸血鬼皇帝(ヴァンパイアロード)だ。っても、赤子だからわからないか!まあ、記憶に残らぬ方が良いか?」


俺はもう記憶に残っている事を伝えようと首を振るが、それをどう解釈したのか満面の笑みなり再びくるくると回りだす。いい加減…気持ち悪い…

限界に達するところで扉が開き、先ほど出ていった初老の男が入ってきた。その後ろには赤髪の女が入ってきた。


「おお!マリア!乳が出るとか聞いたがどうだ?」


「ええ。ここに来る前に子供を産みましたから…」


「その子はどうなったのだ?…」


「ここに来る理由となりました。」


「そうか…すまない…思い出させてしまったか…」


「いいえ。噂とは違いここで何不自由なく生活し、そのおかげで少し気持ちに整理ができました。これもデューク様のお蔭です…死にそうだった私を助けてくださりありがとうございました」


深々と頭を下げる赤髪の女に、デュークは俺を片手に抱き、空いた手でそっと頭を叩く。ポンポンといった感じか。


「気にするな。ちゃんと交換条件で血をもらっているしな。等価交換だ…それですまないのだが…」


赤髪の女が顔を上げると、デュークはそっと俺を差し出す赤髪は驚いたような表情をするが恐る恐る俺をデュークを受け取る。おお!暖かい…


「こ、この子は…」


「捨て子を拾ってな…まあ、育ててみようかと…それでお腹が減っているようでな…」


「そうですか。では、乳を与えましょう。」


赤髪はそっと俺を抱きしめたままデュークの寝ていたベッドに腰を掛けると、器用に服を片手抜き胸を出す。で、でけぇ…

そのころには初老の男は空気を読んでい出て言っていた。俺は本能に従って乳をのむ。味は薄いが腹を減っているせいか、とてもうまく感じた。

それを満面の笑顔で見てくるデューク。少し気まずいが本能に従わせてもらう。


「おいしいかー?ディルよ」


「ディル?」


「ああ!この子にそう名付けたのだ。よいだろ?」


「そうですね。それにとても元気な子ですね…」


「そんな顔をするでない。そうじゃ、その子を育ててみてはどうだ?乳が出るのもマリアだけだしな。まあ、たまに私にも抱かせてくれると嬉しいが…」


「ふふふふ。ありがとうございます。この子は、ステータス確認したのですか?あなた」


「あ、あなた!?…や、やめなさい!だ、だが、私はディルを拾ったのだから父親なのか?…しかし…そうか…父か!で、では…ゴホン…え〜…パ、パパって言ってごらん?」


「デューク様。お顔が赤くなっていますよ」


「バカなことを言うな!そ、そうだ!ステータスだったな!」

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