表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救国の少女  作者: ざっく
兄視点
7/9

茶番

 王との謁見の日。

 婚約破棄は、間違いないだろう。

 それ以外は認めない。絶対だ。

 父は、その覚悟を感じ取って、呆れたような視線を送ってくる。


 現在、私はまだ公爵位を継いでいない。

 面倒なので、シャルと結婚した後でもいい。

 そう言えば、「まあ、謁見次第だな」と、呑気な答えが返ってきた。


 謁見の間に入る前に、シャルに呼ばれた。

 「お兄様」

 どうやら緊張しているらしい。

 「他国に、私が嫁げるような場所がありますか?」

 「ないね」

 間髪入れずに返した。

 何故、今そんなことを考えているんだ。

 あるわけがないだろう。お前が嫁ぐのは私だ。


 謁見の間には、まあ、結構なお歴々がそろっていた。

 婚約破棄だ。それも仕方がないだろう。

 だが・・・

 「見たところ、王族と重要人物のみ集められていると見受けられるのですが、何故、ここに男爵が?」

 入った途端感じた違和感を追求すれば、

 「彼らは、これから話すことの被害者だ」

 下らない理由が返ってきた。

だったら、証言させるときだけ入れろよ。何、御前会議に参加させてんの。

 「被害者・・・なるほど。では、被害者として証言してくださるとのことですね?」


 それ以外では口開くんじゃねえぞ、てめえらごときが。


 思念を発したら、シャルがびくっとした。

 私の思念を感じ取れるのか。やはり妻にするしかない。


 それからは、茶番だった。

 証拠のない嫌がらせ疑惑。

 安物の首飾りの泥棒疑惑。

 ってか、ちょっと待て、王太子。なんで、他の女にプレゼントなんてしてるんだ。

 「彼女は、宝石を持っていないことで、からかわれ、恥ずかしくてもう夜会に姿を見せられないと泣いたのだ。そのような者がいれば、それに心を砕くのも、王族の役目だ」

 訳の分からない持論が展開された。

 それなら、都中の宝石がないと言っている女に配って回れ。

 「宝石を持っていない令嬢には、殿下が下賜されると?何の実績もない娘に・・・?」

 「私の個人財産から支出している。問題ない」


 ありまくりだ、馬鹿野郎。

 婚約者がいながら、他に宝石を贈るなんざ、お前はどこの浮気亭主だ。もっとましな言い訳しやがれ。


 また思念を発すると、今度は不思議そうに眼を泳がせるシャルがいた。


 父が、宝石を床に叩きつけた。

 いい加減イライラしているようだ。


 この品のないお嬢さんが目の前にいれば、そうだな。

 「なっ・・・何するのですか!私が頂いたものなのに!」

 私もいい加減うるさいなと思い、胸元にあったものを勝手にやってしまう。

 このくらいいいだろうと、満面の笑みを浮かべると、私の顔に見とれる令嬢を見つける。


 ……こんなのに捕まるだなんて、宝石も女も見る目がないな。


 そう思いながらも、ふと、男爵令嬢の目に視線をやると、ぐらっと、よろけた感じがした。

 ―――?なんだ、今のは。


 だが、そんな違和感に付き合っている暇はない。

 全てが空振りに終わって、王太子も、少し追いつめられているようだ。


 陛下の眉間のしわが深まっている。

 あわよくば、『救国の少女』を、籠の鳥にしようとしたのだろう?

 王太子が持ってくる断罪が上手くいけば、シャルを捕らえることができるかもしれない。

 そうすれば、公爵家は、王家に歯向かえない。

 さらに、欲しかった黒目黒髪が手に入る。


 けれど、思ったよりも、息子が無能だったようだな?



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ