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救国の少女  作者: ざっく
本編
4/9

暴かれる罪

 「なっ・・・何するのですか!私が頂いたものなのに!」


 ヴィオラが公爵に詰め寄ると、兄がふわっと立ち上がった。

 「父が失礼をいたしました。では、代わりにこれを」

 兄が胸元に飾っていた、ペンダントを差し出す。

 ルビーではないが、宝石がちりばめられ、明らかに高価なものだ。

 「えっ・・・あ、あの・・・」

 「お詫びですので、どうぞお受け取りください」

 満面の笑みでそっと差し出す兄は、無駄に格好いい。

 ヴィオラが真っ赤な顔をして、ペンダントを見て・・・・・・受け取った。

 「では、いただきます」

 唇を尖らせ、仕方がないように、ペンダントを受け取った。

 しかし、その顔には堪え切れない喜びがあふれており、愛する人からの贈り物を壊された悲しみは見えなかった。


 兄が殿下に視線を送ると、嫌そうに顔をしかめて、また話し始めた。

 「さきほどの宝石を持っていたという侍女の名前を控えています」

 殿下が無理矢理話を元に戻した。

 宝石の価値は、今は関係ないと言うことだ。

 多分、後から王妃様より厳しい教育がなされるであろうが。

 「その夜会の日付と、お名前を教えていただけるかな」

 公爵が帳面をまくりながら言った。

 「その侍女は、宝石を持っているところを見つかり、自主退職しているはずです」

 そう言いながら、名前とともに夜会の日付を告げると、公爵は首をひねる。

 「その日、その侍女にはついてきてもらっていない」

 「……え?侍女を、記録しているのですか?」

 「ああ、そうなんだよ。ルイスについていきたがる侍女が多くてね。うちの家令が記録付けて、今日は誰だと順番に回しているんだ」

 ルイスは、次期公爵が決定しているにも拘らず、婚約者がいない。

 ついでに、気さくなので、人気なのだ。

 「その記録も、怪しいと言うことになるね?」

 にっこりと公爵が笑えば、殿下は、無表情を保ったまま、外に合図を送った。


 3人の男が入ってきた。

 どれも、町で働いているだろう、たくましい男性たちだ。

 「では、最後に彼らからの証言を」

 3人の男性は、何故か、私の顔をじろじろ見てくる。

 「あ~、確かに、このお嬢さんでしたね。俺らに依頼してきたのは」

 ……何の依頼だろう。

 「彼らは、ヴィオラを襲おうとしたんだ」

 殿下が大きな声で言った。

 王と王妃が、その言葉に大きく反応する。

 「なんだと・・・!?」

 その反応に気を良くしたらしい殿下は、そのままの調子で続ける。

 「私の名前でヴィオラを呼び出し、この男性に襲わせ、穢してほしいと依頼したのだ」

 「待ちなさい、エルクハルト!それは……!」

 王が今までにない表情で叫ぶが、聞く耳を持たない。

 私は、多分、真っ青で、震えが止まらなくて・・・それを見た殿下は、さらに畳みかける。


 「君は言ったそうだね?穢れた血は、穢れたもの同士・・・」


 ガターン!


 兄と父が立ち上がった。

 「陛下・・・」

 父の笑みが消えた。

その声で呼びかけられて、陛下は、目に見えて、びくっとした。


 兄が上着を脱いで、私にかける。

 そっと、肩を抱き寄せてくれた。


 「爵位を返上いたします」


 「待て、フィナンシュ!この・・・エルクハルト、お前は国をつぶす気か!?」


 陛下が、すごい勢いで殿下を叱責した。

 「え、私ではなく、シャルロッテが・・・」

 「お前はもう口を開くな!」

 ものすごい怒声だった。

 「フィナンシュ、話を聞いて欲しい」

 「さっきまで、聞いていましたよ。ずっとね」

 声だけはに柔和なものに戻ったが、陛下には、全く安心できない状況のようだ。

 「エルクハルトには、教えていなかったようだ」

 「この侮辱、知らなかったで済まされると?」

 全く敬語を使わない兄にも、狼狽したように眉間にしわを寄せる。

 「いや……」

 陛下は、息をのみ、訳が分からないと言う顔をした殿下に顔を向けた。


 迷いは数瞬。


 「廃嫡しよう。国をいたずらに乱したとして」


 「父上!?」

 殿下が叫び、男爵と令嬢も騒ぎ出す。

 訳が分からないと。



 「静かになさって」



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