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ハルトの和食研究日誌 プロローグ

 どんな人でも大抵1つぐらいは趣味を持っているもので、俺も御多分に漏れず趣味らしい趣味を1つ持っている。簡単に言ってしまえば『料理』なのだが、この世界の基準に照らし合わせると、俺の料理は相当変わっていると言い切ることが出来る。

 

 純粋日本人であるところの俺は、出汁を利かせた繊細な旨味や醤油と日本酒と味醂を合わせて作る味、和食というものを食べて生活してきた。5年前までは。

 

 この世界に飛ばされて早5年。色々と不満はあったが、最たるものが料理だ。

 もちろんこの世界の料理だって美味しいものは美味しい。ただ、この世界での『美味』は、俺にとっては大味すぎる。調味料の絶妙なバランスや魚介キノコその他から抽出する旨味を知っている俺は、この世界のどれほどおいしい料理を食べても、どうしても物足りないと思ってしまう。


 魔境で魔獣共との戦闘に明け暮れていた時や、魔境の東側に抜け、現地の性質の悪い盗賊共と死闘を繰り広げていた時にはさすがに食事の味に気を配っている余裕は無かったが、こうして緩やかに流れる時の中では、どうしても日々の食事の味というのは気になるものだ。

 しかし、そもそも『和食』が属していた日本の文化体系どころか、日本そのものが無いこの世界に和食を期待しても無駄だ。

 最終的に俺は、ある食材・調味料は集め、ない食材・調味料は自力で製造することにして、和食の研究を始めた。何しろこちとらチート能力『投影』の使い手で魔術なら大体何でもござれな『神殺し』ハルトだ。大概の事は何とかなる。

 ……と思っていた時期がありました。


 先人の偉大さを俺は思い知った。

 醤油を最初に製造した人は、謎の塩辛いが風味豊かな黒い液体に驚いたことだろう。

 一体どこの誰が蒸した米やら大豆やらを高温に保って放っておこうと考えたのだろうか。普通腐るだろ。麹菌の素晴らしさに合掌。


 海苔の製造は簡単だった。豆腐もさして難しくない。海苔は青のりを拾って煮詰めて薄く広げて干すだけだし、豆腐に至っては塩化マグネシウム(にがり)を豆乳にちょっと加えるだけで、本命の豆腐に加えて副産物のおからまで同時に手に入る簡易且つ素晴らしい逸品だ。

 簡易。

 良い響きだ。

 醤油、みりん、日本酒、こんにゃく、納豆について俺がどれだけ苦労したかを思えば、青のり集めや塩化マグネシウムの精製なんて苦労ですらない。


 俺は、そんなこんなの和食研究に関する経過、成果、苦労をノートに書き綴っていた。理由はもちろん、この世界におけるネクストジェネレーション、くーちゃんを和食の継承者とする一助のためだ。

 残念ながら、いつかは俺も死ぬ。多分、くーちゃんより先に。しかしその時、こうして和食という一つの文化に関する記述を遺していけば、生物学的に死んでも、俺は生き残る。

 極端なことを言えば、一つの文化体系の創造者として、俺はこの世界に名を遺すことが出来る。

 そんな下心も備えつつ、俺は日誌を書いたのだ。


 珍しく、今日は1日暇だ。

 ハリカさんとカーテナとくーちゃんという我が家の女性3人衆は買い物に出てしまったし、俺も仕事は休みだからすることがない。

 

 そういう事情があって手持無沙汰だった俺は、ただ何となく、過去に書いた日記を手に取った。ペラペラとページをめくり、書かれている内容にさっと目を通すと、不思議と過去の記憶が鮮明に蘇ってくる。


 まあ、たまには過去を振り返るというのも悪くはないだろう。

短いですね。

次からは今まで通りの分量になる予定です。

『ハルトの和食研究日誌』編は、予定では合計4話の短編で、基本的にほのぼのしていると思います。そうでありたいと思います。


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