魔神来襲-02
「あのー、すいません。ギルド・カタリナ支局を探してるんですけど、道を教えてくれませんか?」
旅装に身を包む男が、道端でたむろする武装した男達に声をかけた。
何らかの討伐クエストを受けたパーティといった風体の男達は、旅装に身を包む男の全身を値踏みするように見る。
いや、実際に値踏みしていた。
高そうな服を着ているか。どの程度の旅支度か。武器は持っているか。
あまり割のいい依頼を獲得できず、苛立っていた男達は、話しかけてきた旅人の身ぐるみを剥ぐことで本日の飲み代を確保しようと考えていた。
そんなうちの一人が、あからさまに邪悪な笑みを浮かべて男に応えた。
「ああ、知ってるぜ。案内してやる。ついてきな」
「これはわざわざ、お手数おかけしてすいませんね」
旅装の男は何の警戒心も抱かず、男をついて行こうとする。
その背後で密かに武器を抜いた残りの男達。
「いいってことよ、代わりに頂くもんは頂くけどなあ!」
旅装の男を囲むように陣取る討伐パーティ。片刃の剣、大型の斧、鈍器に近い槍、ゴツゴツとしたメイス。思い思いの武器を構え、じりじりと包囲を狭めていく。
「うぅおぉらああぁぁぁ!!」
絶叫と共に武器を振りかぶる、斧を持った男。
斧は旅装の男の後頭部目掛けて、およそ人に向けていいレベルを遙かに上回る力を以て振り下ろされた。
刃先が男に触れるか触れないか、その瀬戸際の辺りに到達したとき。
「グォ」
旅装の男、ではなく、切りかかった斧を持つ男の方が、甲高い音と共に弾き飛ばされた。
殺されかけた旅装の男は、眉一つ動かさず。
殺しかけた斧を持つ男は、明らかに本来の可動域を超えた方向を向く手首を見て、絶叫を上げた。
「ガアアアアアァァァァァ!!」
旅装の男はチラリと絶叫を上げる男を一瞥すると、そこでようやく事態に気がついたかのように、平然と言葉を紡ぐ。
「ああ、なるほど。あなた達が西国名物の『ならず者冒険者』って奴ですか」
そこまで、何が起きたか把握できずに呆けていた残りの男達の一人が、今更のように怒声を発した。
「テメェ!」
しかし旅装の男は意に介さない。
「つまり、あなた方を然るべきところに突き出せば賞金が手に入る、と。いやあ、ありがとうございます。私の滞在費を工面していただけるなんて」
「何訳の分かんねえこと言ってやがんだ三下野郎!!」
片刃の剣を帯びた男が旅装の男に切りかかる。
今度は弾かれなかった。
弾かれる前に、まるで体が急に重みを増したかのように、地面に押しつけられたからだった。
「ァ? ンァオエ」
言葉を発しようとするも、圧迫された肺と動きの鈍い舌はまともに機能しない。
続けて残る2人にも同様の現象が襲った。
さらに旅装の男が地面に伏せる3人と痛みにうずくまる1人を睨むと、突如虚空にバチンと紫電が散り、4人の意識を容赦なく刈り取っていった。
ならず者冒険者のパーティは、旅装の男が『魔境の奥地』の方向から来たことの意味を、少しは考えるべきだった。
♢♢♢
「お、終わった……」
魔境を超える『魔窟』との戦いは終わりを迎えた。たかだか片付けと侮っていた俺だったが、思いの他に『魔窟』は手強く、結局俺は『たかだか片付け』に『投影』まで用いて当たることになった。
AAA級魔獣よりもこっちの方が断然ヤヴァイ。何ならエリアルデ支局長宅に『AAAAA級』を与えてもいい。そんな等級無いけど。
「ご苦労。汝の片付けスキルには目を見張るものがあるの。妾がいくら片付けようとしても散らかる一方だったというのに」
「……どうすればこんなことになるんですか?」
「解らん。自力じゃどうしても片付けられんかったからの。一応浄化魔術だけはかけておいたから、汚くはなかったじゃろ?」
虫一匹出てこなかったのはそういう理由か。
浄化魔術ほどの高位の無属性魔術を、片付けられない部屋の最低限の掃除に使うとは……。
あまりの落差に目眩がする。
クールでかっこいいエリアルデ支局長はどこに行った。
俺は真剣に『片付け魔術』の開発に着手すべきか検討を始めていた。
お気づきになられている方もいらっしゃるかと思いますが、書き溜め尽きました。ちょっと遅れるかもしれませんが、それでもまだ続けられそうですので、続けます。
この先ハーレム化の進行が予想されます。ということでせっかくなのでオーバーラップ文庫WEB小説大賞に応募してみることにしました。
受賞については全く期待していませんが、少しでもアクセス数が増えて、あわよくば批評を述べてくれるような方に巡り合えたら、と下心は大いにあったりします。




