放浪する嵐龍王-11
目を開ける。
ぼやけた視界の中に、見慣れた顔がある。
「あ、ハル起きた! エリちゃん! ハルが起きた!」
ダダダと音を立てて、くーちゃんはどこかへと走り去って行った。
くーちゃん……?
何故、くーちゃんがここに……。
しばらく考え、俺は気付き、身をはね起こした。
ここは俺の家だ。俺は、どれくらい寝ていた?
エアリアは、トルネはどうなった。
「ハル、気が付いたか。身体に異常は無いか?」
くーちゃんを片手で抱き上げたエリアルデ支局長が、俺が身を横たえていた布団の横、くーちゃんが良くトランポリン代わりにして遊んでいるソファーに座っている。
「もう大丈夫みたいです。それより、エリアルデ支局長……」
俺の視線は、エリアルデ支局長に釘付けだった。誤解を招きそうなのでより正確に言うと、エリアルデ支局長の頭頂部から側頭部にかけてに。
「ああ、これか。普段は隠しておったからの」
そこにあったのは、先の方が巻貝のようにねじれた、一対の角。『魔法の杖』の先端部分を少し広げたような形だ。
この世界に来てから幾度となく目にしてきたそれは、間違いなく龍族の証だ。
「エリアルデ支局長、龍族だったんですね」
「雷を操る黒龍じゃ。今は人のふりをしてギルドの支局長などをやっておるがの」
「ハル、ハル、エリちゃんね、こーんなでっかくてかっこいい翼を広げてね、ばっさばっさってここまで来たんだよ」
くーちゃんがエリアルデ支局長に抱かれたまま、大きく腕を広げるジェスチャーを交えて興奮気味に喋る。
かわゆい。
マジ天使。
……エリちゃんって、エリアルデ支局長のことか?
「何じゃ鼻の下伸ばして、気色悪い。クリスよ、お前の家族は変態ばかりじゃのう」
「へんたいって何? ハルがいっつもテナちゃんのことへんたいだって言ってるけど、ハルもへんたいなの?」
「……まあ、あの化け刀に比べたらハルは見劣りするじゃろうが、ハルも十分に変態じゃ」
「勘弁してください支局長、くーちゃんが変な言葉覚えちゃう」
「しかし事実じゃ」
あまりの精神的ダメージにもう一度倒れるんじゃないかと思った。
あれ? そういえば、カーテナは?
エアリアと話した日には、エアリアの匂いを嗅ぎあてて暴走し、その匂いから年齢まで割り出す気持ちの悪い変態っぷりを見せつけたあいつが、エリアルデ支局長に運ばれる俺を見て大人しくしているはずがない。
キョロキョロと周囲を見渡す。
「あふ……」
居た。
玄関のすぐ近くに倒れている。しかしどこか様子がおかしい。ビクンと痙攣しては、時折甘い声を漏らしている。
「ああ、あの化け刀な。妾を泥棒猫だのビッチだの散々罵った挙句、汝の布団に入り込んで何かしようとしたのでな。つまみ出したらつまみ出したで大暴れしおったから、止む無く電撃を叩き込んだらあの様じゃ。真正の被虐嗜好者じゃの」
カーテナ……、お前……。
「テナちゃんね、ハーハーしながらハルのお布団に入り込んでね、『主のみさおは私のものだぐへへへへ』って言ってた。ハル、みさおって何?」
……よろしいカーテナ。そんなに虐めて欲しいのなら虐めてやろう。
くーちゃんに余計な言葉をあれほど吹き込むなと言ったのに、またかこのド変態が。
「くーちゃん、みさおっていうのはね、男の子がたった一つしか持ってないもののことなんだよ。恥ずかしい言葉だから、使っちゃだめだからね?」
「はーい!」
たった一つしかないというのに、皆進んで捨てたがりますけどね。
俺は従来比2倍の重力場のイメージを練り上げ、ビクンビクンと悶えて甘い声を漏らす変態に『投影』した。どれだけ力が戻っているのかチェックするための実験台にでもなっていただこう。
「!! ああ、いい! 主様の重力場……しゅごいのぉぉ!」
ざっけんな。何が『しゅごいのぉぉ』だド変態が。死ね。氏ねじゃなくて死ね。
あまりにもくーちゃんの教育に悪いので、俺は空気の振動を完全に遮断する力場をカーテナの周囲に展開した。一名、というか一振りの刀にの喘ぎ声によって騒々しかった室内が、急に静かになる。
「……妾も種々様々な性質の人間を見てきたが、あそこまで酷いのは初めてじゃ。汝も苦労しておるんじゃのう」
「分かって頂けてうれしいです」
エリアルデ支局長のあきれ果てた表情が印象的だった。
変態が出てくるシーンを書くときが一番楽しいです。
設定が甘かった部分と、感想にてご指摘いただいた部分を改稿いたしました。
以下、お知らせなんですが、めっちゃ長いです。読み飛ばしていただいて何ら構いません。結論は下から10行分ぐらいです。
久しぶりにアクセス解析を見てみたら、(私的に)目を疑うような数字が記載されていました。狂喜したのは言うまでもなく、「これは日間ランキングにでも載ったのか?」と意気揚々としてチェックしたところ、残念載ってませんでした。「SF」の方は2pt/日、つまりお気に入り登録1件だけで載ることもあるんですが、さすがは激戦区「ファンタジー」、ヤヴァイですね。
より一層頑張ります、と言いたいところなのですが、ここで(私的に)残念なお知らせです。
私SIMの職業は大学生(仮)ということにしてあるのですが、これ、別にふざけているわけでも何でもなく、私は本当に(仮)な大学生なんです。
つまり、仮面浪人です。
通いながらの仮面ではなく、既に休学した上での仮面ですので、現時点では実質的に浪人生と何ら変わりはありません。
仮面浪人という道について、賛否両論あるのは存じております。
ですが、分かって頂きたい。ゆとり教育が見直されて新課程が始まったことで、過渡期のゆとり世代は窮地に立たされました。新課程では多くの教科が見直されています。例えば数学では「行列」が消滅し、「複素数平面」などの分野が加わりました。例えば理科では多くの用語が見直され、新しい研究成果が取り入れられています。それを悪いことだとは決して言いません。良いことに違いはありません。ゆとりゆとりと揶揄される世代は私の一つ年下の世代まで。正直、二歳以上年下の世代がうらやましいぐらいです。
恐らくは何らかの「配慮」があるものと思われますが、しかし、もし新課程の土俵で我々旧課程の人間が戦うことになった場合、圧倒的に不利であることを否定することはできません。
浪人は1年まで。一般的な認識はそうです。当然、私もそうです。親の負担を考えると1浪でも心苦しいというのに、2浪以上なんて論外です。そもそも浪人を許されないご家庭のご子息・ご息女も、私の身の回りには大勢居りました。ですので、「もし全部落ちたら」とか、「2浪したら」なんて仮定が「甘え」だと言われたら、私は何も言い返すことはできません。
2013年、私は受験に臨みました。本命の大学に行くことは適いませんでしたが、幸運にも一校だけ合格を勝ち取ることができました。しかし、やはり本命の大学は魅力的で、私の将来の夢に近づくためにもどうしても行きたいと思いました。成績開示の結果も、あと少し、といったところでした。
私は両親に「浪人させてくれ」と頼みました。ですが両親は「もし1浪して、全部落ちたらどうするんだ」と思ったそうです。当たり前の話です。いかに努力しようとも報われないことはあります。確率こそ違えど、現役であっても1浪であっても、報われない時は報われない。A判定を取って落ちた同級生だっています。
話し合いの末、最低限のリスクマネジメントを施した上での浪人として、父の提案で仮面浪人を決めました。この場合のリスクとは、もし全ての大学に落ちた時に、新課程により困難が予想される2浪目に突入するリスクを指します。ほんの少しだけ大学に行って雰囲気を味わい、その後担当教授の方との面接を経て私は休学し、二度目の受験勉強を始めました。
季節は秋。受験勉強は佳境に差し掛かり、予備校の空気も少し緊張感を帯び始めました。
溜まるストレスの解消に、と、寝る前の一時間を執筆に充てていましたが、その余裕も無くなってきました。
現時点で、本命の大学に関して合格圏内に入ることができていますが、今後は現役が追撃してくる時期であり、驕れば落ちます。私は受からねばなりません。それが高額な大学の入学金と予備校の授業料を払ってくれた両親に対するせめてもの礼儀だと思っています。
長々と綴りましたが、結論です。
受験勉強のため、今後は執筆時間を減らすことに決めました。貴重、というかほとんど唯一の娯楽でしたが、止むを得ません。
更新は大いに遅れます。今はまだ書き溜めが若干あるのですぐには遅れないでしょうが、いずれ目に見えて遅れ始めます。模試の判定如何では、完全にゼロにすることも考慮に入れていますので、停止することもあり得ます。
10月14日現在、お気に入り登録してくださった93名の方々や、その他読んでくださった方には申し訳ありませんが、何卒ご理解の程よろしくお願いいたします。
合格不合格に関わらず、受験が終わった来年春からは今まで以上のハイペースで更新できたら、と思っています。確約はできませんが。
あとがきなのに、これじゃ、本文より長いくらいですね。重ね重ね申し訳ありません。




