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放浪する嵐龍王-07

「……妙じゃの」

「どうかしたんですか?」


 龍玉を用いて事切れた魔獣に残された残留魔力を探っていたエリアルデ支局長が、怪訝そうに眉をひそめた。


「魔力が、混ざっておる。それも、一人や二人ではない。少なくとも百は下らん数の魔力がゴチャゴチャと混ざっておる。何じゃこれは」


 エリアルデ支局長の手元を見ると、龍玉が毒々しい斑模様に染まっていた。


 この世界における魔力というものは、一人一種、何らかの属性を備えて生まれつき獲得しているものだ。

 もちろんその大小や種類には個人差があるから、才能ある魔術師から魔術に頼らない剣士まで別れることになる。

 どのレベルのどの種類の魔力であっても共通の性質が一つだけあって、それは異種の魔力に対しては、さながら免疫のように拒絶反応を示すということだ。

 本来、魔力が混ざり合うといった状態はあり得ないのだ。


「これでは特定は不可能じゃな。ハルよ、こやつらの肉を保存したいのじゃが、容器を作れるか?」

「大丈夫です」


 俺は土中から引きずり出した酸化鉄を、レールガンの弾を作ったときと同じ要領で鉄に精錬し、成形して金属製の容器を作った。

 錆びるので長期保存には向かないが、一時的な運搬容器としてなら事足りるだろう。


「知り合いの研究狂いに渡しておく。奴なら何か分かるじゃろう。さて、帰るか」

「…………つかぬことをお聞きしますが、移動手段は如何様に……」

「汝の空間移動に決まっておろう。さあ、後ろを向け。妾は疲れたぞ」


 味占めてやがった。

 あなたは楽かもしれないけど、俺は理性の葛藤とか本能との戦いとか、かなり疲れるんですよ。分かってますかね。

 ……分かった上でこの人はやってるんだろうなあ……。


 俺は半ば諦めるような気分でエリアルデ支局長に背を向けた。


 すると、遠くの方に、何か光るものが見えた。目に入った。


「早ようしゃがめ。しゃがまぬのなら飛び乗るぞ」

「エリアルデ支局長」

「何じゃ?」

「あの、向こうの方でぼんやり光ってるのって、魔法陣ですよね」

「ん? ……言われてみれば、そうみたいじゃの。…………待て、あの陣、まさか……!!」

「『滅犠怒メギド』、ですよね」


 滅犠怒。設定範囲の全てを焼き尽くすまで消えない白炎を無尽蔵に放ち続ける、高等魔術の上、戦術級魔術の上、戦略級魔術に分類される魔術だ。別名を『神の炎』といい、この世界に残る伝説では、『神の炎』が使用された後には灼熱の大地以外に何も残らなかったという。

 俺が元居た世界の物品に例えて言うのならば、威力を自由に調整できる水爆だ。

 

「止むを得ん、陣を展開する! 汝はあの魔術を止める手段を何とかひねり出せ!」


 展開された3メートル程度の大きさを持つ魔方陣。エリアルデ支局長は俺の襟首を掴むと、迷わず陣の中に飛び込んだ。


♢♢♢


 浮遊感が消え去った数秒後、遠く離れたグランディア渓谷に居たはずの俺とエリアルデ支局長はカタリナ支局のすぐ近くに居た。

 瞬間移動の魔術を秘匿したがっているエリアルデ支局長。こんな目立つところに転移してしまってはバレてしまうのではないか、と俺は一瞬危惧したが、すぐにそれは杞憂だったことに気付かされる。

 ギルドは閑散としていた。誰も彼もが外に出て、上空に浮かぶ巨大な魔方陣に目を奪われていたからだ。


 俺が滅犠怒の陣を破壊するためにはカーテナの『破魔』が必要となる。しかし、輝く陣は既に発射体勢に入っていることを示していて、とてもカーテナを回収しに行く余裕はない。


「支局長! 家までもう一回転移できませんか!? カーテナがあれば、あの陣を破壊できます!」

「……無理じゃ……。この陣は、妾が直接マーキングしたポイントにしか行くことができん。汝の家に行ったことは無いからの」


 ギリッ、と音を立てて、俺は歯を食いしばった。


 やむを得ない。


 テンペスタさん、何としてでも生き延びてください。カーテナ、お前なら、くーちゃんを守ってやれるはずだ。大家のババア、あんたは普通に生き残るだろうな。

 くーちゃん、こんな時にそばにいてやれなくて、ごめん。


 もはや滅犠怒の発動を止めることは俺にはできない。ならば、次善の策を採るのみ。


「エリアルデ支局長、何でもいいので、魔術を防げる結界を張ってください。俺が、滅犠怒の威力を抑えます」

「……妾の結界魔術では、せいぜいこの辺りの人間を覆うことができる程度じゃ」

「十分です」


 俺は口を閉じ、目を閉じると、深いイマジネーションの世界に没入した。


 魔力障壁。普段体表に展開するチンケなものではなく、今回はさらに巨大、比べ物にならないほど強力であることを求められている。


 守る。

 誰も彼も、守る。

 死なせたくない人がたくさんいる。


 滅犠怒の陣が一際強く、赤く輝いたその瞬間、俺はあらん限りの力を持って魔力障壁を『投影』した。

 陣を球状に包み込む、巨大魔力障壁が展開された。


 俺は力を使いすぎた反動の頭痛のために、膝をついた。しかし目線だけは上空から外さない。


 さあ、どうなる……。

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