放浪する嵐龍王-04
「くーちゃんただいま! いい子にしてた?」
俺の正体が露見しかける大ピンチに見舞われた今日という日も残すところ後数時間。
『美女連れ込んで何してやがったんだテメエ』という男性職員による追求及びガチな呪術はかわしきったが、女性職員のヒソヒソ話という精神攻撃は直撃してしまい、今日も今日でやつれ果てて帰宅する羽目になった。
ていうか致死級の呪術放ってきたバカはどこのどいつだ。それこそ今日一番の問題だ。
ああ、くーちゃん、ハルを癒しておくれ。
君さえいればハルは明日も頑張れるのだから。
「ハル~~、ただいま!」
「くーちゃん、ただいまは帰ってきた人の挨拶だよ?」
「間違えた、おかえり!」
ああ、癒える。傷が癒えていく。
例の如くくーちゃんの頭を撫でていると、視界の片隅に黄金色の輝きが見えた。
ああ、もう……。
「主様~~、私も撫で撫でし…………」
ビタッ、と飛びかかろうと『破断』を纏っていたカーテナが動きを止めた。
どうせ飛びかかってくるんだろうなぁ、めんどくさいなぁ、と思っていた俺は、帰ってきた時点で重力場のイメージを練り終えておき、くーちゃんが近くに寄ってきた後に罠のようにして廊下の真ん中に重力場を置いておいたのだが、それがバレたのだろうか。
チッ。
「主様……、どうして……」
カーテナの瞳に涙が滲み始めた。
適当な扱いがそんなに不満だったのだろうか。普段のカーテナなら冷たくしても、「でも素っ気ない主様もいい! もっとイジメてください!」などと言い出すはずなんだが……。
しかし、変態・カーテナは俺の想定の斜め上を行った。
「どうして……主様から他の女の匂いがっ!!」
「何でその距離で匂いが分かるんだ!!」
「この匂いは……スン、若い……スンスン、二十代手前の若造ですね!?」
「何それお前気持ち悪っ」
「誤魔化さないでください!! どうして他の女の、それもロリの匂いが主様からするんですか!?」
「ねーハルー、ロリって何?」
くーちゃんはまだそんな言葉を知らないでいいの。
と、言えれば簡単なのだが、興味を持ちだした子供の好奇心を抑え込むことは至難の業だ。
基本的にくーちゃんが興味を持ったことに関しては誠心誠意教えてあげるようにしてる俺だが、しかし今回ばかりはどうしようか真剣に迷った。
とりあえず、
「カーテナ、お前は死刑だ」
「何で!?」
純真無垢なくーちゃんには必要ない言葉を聞かせた罪は重い。
お前もそろそろ疲れたろ。心置きなく(強制的に)成仏させてやる。
「くーちゃん、ロリっていうのはね、小さな女の子のことでね」
「じゃあくーちゃんもロリー?」
ロリです。ど真ん中です。
「え、ええとね……。くーちゃん、くーちゃんは、そうだね、ロリかもしれないけどね、ロリって言葉はあんまり使わないんだ。人前で言うことは恥ずかしいことなんだよ」
「そうなの? でも、テナちゃんはロリって言ったよ?」
ああ、カーテナ、貴様のせいで……。
「くーちゃん、カーテナは恥ずかしいことをしたんだ。今からお仕置きしなきゃいけない。くーちゃんは真似しちゃダメだからね。分かった?」
「うん、わかった」
「よし、じゃあ、ハルご飯作るから、くーちゃんはお部屋で待っててね」
「はーい」
変態鎮圧用重力場を消して、くーちゃんを部屋へと促す。
さて、カーテナ、貴様への刑を執行しようか。
俺が普段に倍する強度の重力場を練り上げ始めたその時、リビングからマイエンジェルの声が響いた。
「ハルー、テナちゃんイジメないでねー!」
半ば脊髄反射的挙動で俺はくーちゃんの言葉を受容し、重力場を消した。
「くーちゃん……」
「良かったな、カーテナ、海より深い情けをお持ちのくーちゃんに感謝しておけ。危うくお前は、今日から床の一部になるところだったぞ」
くーちゃんの頼みを俺が無碍にできるわけがない。たとえそれが変態に対する減刑の嘆願だったとしても。
「くーちゃんありがとねー。さて、主様、本題に入りましょう」
「本題?」
「とぼけたって無駄です! この主様から漂う他の女の忌々しい匂い。かくなる上は……、脱いでください!!」
「何言ってんのお前!?」
「主様の操が奪われていないか私がヘブッ」
カーテナが俺のズボンに手をかけてきた段階で貞操の危機をビンビン感じたので、とりあえず普段通りの重力場で制圧しておいた。
このド変態め。
変態カーテナ。まだまだ序の口です。




