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放浪する嵐龍王-02

「あれ? あなたは……」


 何の因果か、嵐龍王・エアリアが選んだ窓口は俺の担当窓口だった。

 

「……アルキドア帝国筆頭宮廷魔術師の……」

「違います」

「え、だが」

「気のせいです」

「私、あなたに」

「お客様、こちらのAランククエストには守秘条項が適用されておりますので、お手数ですが奥のお部屋までご同行願えますか」


 アルキドア帝国、筆頭宮廷魔術師。

 まずい、この女、俺を知っている。

 俺はAランククエストの依頼をねつ造して適当な口実をつけると、キョトンとしている嵐龍王殿を会議室に連れ込んだ。


「……さて、私から質問したいことがいくつかあるのですが、よろしいでしょうか、エアリア様」

「エアリアで構わない。何だろうか」

「アルキドア帝国宮廷筆頭魔術師・タカスハルトをご存じで?」

「一度、戦う様を間近で見たことがある」


 どうやら又聞きや人相書きレベルで俺を知っているわけではないらしい。言い訳の効かない、もっとディープなレベルで知られていると見るべきだ。

 この件に関しては『お願い』して何としてでも隠し通すしかない。


「二つ目の質問です。二代目嵐龍王とのことですが、失礼ですが、初代の方とはどのような御関係で……」


 嵐龍王の異名は、現役時代には風を操らせたら右に出る物は居ないとまで言われた龍族、現在では俺の尊敬すべき隣人、テンペスタさんのものだったはず。『王』とついているが、別に称号でも階級でもなく、ただの異名だ。

 もしテンペスタさんと何の関係もないのにその名を名乗っているとしたら、俺は彼の名誉のためにも、この女性にちょっとばかし『お願い』を聞いてもらわなければならなくなる。


「初代……テンペスタは、私の祖父だ」


 祖父ぅ!?

 尊敬している人のお孫さん。典型的ジャパニーズてある俺が一番逆らえないタイプの人種、いや、龍種だ。

 まさに絶体絶命。

 宮廷魔術師の過去がばれかかっているというのに、テンペスタさんの孫に対して強く出ることは俺にはできない。

 つまり、『お願い』することができない。

 

 もし、ここに俺が居るということがアルキドア帝国の耳に入るようなことになれば、行方不明の宮廷魔術師を巡ってリアナ公国とアルキドア帝国間で戦争が始まるかもしれない。

 戦争は勘弁してほしい。

 しかし何より問題なのは、くーちゃんとこの地でのんびり暮らすという俺のささやかな願いが潰えてしまうことだ。

 テンペスタさんの隣の部屋で、くーちゃんとカーテナの2人(?)と慎ましく生活し、エリアルデ支局長のもとで木っ端職員をしながら、たまに現れる高位魔獣を狩って臨時収入を得る。

 俺は今の暮らしに満足している。手放したくはない。


「あの魔力を含まない魔力障壁……、あれは神殺しの技だろう?」


 万事休す。

 そうですよねぇ。

 魔力なしで異能の力を操る輩なんて、俺か魔神のどちらかですもんねぇ。

 そりゃ、知ってる人にはバレますわ。


 そうとなれば、俺は伝家の宝刀を抜くしかない。

 

 極東の島国クールジャパンに代々伝わる、無茶なお願いを聞いていただく、もとい、対象を使役する最終奥義を見せてくれよう。


 正座し、両手を膝の前につく。後は頭を下げるだけ!


「そうです俺が神殺しのハルトです。 平和に暮らしたいんです お願いですから誰にも言わないでください」


 日本流奥義、土下座。

 念には念を入れ、俺は額を床にこすりつけて技の効力の底上げを図った。


「え、いや……」


 困惑する様子が透けて見えるようだ。フハハ。実際に俺が見ているのは床だが。


「あ、頭を上げてくれ! 私は誰にも言うつもりはないから」


 成功だ。俺のプライド一つを犠牲にくーちゃんとの生活を護れるのならば安いものだ。

 ただ、ハハハ……。

 泣きたくなるのは何でだろう。


「私はただ、あなたにお礼を言いたくて……」


 ん?

 

「ずっとあなたを探してた。3年前、あなたに助けられたときから、ずっと」


 生活の危機から一転、美女にフラグが立ちました。

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