[005] 確かめファンタ〔2〕
〔2〕
まず優先して行ったのは周辺探査である。
他の行動の地盤ともなるため、積極的に行う必要があった。
至近の周囲だけは己の足で確かめ、それ以遠に関しては偵察用イーグル(鷹)型魔導人形を用いた視聴覚共有による上空からの観察で行うことにした。効率性はもちろんのこと、危険を回避するためでもある。
魔導人形。これは【錬金術】スキルによって作られる半自動自立的動作ロボットのようなものだ。所有者の魔力をチャージすることで動力源とし、所有者の命令に従って簡単な作業を任せることができる。
今回のイーグルタイプなどは材質が霊灰銀製の高等品である。といっても、ゲームも中盤以降ではミスリルは特別珍しい素材でもなくなってしまっていたが。ミスリルは貴金属に分類される素材のため、加工には【彫金】スキルを用いる。よって、そのゴーレムとなるとスキルを複合的かつ高度に必要とし、【錬金術】と【彫金】を主軸に【魔力】や【付与】なども使っている。
そうして確かめた周辺の地形は、東から北にかけては山脈が深まるばかりであったが、西から南にかけては峰一つ越えただけで低地が開けていた。山裾には大きな森林が繁茂しており、森の先には平野があって、そして平野には人里が見受けられた。
それら人里は、森に近い辺りは小さめの村々が点在しているだけだったが、更に十五里(約60km)ほど先をうかがえば石壁で囲われた街――つまりは城塞都市――が見えた。なお、森の縁からこの街までは、常人なら歩いて二日弱といったところだろうか。今のアルシンなら半刻(約一時間)かからず走り抜けてしまえそうだが。
当面はこの街(と、その住民組織)に対しどのように接触を図るべきか、それとも接触自体を避けるべきか、方針方策を組み立てるのが目標となるだろう。




