[017] おどろくファ〔3〕 後編
※ご注意。
1シーンが長くなったため、投稿を二分割してあります。前編と合わせてご参照ください。
アルシンは、これには本心からの感心を少々なりとはいえ覚えた。言葉を応じる。
「おお、なるほど。しかし心当たりとなりますと……ふーむ。精霊術なら多少学んではおりますが、あまり使う機会もないため特にどうといった記憶はございません。申し訳ない。改めて試してみようというならば、どちらへおもむけば良いものでしょう? 精霊の集いが豊かな地点となりますと、この街近辺では」
精霊術は、別名を地形術とも呼ばれる魔術系スキルの一種で、術を行使する際にその場の精霊構成環境(一種の地形性)に応じて術の効果と規模が大きく変わることが特色だった。例えば、水場のそばであれば多量の水を用いた形の効果が発揮されるし、火山口のそばであったりすれば煮えたぎるマグマを呼び寄せられたりする。しかし逆に、人工物めいた迷宮内であったり、相反性質「魔性」や否定性質「理性」の秘境域下にあったりした場合にはろくな効果を発揮しない。また更にその逆として、助長性質「霊性」の場においてはよほどの高スキルでないと制御しきれないほどの大威力で発現してしまったりもする。そうしたピーキーな特性の代わりに、上手くハマれば少ないMP消費で多大な効果を得られるという、いわば目読みを含めた博打のような術種であった。
このように精霊術といった形で、ゲーム時の舞台世界「アリアテラ」においても精霊という要素は存在していた。しかし、神々のごとく崇められるような特別な存在ではなく(精霊を信仰する宗派は一部にありはしたが)、どちらかというと環境的な構成要素の一種、といった程度であった。精霊は現象の具現具象もしくは化身のようなものであるから、それが実在するというのならば宇宙の質量とエナジーの移ろいを指して“世界の運行を司る”といった言葉もあながち間違いではないのだろうが……。なんとも、にわかには信じがたい事柄であった。
アルシンは精霊術スキルを習得こそしていたものの(魔化装備の生産などに際し付与の元になる術法を求められることがあり、魔術系スキルも一通りの習得は行っていた)、積極的に鍛える対象ではなかったためスキル値は高くない。そのため、自然豊かなフィールド型秘境などにあっても特段の精霊識別を意識したことはなく、例えば「地脈の要」であれば視覚化も可能であったろうが、溢れる魔力の余剰光を仕分けてまでわざわざの区別を試みたことはなかった。
こうした自身の経験を踏まえた上での、アルシンの質問である。もしアルシンの知らざる手法や技術がこの地で知られたものであるならば、ぜひ把握しておきたかった。
女性組合員が勢いに乏しい声で答えてくる。
「ううーん、そうですねー……。よくある模範解答としては精霊信教の神殿で祈れば、という答えが常識的なんでしょうけれど、実のところはあそこって何か具体的に精霊様と結びつきがあるわけでもないんですよね。祝福の計測機器だってうちの組合から技術提供受けてるくらいですし。あ、これ秘密でお願いしますね、表向きは対等の技術提携ってことになってますのでっ」
てへ、つい喋っちゃったぜ、と言わんばかりに表情をかわいく作ってくる女性組合員(騙されない)。これまで横で静かに聞いていた中年男の担当員もこれには思わず、おい、と苦言を呈する始末だった。
誰ともなく咳払いとともに場が仕切り直される。
女性組合員が言葉を続けてくる。
「あと、は、そうですね。やっぱり自然の豊かな環境、この街からだと東に広がる森林系のフィールド型秘境、あなたの越えていらっしゃったという大森林が一番の候補になっちゃいます。でも、そこでも特別何もなかったんですよね?」
苦笑を浮かべながらそう締めくくる女性組合員。アルシンは黙ってうなずきだけを返した。
実際は、どうだろうか。意識していなかったために区別がついていなかっただけかもしれない。改めて「地脈の要」にでも出向いてみれば、試せることとてあるかもしれない。が、この場でそれを口にするのは愚かでしかなかったし、こんな話を聞いた以上は早々に足を向けるのも尾行してくださいと言わんばかりのやぶ蛇行為である(だからといって尾行をまくことはかえって疑念を深めさせるだけだろう)。東の大森林に出向くのであれば日数を置くか工夫を要する。あるいは状況次第では、他の地域で別の秘境域を探してしまった方が迅速に事を済ませられるかもしれない。
アルシンは、話題を次へ移すことにした。
「分かりました。これらの点に関しては追々調べながら試していきたいと存じます。ご尽力賜りましたこと、感謝を。さて、最後の項目、『技能』についてですが、これには特に疑問はありません。老師様の下で学ばせていただいていた通りのものです。この書き記された五つのスキルは、わたくしの主力とする五種で相違ありません」
己からそれを言い切る。主力スキルに関しては情報を隠匿する気はなかった。どうせ遅かれ早かれ戦い方を見物されたならば露見することだ。そんなところで下手に隠そうとして疑念を煽るような真似は愚策であった。
アルシンの戦闘力は強大であり、余人がそれを恐れることは当然である。あまつさえ力の内容まで未知とあっては到底許容できるものではないだろう。把握させてやることで、一種の安心を醸成していけるよう譲歩する。そしてまた、それを当人たるアルシンの側から積極的に開示することで、信頼関係の構築にも一助を足すことができる。いわば“貸し一つ”ということだ。
この発言には、横の中年男の担当員がさすがに食いついてきた。
ぴくり、と眉を動かすような気配の後、少々の逡巡らしき間を挟んでから言葉を発してくる。
「……そうか。それは、参考までに戦い方を聞いても? 五種の内三つまでが生産系もしくは職人系であるようだが……。魔力といっても術法使いというわけでもないのか?」
その言葉に、アルシンはしっかりとしたうなずきを返すと、解説の言も答え始めた。
「はい。基本的な戦法としては、投擲術に魔力を乗せて揮います。身につけた装備を見ていただければお分かりでしょうが、手斧も鎖分銅も多数ある小型刃片も、全て投擲用のものです。これらに魔力を圧縮して込めて投じ、標的着弾時に爆裂もしくは貫通させます。また、大型モンスターに対しては特に効果的な戦い方が可能です。あの大魔熊の死因は検分されましたか?」
と、ここで一旦言葉を切って確認の問いを投げかけるアルシン。
対し中年男の組合員は、首を横に振りながら答える。
「いや、おれはさすがにそこまで立ち会うだけの時間はなかった。解体を仕切ってる連中なら今頃はとっくに把握しているだろうが……。ああだが、妙に外傷が見当たらなかったな。それは印象に残っている。あれはどういうことだったんだ?」
その言葉に対し、アルシンは肯定のうなずきを返しながら、解説の続きを述べる。
「はい、あれは内部から殺傷しました。具体的には、魔力を暴発臨界まで圧縮して込めた投石を、大熊が噛みついてこようと大口を開いた瞬間を狙い、その口腔の奥へと叩き込みました」
と、述べながら、軽く包むように半開きした左手の掌へ、右手の人差し指と中指を立てて突き入れるような仕草を示すアルシン。解説を続ける。
「その結果は、喉首の内部から頚椎と脳幹を爆裂破砕、となります。いかな剛体を誇る大魔獣といえども、生物としての実体を備えた四足獣ですから、中枢神経の最も集中するその箇所をしかも内部から爆裂されてしまっては――」
と言い様、両手の平をばっと広げるようにして、事態のご破算ぶりを仕草で示すアルシン。締めの言葉を述べる。
「通常の外傷に対する耐久力の多寡など、関係なくひとたまりもないわけです。これはわたくしの得手たる必殺の技法が一つです。また、他の生産スキルはこの補助に使います。製薬は麻痺毒などを敵へ投じ、味方には治癒の霊薬を。錬金術は同じく敵へは爆薬や燃焼促進剤などを投じ、また味方に投じる霊薬を精製するに際して役立ちます。調理に関しては趣味です。野外であっても美味しい料理を現地調達した素材から作り食せることは至高の幸いと存じます」
一気に言いきりつつ、最後を最も力強く述べるアルシンであった。
対し聞き入っていた中年男の担当員は、情報をいっぺんに流し込まれたせいか質問するにも論点が定まらない様子であった。(思惑通りである)
「むぅ、なるほど、な。魔力の扱いに長けたならばそうした戦い方も可能なのか……。だがまさかに投石と組み合わせて内部からなどと。それが本当に出来るものなら、たしかに、ああした外傷のない倒し方も……」
うんうんとうなるように腕を組み俯いて、内向きの言葉をこぼし続ける中年男の担当員。
これは一旦放っておくかと、アルシンは女性組合員の方へ向き直り、確認の言葉をかける。
「他には何かございますか?」
「え、あ、えーと。ああ、そうです、組員証のカードには、これら項目の内どこまでを記載なさいますか? 必須項目は、上から組員等位までとなっておりますが」
言葉に詰まりながらもちゃんと質問事項を返してきた女性組合員に対し、アルシンはこれに関しては即答した。
「全て記載でお願いいたします」
「えっ」
よほど面食らったのか、その一言だけを吐いて固まってしまう女性組合員。
アルシンは催促めいて言葉を重ねる。
「なにか問題でも?」
「え、あ、いやー、その、普通皆さん能力は隠したがられるものですから。一つ二つくらいならともかく全部記載っていうのは珍しいというか、初めてかもしれません。あの、本当によろしいのですか?」
うろたえながらも、親切心からだろう、改めても確認の言葉を述べてくる女性組合員。
アルシンは少しだけ丁寧な声音で応じた。
「はい。隠すほどのことでもありませんし、証明すべき時に示し明かすことができる手段としては秀逸かと。これらの能力項目に関しては全て記載として希望いたします」
元より隠すといっても意味が薄いのだ。組合内部では計測時点で把握されてしまっている。ならば、外部流出とて時間の問題だろう。全ての組織構成員が完璧にミスなくかつ潔癖だなどと、そんな夢物語があるはずもない。
であれば、隠そうとすることによる些少なメリットよりも、任意で証明できる手段を確保することによるメリットをこそ重視するべきだった。今後、どのようなギフト持ちタレント持ちに遭遇するかは分からないが、少なくとも「元プレイヤー」を探し出すに際しては役立つはずであった。言葉だけではこちらはともかく相手が信じてくれない懸念があったのだが、この能力項目の内の特に「稀人の理」というこれが、アルシンには「元プレイヤー」のことを指し示しているように思えた。稀人と言えば「まろうと」すわなち“外部”からの訪い人のことである。これはまさしくアルシンのような「湧いて出た」身の出自を象徴していると考えることができた。
また、リスクの面に関しては、問題ない。希少なギフト四つ持ちたる“精霊の祝い子”だか何だか知らないが、そのことによってアルシンの身が狙われるとしたらそれ自体はもう防ぎようがない。前述したように情報は遅かれ早かれ組合を通して漏れる。ならば対策をこそ勘案すべきであり、そして武力的な撃退であれば自信があった。敵する者はなぎ払うのみである。よって、組員証に記載しようとしまいと、防備の面に関しては大差なく、気に病むようなことではなかった。
アルシンのはっきりとした再回答を受けて女性組合員は、いまだ少しとまどいを残した声音ながらも、了承の意を答えてきた。
「はい、承知いたしました。それでは、当書面の情報を全て記載する形にて、組員証の発行手続きに入らせていただきますね。カードの発行と引渡しには最短で一両日いただくこととなっておりますので、明日の昼以降で改めてお越しいただけますようお願い申し上げます」
そう言葉を締めくくり、最後に一礼して見せる女性組合員であった。
アルシンも応じて深く一礼を返しながら、謝意の言葉を述べた。
「本日はお手間を頂戴いたしまして誠にありがとうございました」
そんなアルシンを見て何を思ったのか、くすりと微笑しながら小さく手を振りつつ、女性組合員は短く言葉を付け足してくるのだった。
「いえいえー、こちらも楽しかったですよ。ちょっと色々びっくりもしましたけどねー」
あとは言葉なく、ただくすくすと小さく笑いながら口元を押さえているのみであった。
どうやら印象は悪くなかったらしい。アルシンはもう一度、今度は少し浅めに一礼しておいた。
これで、この部屋で行うべき手続きは完了した。
次はどうするものかと、横の中年男の担当員へ視線を移すと……。その視線に気づいたのか一瞬びくりと体を震わせた後、意識を復帰させてきたようだった。言葉を向けてくる。
「ああ、終わったのか。ええと次は一階で解体組からの報告と……。あ、いや、その前に。おいあんた、さっき治癒の霊薬がどうとか言ったか? まさか作れるのか? どの程度だ?」
その中年男の言葉に、アルシンは舌打ちしたい気分だった。流しきれなかったらしい。答えること自体は構わないのだが、後のことも考えるとひたすらに面倒くさい。
表面上は慇懃に答える。
「はい、作れます。ただ、どの程度とおっしゃられましても比較対象を存じませんもので、なんとも。わたくしが答えられることと致しましては、老師様から賜った技術は余さず習得に励んでおりましたと、その一点のみです」
そのアルシンの言葉に、中年男の担当員は少し焦ったように喋り出す。
「等級は、と聞いてもこっちのそれを知らないのか。ならあれだ、ええと傷の具合を再生させるとしたらどの程度までいける? 霊薬ってからには治癒術相当の魔法効能のヤツだよな? ここでも作れるのか?」
その勢いに対しアルシンは、あえて身を一歩引いて見せながら、答える。
「効能でしたら、手に入る素材とその鮮度や状態次第ではありますが、失われた四肢を再生させる程度であれば可能です。魔法的現象を起こす霊薬です。この街で入手できる材料でどこまで作れるものかはまだ判りません。一応ながら森を抜けてくる最中に採取してきた霊草の類いが少々ありまして、後日落ち着いたら試作してみようかとは考えておりました」
これもまた隠し続ける意味は薄い情報であるため、多少の加減は施しつつも答えを連ねる。
対し中年男の担当員は、言葉の内容に驚愕を受けているようだった。
「な……。四肢の再生……だと?」
「はい。何十年前の古傷だろうと復元再生可能です。また、大抵の病魔も治療可能です。ただし、いいですか、ただし材料次第です。当然ですが高等な霊薬ほど希少な素材を要します。また、生成に際して手間も魔力も大きく消費を伴います。総じて、量産には決して向きません。そのことをゆめゆめお忘れなきよう」
低く鋭い声でそのことを告げるアルシン。もしこの忠告を忘れて愚行に走るようであれば、その時は敵対認定を下すだけである。そして敵するものは諸共滅ぼす。アルシンは反撃に際しては容赦しない主義だった。わざわざ言葉をもってはっきりと忠告してやった以上、この一線以上の甘やかしを遇する理由もない。
まぁ大概の者は、九割の忠告なぞすぐに忘れて自分にとって都合のよいたった一割の面ばかりを見ようとするものだが。そうした意味において、アルシンという存在は凡俗の社会に対して麻薬のようなものであった。存在を一旦知ってしまったなら、手を出してしまいたくなる。だがそれは同時に破滅へ向けたカウントダウンの始まりでもある。なまなかな理性では抗しきれまい。どこまでも自業自得な話に過ぎないが。
中年男の担当員は、そこはさすがに気を引き締めたようであった。呼吸を整え直した落ち着いた声音で応じてくる。
「そうか……。まぁ、そうだな、気をつけよう。念のため聞かせてくれ、他にも注意点があったりするか?」
「はい。初めて使う素材や組み合わせにおいて、その生成薬品を試しもせずに人体に用いるなどといった乱暴な行為はできかねます。予め、動物実験を入念に積み重ねた上で、広く公募した人間相手の臨床試験と経過観察を済ます必要があります。いずれも長く期間を要する行為です。また、前述した森の霊草を用いた試作薬に関しては、いずれ組合を通して治験の被験者募集を依頼してみようかとは考えておりました。ただし、わたくしは旅を続けねばならない身であり長く一つところに留まることはできかねます。このことも、どうかお忘れなく」
要するに、都合よく簡単に薬が手に入るとは思うなということだ。これらはアルシンなりの親切心と誠意からの言葉だった。本当にどうでもよい相手であれば、わざわざ言葉を発してまで忠告してやりなどしない。
中年男の担当員は、うなるようにして言葉を返してくる。
「む、そうか。そう、だな。……なぁ、あんた自身で作る時間が取れないっていうなら、製法に関しては――」
「おっしゃられている言葉の意味を、理解なされておりますか」
そこは看過できないとばかりに、ぴしゃりと言い示すアルシンであった。実際にも無茶な言及である。師より教わったと説明している秘法を、あっさり開示しろと求めているに等しい。そんなことがまかり通れば世の技術職は全滅である。
が、アルシンにとってここは否定するばかりの箇所でもなかった。相手の弁明に先んじて言葉を差し込む。
「とはいえ……そうですね。もっと低級の、師の許しなくば口外できない秘術の内容には抵触しない範囲のことであれば。この地で入手可能な素材から新しく製法を築いた上で、この街の薬師の方々と共有できる知識もあるかもしれません」
このことは当初から想定していた展開の一つであった。アルシンは戦闘の攻めであれ負傷の治療であれ、薬品を多用する。目撃者がいればその薬品の類い稀な効能と出所について話題となることは明らかであり、隠匿し続けることは難しい。(かといって毎度目撃者まで皆殺しというのも現実味がない)
そして、所有する霊薬やその製法を求めて付け狙われるだろうことも、うざったらしいだけだった。ならばさっさとある程度は他の薬師にレシピ供給した上で量産させてしまった方が得策であった。金銭的な利益に関しては取り逃しも大きかろうが、そもそもアルシンはこの地における財貨の類いに大した価値を見出していない。目的のための必要分さえ確保できれば、後はむしろ切って応じる手札の一つに過ぎなかった。また、利益を分け与えることは安全と立場の確保にも繋がる。
中年男の担当員は、少し明るさを取り戻したかのような声音で、改めて応じてきた。
「おお。そうか、そうか。いや、その時はぜひともお願いしたい。よろしく頼むよ」
「はい。また、その時は独占の予防や薬師の方の安全確保も兼ねて、教授の場には組合員の方にも同席していただきたいと考えています。とはいえ――」
と、そこでアルシンは、あえて一度言葉を切り、おどけるように軽く肩をすくめながら、その後の言葉を続け直すのだった。
「この場でこれ以上のことを協議しますのも、さすがに筋違いではないか、と。場を移しませんか? いいかげん彼女の仕事を邪魔してばかりかと存じますゆえ」
と言い様、少し距離を置いていた女性組合員の方へ振り返って視線を配ってみるアルシン。
その言を受けた女性組合員は、黙ったまま少し困ったような笑みを薄く浮かべていた。
そうしたやり取りを見た中年男の担当員は、片手を己の額へぴしゃりと打ちつけながら、しまったとばかりに声をあげるのであった。
「おう、これはすまん。確かにその通りだ。取り急ぎ一階の部屋へ移ろう。解体やってた連中から途中経過の報告がまとまってるはずだ。売買の具体的な振り分けをせんとな。時間も押しているというのに我ながら間抜けだった。本当にすまないと思っている」
それにさっきのような話は何日か後回しにしたって構わない内容だった、と重ねて詫びてくる中年男の担当員。
アルシンはそれに対し鷹揚にうなずくと、中年男の担当員を促して、この計測登録用の部屋から辞するのであった。
その後姿を、部屋に残った女性組合員が、小さく手を振りながら扉の閉じきるまで見送っていた。
Arsine: /huh motion <Kalervo>
初の名前つき登場キャラさんがおっさんというこの切なさッ!!
(しかも主人公からは名前呼んでもらえないw)




