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1-7.キャラバン隊とカリア村

 ワリキュール王国からエランデル国は結構距離がある。交通手段に馬車を利用しても2~3日かかる距離だ。

 以前にシルビアの命を受けてエランデル国に行ったときは、行商のハウトの馬車に乗せてもらった。

 だが彼はエランデル国に近づいたところで身体を求めて襲われたことがあった。

 リンメイの力があれば逆に退治することが出来るが、同じような体験はしたくないと思った。


 ワリキュール王国からエランデルに向かう者はそう多くない。到着するまでに魔物などに出くわすこともあるからだ。エランデル国は山の麓に近いので、近づくほど襲われる確率が高くなる。

「歩いていくか」

 急ぐ旅ではない。それに野宿も慣れている。

 荒野を歩いて行くほうが距離も近いし、魔物に襲われる確率は低い。しかし食料もそれなりに持って行く必要がある。荷物を少なくするには食料も控えないと。


 リンメイは山に近いコースを選んだ。ところどころ川もある。水が飲めれば数日は体力も維持出来る。

 魔物が襲ってきたら逆に退治して肉にありつける。味は保証出来ないが。

 スラーレンに住んでいた頃は、森で狼魔獣ローウルフを倒せる力も身につけた。

 魔族が現れたら倒せる自信はないが、そのときはそのときだ。

 ワリキュール王国とエランデル国を行き来する馬車は、なるべく山沿いを避ける。魔物に襲われるのを避けるためだ。


 ワリキュールを出発して3日目。

 リンメイは馬車が近づくのを感じた。たまには山側のコースを選ぶ者もいるのかと思って眺めていると、数台の馬車が向かって走ってくる。

 馬を追うようにして近づくものがあった。フライアンアトラー、飛び蟻だ。

「馬車をフライアントラーが襲っている」


 馬車が襲われながら向かってきた。そして襲ってくるフライアントラーに炎の矢(ファイヤーアロー)を放っていた。馬車には魔術師も乗っているようだった。

 だが、フライアントラーは百匹近い。魔術師だけで防げるほど甘くはないようだった。

「蜜を奪われるな。ここまで運んできた意味がない」

「このまま走り続けていては馬が倒れてしまう」

「馬を止めて馬車を守れ」


 様子を見ていたリンメイは、ここは助けるべきと決心した。

 そして馬車に迫ってくるフライアントラーを炎の矢(ファイヤーアロー)で落としていった。

 フライアントラーが諦めて逃げていくと

「追い払ってくれてありがとう」

とリンメイは礼を言われた。

「たまたま見かけたので・・」

「この辺りに住んでいる人とは思えませんが」

「エランデルへ行く途中です」

「歩いてですか?」

「他に手段がないので」

「そうですか。ではお願いがあるんですが、エランデルまで警護を雇われてもらえませんか?」

「え?」

「申し遅れました。私はキャラバン隊の長を務めるカイトといいます。シグ領のワイナ村からエランデル国の街の先のカリア村に行く途中なんです。そこに友人がいまして、村で一緒に暮らさないかと言われ、向かっているところです」

「そう、なんですか」

「エランデルの街の先も危険だとは聞いていますが、エランデルまででも警護をしてもらえると助かります。私たちも魔術師はいますが、あなたのほうが頼りになると思い、引き受けてもらえませんか」

「私でよければ・・私もエランデルに用があるわけではないので、そのカリア村まで同行してもかまいませんが・・」

「ほんとうですか?」

「落ち着くところを探しているので」

「ではお願いします」

「はい。私は・・ワリキュールから来たリンメイと言います」

 リンメイはスラーレン出身だと名乗るのに抵抗を感じていた。いい思い出が無いからだ。


 キャラバン隊は川沿いで休憩した。水もあるし、馬を休める必要もある。

「私たちはシグ領のワイナ村に住んでいたんですが、貴族の悪政というか、それに対抗する組織が出来たりで、村に住づらくなったので、遠く離れたカリア村に移住をきけたんです。馬車には村で育てたミツバチや彼らが採取した蜜が積まれています。フライアントラーは、その蜜を狙って襲ってきたようです」

 カイトが聞きもしないのに、リンメイに話しかけてきた。

「荒原を行ったほうが魔物も出ないだろうし距離も近いようですが、馬も休ませなければなりません。そこでこの道を選びました」

「そう」

 カイトはリンメイに気遣ってくれているのだろうか。リンメイにはちょっと迷惑だった。


 夜は女たちは馬車の中で、男たちはテントを張って休んでいるようだった。

 リンメイはテントを借りた。一人の方が気が楽だからだ。

 見張りも楽だ。男たちが交代で見張りの番を受け持つらしい。

 カイトから

「カリア村に着いたら一緒に村に住んでもらってもいい」

と言われたが、村の暮らしに馴染めるかは疑問だった。

 

 ◇


 エランデルの街が近づくと、キャラバン隊は街には入らず、迂回するように進んだ。

「カリア村はエランデル国の一部らしいですが、我々はよそ者です。まっすぐカリア村に向かいます」

「はい」

 街を横目にカリア村に向かっていると、魔物が現れはじめた。

 だが、リンメイにはどれも大した魔物には思えなかった。退治しながらカリア村に向かった。


 そして無事、カリア村に着くと、カイトが村の村長と挨拶を交わしていた。

 警護してきたリンメイにも、1棟用意された。

 村長のヘンスから

「この村は山の麓なので周りには魔物が出やすいんです。なのでエランデルのギルド協会に警護してくれるハンターを頼んでいるんです」

と聞いた。

「カイトから、あなたの強さを聞きました。警護をお願い出来るなら、この村に住んでもらってもかまわない」

 そう頼まれたが

「では、とりあえずひと月ほど警護を引き受けます」

と了承した。

 ワリキュールを出て、ほとんど野宿のようなものだった。カリア村で警護をしなら屋根の下で過ごした。


 ひと月がふた月になり、しばらくカリア村で過ごしたが、このままここに定住するつもりはない。

 カリア村を出ることにして、エランデルの街に戻った。

 エランデルではオーグ討伐キャンペーンが行われることを知った。

 ギルド協会からSクラスのプレートをもらっているリンメイは、また参加してみることにした。

 そして泊まったことのある飯店『ハナ』に行き、ユリに

「泊まれるかしら」

と聞いた。

 リンメイの顔を覚えていたユリが

「はい。オーグ討伐キャンペーンがはじめるので(部屋は)埋まる予定ですが、今ならまだ空いています。奥の部屋を用意しますね」

と言ってくれた。

「じゃあ、ギルド協会に行ってくるわ」

 リンメイは宿帳に記帳するとギルド協会に行った。

 不思議に懐かしさを感じる建物だった。理由はともあれ、ここで魔力検査をしてレベルが80と知り、オーグ討伐キャンペーンに参加した。そして今まで出会ったことのないオーグという魔物の存在を知り、雅則ハーロックやユースケと相手にしたこともある。

「オーグ討伐キャンペーンに参加出来る?」

 リンメイは受付にSクラスのプレートを見せた。

「はい。じゃあ、参加名簿に記帳してもらえますか?」

「それだけでいいの?」

「はい。あとは当日の朝、協会に集まってもらえればいいです」

 リンメイは飯店『ハナ』に戻って旅の疲れを癒した。


 オーグ討伐キャンペーンも5日ほどで終わった。

 報酬ももらって、貯えも出来た。この先、どうしよう。

 ワリキュール王国に戻って雅則ハーロックたちと顔を合わせたくないし、スラーレン法国に戻っても、もう家族はいない。リンメイはしばらくエランデル国内で仕事を見つけながら過ごすことにした。


 ◇


 エランデル国からワリキュール王国に戻ったリンメイは、街の外周に黒い煙を吐きながら走るものを見た。後ろに繋がれたものには多くの人が乗っている。SLというもので国王が国の鉄道として始めた事業と聞いた。

 そして街の一部だが、街灯の明かりが油から電気というものに変わっている。雅則たちが住む館も、その明かりが灯っている。

 それらは悠介が考案・設計したものだが、リンメイは知る由もなかった。

 リンメイはその変わりように驚きながら、自分の居場所が見つからず、スラーレン法国に戻ってみることにした。


















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