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1-6.利用

 ワリキュール宮殿で雅則ハーロックと闘ったリンメイは、自分の弱さを実感し、シルビアを置いて去った。

 シルビアを失ったリンメイは、スラーレン法国に戻り、マクレスに報告した。

 マクレスはプロティナとシルビアの弟で、マクレス・エクレール・スラーレンという公爵だ。

「シルビア様が魔王に倒されました」

 雅則ハーロックが魔王とは思っていないが、マクレスにどう説明すればいいか悩んだリンメイは、雅則が魔王を名乗ったので、そのまま報告した。

「ワリキュールに魔王が?・・」

「エランデル国から来た模様です」

「エランデル国はワリキュールの王族が出て新たに作った国と聞く。ちっぽけな街だが、傍に魔王が棲む山もあるらしい。そこから出張ってきたか」

 エクレール家の長男として生まれたマクレスは、姉のプロティナやシルビアのように、いつか自分も人の上に立ちたいと思っている。そのため彼なりに国の外の情報を得ていた。

「そこまではわかりませんが。魔王ハーロックを名乗っています」

「田舎魔王など眼中にないが・・5万もの兵を相手にしたなど俄に信じられるか。俺も上位魔術師(マジシャン)。現れたら倒してやる。血気に逸った国王が亡くなった今こそ好機だ。姉に代わってワリキュールを乗っ取ってやろう。リンメイ、この先は俺の従者として動いてくれるか。先にワリキュールに行って情勢を見ておいてほしい」

「はい」

 リンメイはマクレスの従者となって、再びワリキュールに出向いた。


 ◇


 リンメイはワリキュールの街外れの大きな館に雅則ハーロックたちが住んでいるのを知った。その館についてリンメイは情報を収集していなかった。

 そこにエランデル国に居たユースケや一緒に居た女、美緒も来ている。彼らは何者なのか。ただの魔術師なのか。

 コーネリアというセキュバスも居ることもわかった。どうしてセキュバスも一緒に居るのか、さらに驚いたことに館には魔族(リサとイビル)や冒険者協会のソリアも同居している。リンメイには理解出来なかった。


 街中にチーズなる食べ物を販売している店が出来て、人気を高めていた。そのチーズの店『マキバ』の店長をしている冒険者でもあるスレーンともまだ面識がなかった。


 ◇


 美緒とコーネリアが館を出て街に向かったのを確認して後をつけた。

 買い物の帰りに美緒はコーネリアに

「チーズつくりを手伝ってもらっているから、欲しいものがあったら言って」

と聞いた。

「私は何も・・」

「遠慮しないでいいから」

 するとコーネリアが

「誰か居る」

と危機を感じた。コーネリアは攻撃魔法は持たない代わりに防御魔法の敵感知センスエネミーが働いた。悟られたリンメイはコーネリアと美緒の前に姿を現した。

「セキュバスね」

 リンメイは確認するように美緒とコーネリアに言った。

 リンメイの狙いはセキュバスのコーネリアだ。

「リンメイ、まさか・・」

 美緒もリンメイのことを覚えているようだった。ユースケから聞いているのだろう。

「始末する」

「そうはさせない」

 美緒がコーネリアをかばうようにリンメイに構えた。

 そこに後からやってきたリサが

「私が相手をする」

とリンメイに対峙した。

「レベルは私の方が高い」

 リンメイとリサは宮殿で一度闘っている。

 だが

「今度は負けない」

とリサがリンメイに攻撃を仕掛けた。

 レベルはリンメイのほうが上のはず。だがリンメイの火星魔法に対してリサの金星魔法のほうが発動が速い。

「魔族が人族と?」

 リンメイはリサが魔族と知ったが、雅則ハーロックたちは魔族とは思えない。なぜ魔族が人族の味方をするのか、リンメイはまだ理解出来ていない。

「なぜセキュバスを狙う」

 魔族リサの質問にリンメイは

「セキュバスは滅ぼす種族。男を惑わす」

とこたえた。

 リンメイはシルビアからセキュバスについて聞いていて、それを信じている。

 レベルの高いリンメイはリサを魔法攻撃で飛ばした。

「次はあなた」

 リンメイは美緒に電撃エレキットショッカーを放った。

 だが美緒はそれを防御魔法で防いだ。

 リンメイは美緒がユースケやハーロックの仲間らしいから、それなりに力はあるのだろうと思った。

 リサが金星魔法を放ってきた。

 リンメイは不利と見て、それ以上の攻撃をやめて去った。


 ◇


 雅則や悠介はセキュバスや魔族とも仲良く暮らしている。チーズは美緒が考案したらしく、評判も良くお店も開店した。

 竜魔族がワリキュールの街に迫ってきた。それを知った雅則たちと冒険者たちが竜魔族を追い払う。対応に参加しなかったリンメイは、その詳細を知らなかった。

 コーネリアが美緒と街中に出かけたときに、コーネリアを襲うがリサと美緒に邪魔された。


 そしてワリキュールの街が魔物に襲われるようになった。

 シルビアが亡くなったことを知ったスラーレン法国の大神官・アスターが近隣の山々の結界を解いたためだった。

 悠介や美緒たちが街に入ってきた魔物たちを倒し、街を守っていたが、結界魔法士のナターシャがやってきて、街に結界を張って魔物が入れなくした。

 ナターシャは街に結界を張りながら、『マキバ』も手伝いはじめた。

 

 雅則たちは本当にただの人族で、上位魔術師なのか。それとも彼は魔王なのか・・。

 疑問を抱きながら、リンメイはマクレスがワリキュールにやってくる日を待っていた。

 

 ◇


 そのマクレスがワリキュールに乗り込んできて、それを知った雅則ハーロックに倒された。

 シルビアとマクレスも失い、リンメイはスラーレン法国に戻って途方にくれていた。

 これからどうすればいいのか自分でわからないでいた。

 そんなとき

「ここに居たのか」

「だれ!」

「シャドーコープス(影軍団)頭領、ギル。これからはマーガレット様に仕えろ」

「マーガレット様に?」

 ギルが現れた。リンメイの父はシャドーコープスの一員だったが、リンメイは所属していない。

「マーガレット様はシルビア姫やマクレス公爵が亡くなったことや、プロティナ女王の無能さに憂いている。リンメイはシルビア姫やマクレス公爵に仕えたこともあり、王宮の出入りは簡単なはず。そこでマーガレット様が用意した書類を王宮にある書類と交換してほしい」

「どういうこと?」

「新しい帳簿はプロティナ女王が不正を見逃している裏帳簿のようなものだ。それでプロティナ女王を玉座から下し、ポール公爵が玉座に着く」

 マーガレットはスラーレン一族の親族で、プロティナやシルビアの叔母にあたり、ポールはその息子だ。

「その仕事を私に?」

「お前の父親もシャドーコープスの一員だった。リンメイがシャドーコープスに入らなくても、この仕事は引き受けてもらいたい。報酬はそれなりに出す。ワリキュールも軍が崩壊し、乗っ取りしやすくなった。周りの山々に張っていた結界は大神官様が解いた。ワリキュールは魔物たちのえさ場となる予定だ。だがここに来てワリキュールに新たに結界が張られた。ワリキュールに張られた結界も邪魔だ。そこでワリキュール内に居る結界魔法士を始末しなければならない。既に手の者をワリキュールに向かわせたが、帳簿すり替えたのち、リンメイも結界魔法士を葬るほうに向かってほしい」

 リンメイはギルから帳簿を渡された。


 ◇


 リンメイは渡された裏帳簿を持って王宮に入り、元ある帳簿とすり替えようとした。

 だが、その現場をプロティナに見つかった。

「リンメイがシルビアやマクレスに就いていたのは知っています。その二人ともワリキュールに行って亡くなってしまった。私はリンメイの身を案じていたの」

「プロティナ様・・」

 リンメイはプロティナの性格を知っている。ワリキュール王国に嫁いで、国王亡きあと女王になるという野望を抱いた妹のシルビアとは正反対の、争いごとが嫌いな性格。

 そのために国の軍隊の組織も解体した。そして活躍の場を奪われたシャドーコープスからも不満を抱かれている。

「それが裏帳簿ね。マーガレットに頼まれたの? マーガレットが私を玉座から降ろしたいのはわかっているけど、卑劣な手まで使ってまで降ろしたいとは・・」



 ◇


 プロティナに諭されたリンメイはワリキュールに急いだ。

 ワリキュールの街に結界を張っている結界魔法士のナターシャが狙われている。

 ナターシャがユースケに助けられて、今はチーズの店『マキバ』で働いているのもわかっている。


 ギルの手の者が、ナターシャの居場所をかぎつけた。

『マキバ』に押し入ってきた者たちからスレーンがナターシャを守った。

 だが襲ってきたのは一人だけじゃなかったため、スレーンは苦戦した。

 そこにリンメイが飛び込んでいった。

「邪魔するな」

 男がリンメイに魔法攻撃をかけようとすると、リンメイは衝撃波サイコウェーブを放った。

 押し出されるように男は後ろに飛ばされた。

「並みのレベルじゃないな。引け」

 男たちは影のように去った。


 そこに悠介が駆けつけてきた。

「リンメイ!」

「彼女は狙われている。スラーレンのシャドーコープスに」

 そう言ってリンメイは立ち去った。事情を説明してもわかってもらえないだろうと思ったからだ。


 ◇


 チーズの店『マキバ』を手伝っていたナターシャは、スラーレンのシャドーコープスに狙われたために美緒が乳製品つくりをしながらナターシャを守ることにして牧場に連れていった。『マキバ』は替わりにリサが手伝うことになった。

 だが、その結果、街に結界が張れなくなり、魔物が街に入ってくるようになった。


 ナディが『マキバ』に

「魔物がまた現れたの」

と飛び込んで来た。リサがスレーンに

「私が退治しているから、悠介さんを呼んできて」

と指示した。すると

「私が行きます」

とナディが館に向かった。

 だが悠介は冒険者協会に出かけていて、館には誰も居なかった。


 館の上空に飛び蟻(フライアントラー)が飛んできた。

「誰か助けてぇ!」

 ナディの叫び声を聞いたリンメイは、館に襲てきた飛び蟻(フライアントラー)を魔法攻撃で撃ち落としていった。

「大丈夫?」

 ナディに声をかけると

「ありがとうございます。街にも魔物が・・」

と言われた。


 リンメイが街に向かうと、リサが魔物と戦っていた。

「私も手伝う」

 リンメイも加勢して、魔物を退治していった。

 リサとはエランデルで顔を合わせていて、一緒にオーグ討伐をしたことがある。ワリキュールの宮殿でシルビア側だったリンメイは、リサと闘ったこともあった。だが、今はそんなことを思い出している暇はなかった。

 リンメイはリサに

「ハーロックは居ないの?」

と聞いた。すると

「ハーロック様はスラーレンに行っているわ」

とリサがこたえた。

「スラーレンに?」

 魔物が引き上げて行くと、リンメイは立ち去った。リサとの関係はまだ気まずいと思っている。

「どうしてハーロックがスラーレンに・・」

 雅則ハーロックがスラーレン法国に行っていることを聞いたリンメイは、自分はどうしうようか迷った。そしてスラーレン法国に戻らずにエランデル国に行ってみることにした。

























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