1-5.ワリキュール宮殿の戦い
スラーレン法国から魔核が届いた。
「リステル様、コアが届きました」
「そうか。エランデルに向けて出陣だ」
リステルは総軍を上げてエランデルに向けて進攻していった。
城から兵軍が出て行き、空には飛行船団も飛び立って行くのを確認したリンメイは宮殿に向かった。
宮殿内では。
「シルビア妃、リステル将軍は意気揚々で出かけられましたな」
ランスがシルビアに対面していた。
「飛行船団に魔核を載せて強化はされましたが、大きな火の玉も防げるでしょうか」
「さあね。・・無理かも知れないわね」
「そうなれば、将軍の身も・・」
「そのときは私が引き継げばいいこと。将軍が亡くなれば、ワリキュールの実権は私のもの」
「女王の誕生ですね」
「その時は力を貸してね、ランス」
シルビアはリステルにあきれ果てていて、リステル亡き後、ワリキュール王国の女王になることを考えていた。それはシルビアがワリキュールに来た頃から考えていた計画でもあった。
それにランスも同調してくれた。シルビアとランスは次の構想の段階に入れそうであることに顔をほころばせた。
そこに
「そういう後々の策も練ってあるんだ」
と男が入ってきた。
「だれ」
「俺はハーロック。エランデルでは伯爵の爵位をもらった。こっちでは魔王を名乗ることにした」
その男はどう見ても魔王という風格ではない。庶民的な衣服をまとった、ただの街の住民に見えた。
「魔王?・・魔術師なの? ここに来た目的は?」
「エランデルやイミナスにとって、ワリキュール軍は危険な存在。また軍を出陣させたようだから、城が手薄になったとみて入ってみた」
ランスもハーロックを名乗る男を魔王などと信じられず
「私も王宮に仕える者として、それなりの力は身に着けている。ソードマスターの餌食にしてくれる」
剣を抜いて男に突き出した。その剣さばきは剣の動きが見えないほどだ。
だがランスは崩れるように倒れこんだ。
ハーロックと名乗った男は雅則。雅則は時間をコントロール出来る。ランスの剣の動きを見切って、飛び込んでくるランスのこめかみを突いて脳を破壊した。
「ランス!・・」
あっという間の出来事に、シルビアは驚愕した。
雅則はシルビアに向き直って
「国王亡き後、女王の座を狙っていたのか」
と聞いた。
「私を見くびらないで」
シルビアは魔法陣を出した。
「スラーレン法国から来たらしいから、魔法が使えるということか」
「マジックシールド。私の結界魔法は最強よ」
「結界魔法?」
「どんな攻撃も防御出来るわ」
シルビアは自信たっぷりにこたえた。
「攻撃魔法じゃないんだ」
「完璧な防御は、どんな攻撃にも負けない」
「は?・・理解出来ないけど」
◇
リンメイは宮殿に入っていって驚いた。シルビアが見たことのある男と対峙していた。
「シルビア様」
「リンメイ。魔王ハーロックを倒して」
シルビアが強い口調でリンメイに言った。
「魔王ハーロック?」
リンメイは雅則を見て、え?と思った。
「あなたは魔王だったの?」
「こっちではそういうことにした」
「何それ。やはり只者ではなかったの?」
リンメイはまだよく状況を理解出来ていない。
そこに二人の女がやってきた。
見覚えのある顔だった。一人はエランデル国で雅則の傍にいた女で、もう一人はワリキュールの冒険者協会に雅則と一緒にやってきた女だった。
雅則が
「人族は美味しかったかか?」
と二人に聞いていた。
「やっぱり生は最高よ」
と一人が嬉しそうに言った。
「人族を食べたって、まさかあなたたちは魔族?」
見かけは人族だが、リンメイはそう思った。
雅則が
「リンメイは火星魔法を使う」
と二人の女に言った。
「なら私が相手をするわ」
と一人の女がリンメイに構えた。
雅則が
「リンメイはレベル80だ」
と、その女に言った。
「倒し甲斐があるわ」
イビルはリンメイに襲い掛かってきた。その速さは人族を超えていると思った。
しかしリンメイは森で修行していたとき、仙人から武術を教わったり狼魔獣とも戦って格闘のレベルも上げていた。
リンメイとイビルは驚くような速さで拳を交えた。
イビルがリンメイに炎の矢を放ってきた。
リンメイも炎の矢で応戦した。
レベルはリンメイのほうが上だ。イビルの放つ炎の矢を打ち消しながらイビルを追い詰めた。
「レベルの差ね。私の炎で燃え尽きなさい」
リンメイがイビルに火炎魔法攻撃を仕掛けようとしたところで
「今度は私が相手をする。フラッシュビーム」
もう一人のリサが金星魔法をリンメイに放った。
リンメイは防御魔術『マジックシールド』でリサの攻撃を防いだ。遅かったらまともに魔法攻撃を受けていた。
だが『マジックシールド』で防げたということは、彼女のレベルもリンメイより少ないことを意味する。
リンメイはイビルもリサも倒せると自信を持った。しかし
「リサも無理するな。しょうがない。俺は闘いは好まないが」
雅則がリンメイと対峙した。
「どうして魔王がエランデル国でハンターをしているの?」
リンメイは雅則に構えながら聞いた。
「俺はエランデルにやってきて、あの街が好きになった。力を振り回す人間は嫌いだが、庶民は可愛い。解け込んでいると楽しい。悪いか」
まともなこたえにリンメイは
「魔王の力を見せてもらうわ。ファイヤーバースト」
リンメイは雅則に火炎魔法を浴びせた。雅則は全身炎に包まれた。
だが、火が消えると雅則は平然と立っている。
「攻撃魔法が効かない?」
今度は雅則に飛び込んでいった。
「パワーアタック。・・・え?」
リンメイの拳は雅則に全くダメージを与えなかった。
「痛くも痒くもない。レベル80のパンチはこんなものか。魔族ダマリンより弱い」
「マジックシールドを出した様子もないのに」
リンメイは雅則に少しもダメージを与えられなかったことに驚いた。
「レベルの違いかな。自分でもびっくりしているが」
「ライトニング」
リンメイは雅則に電撃魔法を浴びせた。
だが、雅則は何事もなかったように立っている。
「俺は攻撃を受けると、防御魔法が発動される。たかだか80レベルのリンメイの魔法では俺を倒せない」
「ビッグオーグを倒したとき使った魔法は確かに強力だった」
リンメイは雅則たちにはあまり関心がなかったのでよく見ていなかったが、悠介や雅則が強力な魔法をオーグに使っていたような記憶が甦った。
「それをお前に使えば、お前はひとたまりもなく粉々になる」
雅則に言われて
「これが魔王の力?」
とリンメイはハーロックの強さを実感した。
その雅則に
「誰かに仕えるのたは止めてハンターとして生きろ。こっちでは冒険者と言うんだったか」
と言われた。
「私を見逃すというの?」
「俺は闘いを好まない。お前など脅威でも何でもない。エランデルでは一緒にオーグを相手に戦った仲だ。殺すには惜しい」
力の差を知ったリンメイはシルビアを置いて立ち去った。
その後、シルビアは雅則に戦いを挑んで命を落とした。




