1-3.オーグ討伐
翌日、リンメイはまたギルド協会に行った。昨日、ここで魔力検査をして、今日はそのSクラスのハンターのプレートをもらえることになっている。
協会に入っていくと、昨日『ハナ』で部屋に案内してくれた男、ユースケも居た。
彼は他の男女とやってきたようだ。後に深く関わっていく異世界から来た悠介、雅則、美緒の三人だが、リンメイは、まだ三人について何も知らない。
ハンターを募集する掲示板には、アズパイアを狙う魔物の討伐隊のチラシが貼られていた。
オーグという魔物らしい。手書きだがいかにも魔物という顔つきで、身長は人族か、それよりちょっと大きいっくらいらしい。もちろん、リンメイはオーグなる魔物は今まで見聞きしたことがない。スラーレン近隣の山々にも魔物は居るが、オーグは見かけたことがない。
「オーグの棲む山にもアズパイアはあるんですが、手入れをしていないので量も少ないですし、それを村人が作付けして豊富に実るように育てています。それをオーグが実が大きくなる頃を見計らって山から出てきて奪っていくんです。そこでハンターの方々にオーグ討伐をお願いしているんです」
ギルド協会の受付嬢がユースケたちにオーグ討伐のキャンペーンの説明をしていた。
もし、上位魔術師がエランデル国に居るとすれば、このキャンペーンに参加すれば、それを確認出来るかも知れない。
リンメイは
「一人でも参加することが出来ますか?」
と受付嬢に聞いた。
「魔物のレベルも高いですし、一匹や二匹ではなく、群れをつくって襲ってくる場合もあります。なので一人での参加も可能ですが、危険が伴います。普通は大勢で対応することになります」
受付嬢がこたえてくれた。
ユースケが
「まさか雅は参加するつもりか?」
と仲間の男(雅則)に聞いていた。
「面倒くさいから参加するつもりはないが、リンメイが参加するなら参加してみたい」
男(雅則)はユースケにそう答えていた。
「私のことをもう口にしている?」
リンメイはユースケに不快感を抱いた。
リンメイは聴力も人並み以上に優れている。というより、聴力魔法も使えるので、離れたところからでも盗聴のように聞くことが出来る。
協会の受付が
「オーグ討伐は翌朝から行います。参加希望者は参加用紙に記入して早朝、協会に集まってください」
と発表した。
リンメイは受付で、昨日最初に世話をしてくれたエリーナを見つけた。顔は覚えているが名前は聞いていない。
「昨日魔力監査をしてプレートをもらいに来たんだけど・・」
と言うと
「リンメイさんですね? 伺っています。プレートは準備しておきました」
エリーナはリンメイを覚えていてくれてSプレートをリンメイに渡してくれた。
リンメイはそれを受け取ると
「あの・・エランデル国に上位魔術師・・いる?」
とエリーナに聞いてみた。すると
「ギルドハンターになる人は魔術師だったり腕に覚えのある人だったりしますけど、私はそういうのはわかりません」
と言われた。
「そう」
期待外れだったリンメイは、街を散策して飯店『ハナ』に戻った。
◇
翌朝、リンメイは早起きして宿の食事処に言った。昨日の夕食の時、ユリから
「明日からオーグ討伐の時期は、朝食を早い時間から出しますから。アズパイアも収穫がはじまったのでデザートに出しますね」
と言われた。そしてデザートに出されたアズパイアを口にしてみると美味しかった。スラーレンでもワリキュールでも食したことがない。
オーグ討伐に参加するため、早めの朝食を済ませるとユースケから
「オーグ討伐に行くのかな? 協会まで一緒に行こうか」
と誘われた。
リンメイはユースケにまだ不信感は拭えなかったが
「知っていたら教えて欲しいんですけど。上位魔法を使える魔術師」
と聞いた。すると
「え?・・さあ・・どうして?」
と言われた。
「知らないならいいです」
リンメイは部屋に戻ると、準備をしてギルド協会に向かった。
◇
ギルド協会に行くと、かなりの人数のハンターが集まっていた。
「それでは班分けをしますから表示板に張り出します」
張り出された表にはリンメイの名前もあった。昨日参加するように申し込んでおいたからだ。
そして参加者は馬車でルーア村に連れていかれた。
早朝、オーグは現れなかった。
「昼間は襲ってこないと思うので、テントを張ってしまいましょう」
ギルド協会の役員が持ってきたテントを参加したハンターに渡していた。
テントは一人一つではなく、何人かで一緒に入って休む。
参加したハンターの中には女性も何人か居て、リンメイは彼女たちとテントを張った。
◇
夕方になってオーグが現れた。
「あれがオーグか、体も大きい」
オーグを初めて見るハンターも居るようだった。
大きいと言っても大きな体をした人族というくらいだ。ただ顔は人間離れしていて全身が毛で覆われている。
「エランデル国のギルドハンターって、こんな魔物を相手にしているの?」
リンメイは驚かざるを得なかった。
オーグの群れが現れ果樹園の南側を襲いはじめた。
「何体出てくるんだ?」
ハンターたちが応戦をはじめた。
ハンターたちはオーグに対して魔法攻撃をはじめた。いや、魔法攻撃しか相手をする方法はないと思った。しかし弱い魔法では限界があった。
リンメイも炎の矢で攻撃した。
オーグはあきらめて退散していったが、リンメイも体力が落ちたのを感じた。魔法攻撃は体力を消防する。
「これがハンターの仕事?」
◇
翌朝、空が明るくなりはじめると、またオーグが襲ってきた。今度は昨日のオーグより大きかった。
五メートル、いや十メートルはあるような大きさだ。
「ビッグオーグだ!」
誰かが叫んだ。
「ビッグオーグまで出て来るとは、想定外だな」
「どんな想定をしているんだ」
「退避、退避、レベルの低いハンターは退避!」
ハンターたちは口々に言葉を発している。
逃げるハンターが居る中、リンメイは近づくビッグオーグに火星の攻撃魔法、火炎魔法を浴びせて対抗した。
そこに男が近づいてきて一緒にビッグオーグを倒した。飯店『ハナ』で出会ったユースケという男だった。
ユースケはビームを放っていた。リンメイはユースケの力をあなどっていた。
「あなたもレベルが高そうね」
リンメイがユースケに言うと
「ほんとうに一緒に戦えて嬉しいけど、あとでデートしない?」
と言われた。
「デートってなに?」
と聞き返すと
「え? デートを知らない? こっちの世界では使わない言葉か」
とユースケが言った。
「こっちの世界?」
リンメイは思い出した。スラーレンの森で修行していたとき、現れた仙人が『転移』と口にしていたことを。
ユースケは火炎魔法ではない魔法でオーグを倒している。
「あなたのレベルを聞いていい?」
ユースケに聞くと
「え? ああ、100はあるけど、きみもありそうだね」
とこたえた。
「私は80だと言われたわ」
「よかった。俺より高くなくて」
リンメイは、そう口にした彼の真意を理解出来なかった。
このユースケは上位魔術師なのだろうか。いくら強そうでも数千の兵を相手に出来る力があるようには思えなかった。
そのうちリンメイは体力が落ちていった。
今までこれほど一度に攻撃魔法を使ったことはなかった。
「大丈夫か、リンメイ」
ユースケに心配されたが、リンメイは他の女性ハンターに介抱された。
休んでいる間にユースケたちがビッグオーグを倒した。
街に戻ったリンメイは『ハナ』に戻ると、ワリキュールに向かう馬車を見つけてワリキュールに戻った。




