1-2.ギルド協会
馬車と違ってエランデル国まで歩いていくのは、思ったよりしんどかった。
リンメイは御者は出来ないので歩くことにした。ハウトが持っていた水筒を拝借し、エランデル国を目指した。
リンメイは山の麓の道を選んだ。水や草木も生い茂り、荒野を歩くよりつらくない。
魔物が現れても、倒せる自信はある。心配しているのは魔族の出現だ。
リンメイはまだ魔族に出会ったことがない。魔族と戦って勝てるのか、どのくらい強いのかも想像出来なかった。
そして何とか魔物などに遭遇することなくエランデル国に着いた。
街はワリキュール王国の街より小さいが、懐かしさを感じた。ワリキュールの街と雰囲気が似ていた。
エランデル国はワリキュール王国の王族が、この辺りを開拓して新たにつくった国らしい。
なのでワリキュール王国と似ていて不思議ではない。
街の先を見渡すと城が見える。宮殿もワリキュールよりは小さいようだ。本当にここ、エランデル国に上位魔術師が居るのだろうか。
街を歩いていると、ふと飯店『ハナ』の看板が目に入った。飯店としてはあまり大きくは無い。
資金は持っているが、大飯店に泊まるつもりはない。
ワリキュールから近くまで馬車に乗ってきたとはいえ、長旅で疲れも出ている。
リンメイは『ハナ』に入った。
「部屋は空いていますか?」
若い女(飯店『ハナ』の娘・ユリ)が
「お客さんが出て、まだ掃除していない部屋しか空いてないんですが?」
と言ってくれた。
泊まれそうだと思ったリンメイは
「では、そのあいだ、街を散策してきます」
と『ハナ』に泊まることにした。
宿泊簿に名前はリンメイ、旅人と記載した。
それから街を散策した。街自体はワリキュールより小さいが、それなりに賑わっている。
そして街外れにギルド協会を見つけた。木造の二階建て。大きな門扉が開きっぱなしになっている。雰囲気はワリキュールの冒険者協会に似ていた。
「あの・・」
リンメイはそこから出てきた男に声をかけた。
「ギルド協会とは・・」
「ああ、ギルドハンターの登録を出来るところだよ」
「ギルドハンター?」
「魔獣などを倒して報酬を貰うところだよ」
「それて冒険者協会じゃ・・」
リンメイはワリキュール王国の冒険者協会を思い出して聞いてみた。すると
「冒険者? もしかしてワリキュールから来たのかい? 俺もそうなんだ。ワリキュールでは街の近くにも魔物が現れなくなったからね。こっちのほうが稼げると聞いたんでやってきたんだ。ギルドハンターになるつもりなら行ってみるといい」
親切に教えてくれた。
リンメイはシルビアがワリキュール王国に嫁いできた後、スラーレン法国の大神官、アスターが周りに山々に結界を張ってワリキュール王国の宮殿や街に魔物が入らないようにした話をシルビアから聞いていた。
リンメイはワリキュール王国では冒険者登録はしていなかったが、エランデル国に来た目的は上位魔術師を探すことだ。それならギルド協会からあたると早いかも、と考えた。
中に入ると、住民らしからぬ衣装を身につけた者が多く居た。リンメイは近くに居る男に
「冒険者登録はここで出来るんですか?」
と聞いてみた。
「冒険者?・・ああ、ハンターね。ここだよ。奥に受付のカウンターがある」
リンメイは奥の受付に足をすすめた。
「いらっしゃい。ハンター登録をご希望ですか?」
対応したのは協会職員のエリーナだったが、お互い初対面だ。名前も知る由もない。
「お願いしたい」
「では申請書に必要事項を記入してください。記入はこちらで代行出来ますが」
リンメイは申請書を見て、文字はワリキュールと同じだと思い
「自分で記入出来ます」
とこたえた。
「申請が終わりましたら登録料を納めいただいて、初回の講習を受けていただき、魔力検査をします。ランク付けが終わりましたら登録完了となります」
エリーナがリンメイに丁寧に説明した。
「魔力検査?」
「はい。ハンターを希望する人のランク付けを行うレベルの確認と魔法色素をみます」
「ふうん」
よく理解出来ないが、リンメイは従うことにした。
それから申請書を見直して
「旅人はハンターに慣れないに?」
とエリーナに聞いた。すると
「住所不定の人はなれません。旅人であれば、宿を住所にしてもいいです」
と言われた。リンメイは住所を飯店『ハナ』にして申請書を提出した。
「では、初回講習を行ったあと、魔力検査になります」
◇
講習は簡単なもので、ギルド協会やギルドハンターの説明からはじまり、魔力検査とランク付け、その他注意事項などの講義だった。
講習を受けたリンメイは、2階に案内された。そこに担当のナルーシャが居た。もちろん初対面である。お互い、まだ名前もわからない。
「先輩。ハンター志願者です」
エリーナがナルーシャに申請書を渡し、降りていった。
「はじめてハンターになる方ですね? まずは、この魔法定盤石に手をかざしてもらえますか?」
とリンメイはナルーシャに言われた。
リンメイが言われた通り魔法定盤石に手をかざすと、定盤石が火花のような光を発行しはじめた。
驚いたが、ただ熱くも何ともない。
「80ですね。下して結構です」
とナルーシャに言われた。
そして申請書に目を通したナルーシャが、何を思ったのか、ちょっと間を置いてからリンメイに
「では次に、こちらの水晶玉に手をかざしてください」
と言った。
リンメイが水晶玉に手をかざすと、水晶玉が光を放ちはじめた。ナルーシャがその色を見て
「結構です。火星魔法をお持ちですね。・・検査が終わりましたのでSクラスでハンター登録が出来ますが、登録しますか?」
とリンメイに聞いた。
「いきなりSクラスですか? 下から上がっていくものではないんですか?」
とリンメイはナルーシャに聞き返した。
「講習でお聞きになったと思いますが、魔力検査のレベルでクラスは決まります。力のある者は、はじめからそのクラスになります。
「そうですか。・・では登録をお願いします」
「はい。プレートは明日にもお渡し出来ますから、またお越し願えますか?」
「はい。あの・・」
「はい、何か・・」
「火星魔法って・・」
「ああ、魔力にもいろんな種類がありますから、その種類によって色素で判別しています。リンメイさんの色は火星魔法のようなので特に炎を使った魔法に特化しているようです」
「そういうこともわかるんだ」
確かにリンメイは炎を使った魔法が使える。
スラーレン法国でも魔法を使える者は多い。しかし街は高い塀で囲まれ、衛兵隊が守っているので、冒険者協会のようなものはない。もちろん、扱える魔法のレベル値や種類を調べる場所もない。だからリンメイは自己流で魔法力を磨いてきた。
◇
ギルド協会を出たリンメイは街を散策して『ハナ』に戻った。
「お部屋の掃除は終わしておきました」
飯店の娘、ユリに言われると
「今日泊まる旅人さんか。部屋は俺が案内するよ」
と男が現れてリンメイに言った。
「俺はユースケ。俺もこの街には来たばかりだけど、よかったら街を案内するよ」
初対面の男でもあるユースケに親切に声をかけられた。
「私は・・リンメイです」
リンメイも自己紹介した。
「そう、よろしく。ああ、きみの部屋はこの奥だね。遠慮しないで声をかけてくれていいからね」
男は親切に言ってくれたが素直には喜べない。ただ男は部屋まで押しかけてこようとはしない。ちょっとおかしいとは思ったが、悪い男には見えなかった。
リンメイはエランデル国の近くまで馬車で送ってくれたハウトという男のこともあり
「男は信用出来ない」
と思っている。
リンメイは今までに親しくした異性はいない。
部屋に入ると、浴槽に湯を満たし旅の疲れをとるように長湯をした。
お風呂が好きなわけではないが、身も心も癒される気がした。
そして自分の生い立ちを思い返していた。
スラーレン法国に生まれ、友人も無く、幼い頃から魔法と拳を磨いてきた。
父がシャドーコープスの一員だったこともある。
だが、リンメイはシャドーコープスに入るか迷っている中、父が亡くなった。
シルビアに誘われて、ワリキュール王国に渡って来て、仕えながら命じるままにエランデル国に上位魔術師が居るか調べにやってきた。
「私の生き方はこれでいいのかな」
リンメイは悩んでいた。




