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1-1.エランデル国へ

 ワリキュール王国の国王、リステルはシルビアを快く迎え入れてくれた。シルビアもリステルを国王として相応しい男だと評価した。

 リステルは国王であり、国軍の将軍も名乗っている。そして自分の地位を高めるために、リステルの策に異を唱える貴族たちを粛清していることも耳にしていた。

 シルビアはそんなリステルに嫁ぐことを考えて謁見し、リステルの心をとらえた。その裏には、ある欲望があった。


 ワリキュール王国はスラーレン法国に匹敵する領地を持ち、5万の兵軍を持つ巨大国家だった。

 工業も団地を持つほど、近辺では進んだ文明国でもある。飛行船もつくり、それは軍の兵力の一部としている。

 但し王族を含む貴族たちは自分たちのエリアで優雅に暮らし、街の政治経済は街の自治に任せている。


 シルビアの従者としてワリキュール王国に行ったリンメイは、資金はシルビアから出してもらっていたが、シルビアの影となり情報を得るのが仕事だった。そのため、夜は街の宿に寝泊まりしていた。


 ◇


 国王のリステルは、傍に仕える侯爵のランスから報告を受けていた。

「イミナス国がエランデル国に進攻して敗れたそうです」

 ワリキュールの王家の親族がワリキュールを出て開拓したイミナス国とエランデル国。が、仲はそれほど良いわけではないことはリステルも聞いていた。

「イミナスはエランデルより領地も多く、兵の戦力も倍はあると言っていなかったか?」

「それは間違いなかったかと」

「では、エランデル国にイミナス国に対抗出来る魔術師が居るのか?」

「それは何とも。驚いたことに、イミナスはその後、魔族の支配下になったとのことです」

「魔族の? どういうことだ」

「あの辺りは、もともと魔族など、人族以外の種族が領地としていたらしく、先代、いや初代が彼らを追い払って開拓したと聞いています」

「まさか魔族が国を奪い返したというのか」

「それは何とも・・」

「こしゃくな魔族だ。軍を進攻させてイミナスを奪い返すか」


 リステルはイミナスに向けて1万の軍を進攻させた。ところが・・。

 進軍した先兵隊と飛行船団が全滅したとの報告がリステルに入った。

「飛行船団と1万の軍が全滅?・・どんな魔法を使ったんだ」

 それはエランデル国に異世界から転移してきた雅則や美緒たちが極大魔法『流星雨』やゴジラなどを召喚して全滅させた結果だったが、リステルたちにはわからないことだった。

「上位魔法を使える者が居るようね」

 シルビアがリステルに言った。

「力だけで攻めるのは能が無いか?」

「リステル様は賢いと思いますよ」

 シルビアはリステルに皮肉めいて言った。

「1万人を全滅させるヤツだ。どんな魔法で対抗する」

「相手を倒すには、まず相手を知ること。イミナス軍を全滅させた魔術師がエランデルに居る可能性が高いと思われます。エランデルに潜入させて情報を得ましょう」

「そういうまだるっこしいのは好きじゃないんだが」

「せいては事を仕損じる。少々のご辛抱を」


 ◇


 リンメイはシルビアから

「エランデル国に行って上位魔術師が居るか調べてきてほしいの」

と頼まれた。

 リンメイはエランデル国にどうやって行くか考えた。資金はシルビアからもらっているのでお金で解決出来るものは容易だ。通貨はワリキュール王国とエランデル国は同じらしい。

 歩いて行くには何日もかかる。馬車でも2~3日はかかる距離らしい。しかもエランデル国は山に近い。途中にも魔物や魔族が出やすいと聞いている。


 ワリキュール王国には冒険者協会がある。魔獣や魔族を倒すと報酬がもらえる。但し、あらかじめ冒険者として登録しなければならない。こういったシステムはスラーレン法国にはないものだった。ワリキュール王国に来て知った。

 シルビアがワリキュール王国に嫁ぐことになった時、大神官のアスターが周囲の山々に結界を張ったため、魔物たちの行動が制限され、ワリキュール王国の街も魔物に襲われることは無くなったが、周囲には居るらしい。そのためもあり、冒険者たちが魔物退治や街の警護も担っている。


 スラーレン法国とワリキュール王国の間にゴラン谷があり、そこに竜魔族が棲んでいる。彼らを倒せば、協会から高い報酬がもらえる。つまり貴族側は冒険者協会に魔族退治をお金で頼んでいるようなものだ。

 竜魔族の力は一匹づつならリンメイでも倒せそうなものらしいことをワリキュールの街で情報を集めている中で冒険者から聞いたことがあった。今までに何人かの冒険者が竜魔族を倒したことがあるらしい。だが、ゴラン谷まで行って彼らを倒そうという冒険者はそうはいない。竜魔族は魔法も使え、レベルの高い者でなければ勝てないからだ。彼らも彼らなりの生活をし、集団行動をとっていることが多い。いわば部族のようなものだ。

 リンメイは街の情報を探ることもあるが、主にシルビアに仕えているので、ワリキュールで冒険者としての仕事はとくにない。なので冒険者協会に冒険者として登録はしていない。だが、協会内は誰でも出入りが自由なので情報を得るためにときどき足を運んでいる。


 リンメイが思案していると

「エランデルに行きたいんだって?」

と男が声をかけてきた。

「馬車でエランデルに行くんだが、よかったら乗っていくかい?」

「いいですか?」

「一人で行くより連れが居たほうがいいし、馬とじゃ会話出来ないからな」

 男の名はハウト。冒険者にも登録しているらしく、エランデルにワリキュールで購入したものを売りに行くそうだ。冒険者でもあり、御者でもあった。

「馬の面倒を見ながら行くから3~4日かかるが、それでいいなら」

「はい。お願いします」

 リンメイは歩いて行くことを覚悟していたので安堵した思いだった。

「前にもエランデルには行ったことがあるが、エランデルに近くなると魔物が出やすい。まあ、俺も冒険者登録をしているから、それなりに強い。魔法も使えるし」

「魔法も?」

「魔族は駄目だぞ。敵に回したら勝てる自信はない。それに魔物が出やすいからと峠越えはしたくないし。そんなわけで山道をにけるのが早道だが、山は避けている」

「魔物が出たら私も戦いますから」

「たのもしいね」


 夜は馬車を止めて、荷台の中で寝た。ハウトも一緒だ。隣に寝るわけではないが。

 リンメイは御者の経験がないので馬車に乗っているだけだ。

「黙っているけど、馬車に揺られているだけで飽きないかい?」

「すみません。お喋りは苦手なので」

「まあ、人それぞれだからな。俺もあまり人は乗せる機会がないから、馬にぼやきを聞いてもらいながら、こうして御者の仕事をしている」

「もう長いんですか?」

「ああ、何年しているか忘れるくらいにね。これでも一度は結婚したんだが、今は独り身だ。気楽な生き方をしている。どうしてエランデルに行きたいんだ? 向こうに彼氏が待っているとか?」

「そんなことはないです」

「冗談だよ。深刻そうな顔をしていたから、何か訳ありなんだろうけど」

 リンメイはそれにどうこたえていいか悩んだ。親切そうな彼だが目的を話すつもりはない。

「明日にはエランデルに着く。今夜が最後の夜だ。リンメイと旅が出来てよかったよ」

「私も感謝しています」

「じゃあ、お休み」


 いよいよ明日はエランデル国。初めて訪ねる国だ。ワリキュール王国の親族が開拓した国らしく、通貨はワリキュール王国と同じらしい。エランデル国に行って改めて稼がなくても逗留出来る。

 だが、エランデル国には。どんな魔術師が居るのか。不安と期待を抱いた。

 リンメイ自身も多少魔法は使えるし、武術も身につけている。


 何かが迫って来るような気配。隣で寝ているはずのハウトだった、リンメイの隣に来ると、リンメイに覆いかぶさろうとした。

「一緒に寝るつもりはないわよ」

「起きているのか。最後の夜だ。楽しもうぜ」

 今までの親切そうな男の顔ではない。

「男は間に合っているから」

「そう言うなって。ここで叫んでも誰も来やしないよ」

「叫ぶのはあなたのほうじゃないの?」

「言うね。冒険者協会に居たんだ。ただの女じゃないってことか」

 リンメイはハウトを蹴り上げた。

 のけぞったハウトは

「俺が魔術師マジシャンだと言うことを忘れているようだな。サイコホールド」

 ハウトが魔法を発動すると、リンメイは金縛りにあったように身体が動かせなくなった。はじめてつかわれる魔法だ。

「俺に逆らう女は魔法で動けなくしてやった。冒険者協会でリンメイに出会った時はラッキーだと思った。女房に逃げられてから、より女を抱きたいという思いが強くなった」

「私に出会ったことを後悔するのね」

「動けないお前に何が出来る」

 ハウトがリンメイに抱きつこうとしたとき

「ライトニング」

 リンメイが身体から電撃を放った。

「うぎゃあ」

 ハウトはリンメイの身体から発せられた電撃を浴びて倒れた。

 ハウトが倒れると、リンメイにかけられていた魔法が解けた。

 リンメイはハウトを縛り上げると

「陽が昇ったら歩いてエランデルに向かうようね」

と大きく呼吸した。























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