第八話 『理由』
本作はフィクションです。
喧嘩、暴力、いじめなどの表現や、それに伴う精神的苦痛を含みます。
登場する人物・団体・出来事はすべて架空のものです。
あれから数ヶ月後、心は揺らいだまま、自分に"答え"を出すことが出来ずに19歳を迎えてしまった
記憶は以前よりも曖昧に
記憶だけでなく、実際に目で見ている時でさえ、うっすらモヤがかかってしまう
そして、誰かと話すことも少なくなっていた
「自分は…"今"誰と会話している…?」
そう思うことが多くなってしまった
次はどこが悪化していくのだろうか
そんな恐怖に怯えながら1日を生きていく
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2021年4月 潮見芸術大学 教室
大学2年生となった自分はとにかく自分がやれそうなコースを選択し、この1年で"答え"を見つけようと甘い考えをしていた
自粛規制は温和され、必修科目は基本対面で行うこととなった
初めての授業では軽い自己紹介をすることとなった
今後、3年間同じコースメンバーとして名前や顔だけでも覚えておきたいと思っていたが全員の顔にモヤがかかっており、その人が誰なのか"声"だけで判断しないといけない
「とりあえず、周りの人たちだけでも…判断できるように…」
ーー数ヶ月後
あれから必死に友達の"声"を覚えた
とりあえず、話を合わせて自分の記憶にある"声"を頼りに様々な人と会話をした
その中でも同じコースの男子たちとの会話は他の会話よりもしっかりと覚えていた
話せば話すほどモヤが薄れていった
モヤがなくなるにつれて彼らとの会話がとても楽しい時間となった
彼らはこんな僕を受け入れてくれたと思った
彼らと話していると大学に行くのがとても楽しくなる
今までは"誰かを演じて"生きていたが彼らと一緒にいると何も演じることなく、大学生ができていた気がした
彼らが自分が生きるための理由
どんな道でも一歩進める1つなのかもしれない
「あぁ…まだ生きていたい…まだ生きて彼らと会話したい…いろんな景色を見たい…そして…」
そう思えた時だった
「死ぬんじゃないのか?」
「…」
「なぁ?約束しただろ?なぁ?嘘は良くないぜ?ほら、その目の前にあるカッターで心臓させよ。なぁ?早く!」
手が震える
まるで体の主導権を奪われたかのようにカッターに手が伸びる
「おい!」
友達の掛け声でハッとした
「ん?なに?」
「ラーメン食い行こって聞いてんだよ!」
「ん、あぁ、行こっか」
「じゃあみんなで最寄りのラーメン食い行くぞ〜!」
ーーその後
みんなとラーメンを食べながら楽しい話をしたり、愚痴ったり、課題の話をしたり、楽しい時間を過ごした
解散後、1人になった
1人になってから家に着くまで、今後の事をずっと考えていた
「…ちゃんともう1人の自分と話そう。それで"答え"を出す」
読んでいただきありがとうございます。
ブックマークや評価などいただけると嬉しいです。




