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翌日
診察を終えた患者に、あなたは検査結果を簡潔に説明した。
「塗り薬は今のままでいいですよ。赤みも落ち着いてきていますし、二週間後にまた様子を見せてください。」
患者の佐藤道雄は頷きながら、口元に笑みを浮かべた。
「先生のおかげでだいぶ楽になったよ。年寄りは皮膚が弱くて困るけど、まあ仕方ないねえ。」
あなたも軽く笑みを返す。長く通っている患者だけに、こうしたやり取りは日常となっている。
佐藤は椅子に腰をかけ直し、少し声を落として言った。
「それにしても、診察が休みでなくてよかったよ。いろいろ大変だったろうに。」
「病院は休みにできないんですよ。命にかかわる患者さんもいますからね。」
「確かに。患者まで死んじゃったら、洒落になんねえからな。」
声を上げて笑いながら、佐藤はさらに続けた。
「先生も、いろいろ聞かれたりしたんじゃないの?」
あなたは視線をカルテへ戻し、少し申し訳なさそうに答えた。
「ごめんなさいね。詳しいことは話せない決まりになっているんです。」
佐藤は「そうかい、先生も大変だねえ」と立ち上がり、診察室を出る。
扉が閉まり、室内に一瞬の静けさが戻ると、傍らでカルテを整理していた美咲が、少し身を乗り出すようにして声をかけてきた。
「先生、ちょっといいですか。」
彼女は声を落とし、周囲を気にするようにして続ける。
「第一発見者の田村さんから聞いたんですけど……現場に魔法瓶が転がっていたそうなんです。先生は覚えていらっしゃいますか?」




